2015年3月号

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連載記事

移動運用のオペレーションテクニック

JO2ASQ 清水祐樹

第12回 ログ入力からQSL発行までの手順

移動運用では、固定局での運用とは違った方法でログの記録・管理を必要とすることがあります。運用中の故障や停電、あるいは運用後にデータを転送する際のトラブルで、ログデータを消失したという話をしばしば聞きます。運用後のQSLカードの発行において、QSLカードに記載したデータにミスや発送漏れがあると、相手局に迷惑をかけることにあります。

今回は、移動運用におけるログ入力からQSL発行までの手順について紹介します。私はこの方法で年間30,000QSO以上を処理しています。

紙ログの上手な使い方

移動運用の時には、基本的に紙ログを使っています。B5サイズの横型のログ帳で、1ページに20行書き込めるものです(図1)。縦方向に5分割して、1ページに100QSOが書き込めるようにしています。


図1: 紙ログの例。青色の丸印は、QSLカードが印刷されたことの確認。

紙 ログの記入では、次のようなことに注意しています。
・ 水に濡れても消えない顔料インクのボールペンを使う。
・ ペンは2本用意し、1本は予備として手の届くところに置いておく。交信中にペンを落としたり、インク切れになったりすると、即座に対応することが難しいため。
・ 文字の誤読が生じないように、独自のルールを作る。(Dの縦棒に点を付ける、Uは2つの角を付けて直線3本で書く、など)
・ 1枚の紙ではなく、必ず綴じた形態のものを使う。(散らばって紛失することを防ぐため)
・ 相手局のコールサイン、時刻、周波数、モードは絶対に書き忘れない。コールサインを訂正する時には、訂正前と訂正後の文字の区別が付くようにします。記入時には「直したつもり」でも、後から読み返すと判読困難なことがあります。また、時刻は書き忘れると後から復元できないことが多いので、絶対に書き忘れないようにします。頻繁にQSYする場合は、周波数を書き忘れた場合も、後から復元困難になります。
・ 交信後の紙ログが紛失、盗難等に遭わないよう十分に注意する。

コンテスト等で重複QSOのチェックをしたい場合はパソコンにその場で入力しますが、通常の移動運用では紙ログを使っています。その理由は次の通りです。
1. データ消失のリスクが低い
2. 運用中に気付いたことをメモできる
3. 起動に時間がかからない
しかし、紙ログでは重複QSOのチェックができないなどの問題点もあり、状況に合わせて使い分けることが必要と思います。

紙ログには、相手局のコールサインなど必須事項の他には、次のようなことを記録しています。
・ 同時に2~3局コピーした場合のコールサイン全て
・ 伝搬状況
・ 変調や符号の特徴
・ 相手局のコールサインを正確にコピーできたか自信が無い時、状況を詳細に記録し、過去の交信記録や免許検索で確認するための情報
・ マナーの良くない局
・ 使用設備(アンテナの種類、空中線電力など)
・ 衛星の軌道情報
・ 運用中にリクエストを受けた場合
・ 運用場所に関する情報(公園、山の名称など)

運用時の緯度・経度をカーナビやハンディGPS等で調べておくと、後からグリッドロケーターを求める際に便利です。グリッドロケーターの計算にはJARLのサイト(http://www.jarl.org/Japanese/1_Tanoshimo/1-2_Award/gl.htm)が便利です。また地図から直接グリッドロケーターを調べるGrid Locator Calculator (http://www.argv.org/~chome/maps/loc.html)もあります。

聞こえたコールサインが、聞き覚えのあるコールサインと1字だけ違っている場合、聞き覚えのあるコールサインの方でログに記入したくなることがあります。しかし、後から調べてみると、聞こえたコールサインの方が正しい場合が圧倒的に多かったです。交信数が多いと、1字違いのコールサインは意外に高い確率で遭遇します。CWの短点1個違いのコールサインで、どちらの局も交信数が多いという場合すらあります。迷った場合は聞こえたコールサインの通りにログに記入する方が、正解の可能性が高いと思います。

なお、図1に示す紙ログを発売していた業者は、残念ながら廃業されました。今後は、B5の用紙に罫線を印刷し、製本したものを使う予定です。

PCロギングソフトへの入力

移動運用から帰ったら、紙ログのデータをロギングソフトに入力します。ここで注意することは、ロギングソフトによっては、あるキー操作をすると入力時の現在時刻が自動的に入力される設定になっていることです。交信時の日時を入力したつもりが、知らないうちに入力時の日時に変わっていることがあります。

QSLカードの印刷

QSLカードを印刷したら、紙ログ原本にその交信があるかを1件ずつチェックします。チェックした交信にはログ原本に色ペンで印を付けます(図1を参照)。全てのチェックが終わった後に、印が付いていない交信があれば、入力漏れか印刷時のトラブルなので、再入力・修正を行い、印刷します。入力漏れを見つけるために、この確認作業は必須です。

印刷したQSLはコールサイン順にソートしてから、ビューローに送付します。500~1000枚程度のQSLカードをソートするには、まずJA1、JE1-JS1、2~0エリア、7始まり、DXのように大分類します。1エリアはどうしても数が多くなるため、さらに細かく分類する場合があります。

1つの束が20~30枚になるまで細かく分類し、広い机の上などに広げ、コールサイン順に拾い上げるようにすると、作業が早くできます。片手で持てる程度の枚数ならば、トランプのように手で持って、1枚ずつ抜き取って差し替えることもあります。

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