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楽しいエレクトロニクス工作

第47回 ワイヤレスハンドマイク

JA3FMP 櫻井紀佳

車載用無線機等では、一般的にカールコードの付いたハンドマイクを使用することが多いと思います。運用中にこのカールコードがあちこちに引っかかって邪魔になることがあるように感じます。そこでこのマイクコードのワイヤレス化を考えてみました。

マイクは無線機本体の付属品なので簡単操作で便利なことが必要と思われ、その趣旨で回路を考えてみます。ワイヤレス化は無線屋として当然、高周波による無線方式にしたいと思いますが、その変調方式はAMではレベルの変化などで取り扱いが不便なため、やはりFM変調で考えてみます。

FMのワイヤレスで最初に思いつくのはFM放送帯を使うことです。ネットで調べたところ最近この用途に使える受信部品の販売が意外に少ないことが分かりました。狭帯域の受信機ではICをはじめIFのフィルター、ディスクリミネーター用共振子など、多くの部品が必要となり、希望する特性に合った部品が手に入り難い上に回路は複雑です。回路を簡単にするために考え方をがらりと変えてFM放送帯で直接復調する方法を考え、このため基本的な実験が必要になりました。

発想を変えてFM放送帯そのものでスロープ検波ができないか考えてみました。スロープ検波は周波数に対して振幅の変化があれば良いので、今まで他の用途でLPF(Low Pass Filter)などを多く作ってきましたが、フィルターの端のカーブが結構急峻でこれを使ってスロープ検波できないかと思い付いたのです。

無極のLPFで計算しシミュレーションすると次のようになりました。

この図は縦軸を対数ではなく直接の電圧でプロットしており、75MHz付近で広帯域変調ができれば実用になりそうに見えます。このため送信側の広帯域変調も同時に検討する必要があります。マイクと無線機間のごく近距離通信のため、微弱電波で通信を行うため特に変調等も電波法に従わなくても良いと考えました。

受信部の回路は次のようになりました。

通信が近傍界なので電界も磁界も拾える意味で、アンテナはループアンテナにしています。このループアンテナに直列に同調する27pFのCでuPC1651のICに入力します。このICは今まで本製作記事の中で何回か使ってきたものです。入出力は、共50Ωにマッチングしています。このICで2段増幅して先に検討したスロープ検波のためのLPF (Low Pass Filter)に出力します。

受信部はFM放送帯のストレートアンプなので安定に増幅できるか心配ですが、このICは規格上19dBのゲインなので2段でトータル38dBのゲインになります。

LPFに接続したダイオード1N60でスロープ検波してマイク信号を取り出します。NJM4558のOPアンプで増幅してマイクコネクタのピン6へ送りマイク信号となります。
スロープ検波した信号は直流も出ますので、その直流をコンパレーターLM393に入力してスイッチし、マイクコネクタのピン4のPTT端子をアース側に落として送信状態にします。

実際にプリント基板で組立てたものは下の写真のようになりました。出力端子は車載機のマイクコネクタ(モジュラータイプ)に合うもので、そのプラグを基板に取り付けています。このプラグを無線機のマイクコネクタに差し込んでぶら下げた状態で使います。
この基板は特にケースに入れないため、部品の保護を兼ねたプリント基板と同じ大きさのアクリル板にホルマール線で作ったワンターンのループアンテナを張り付けています。

送信部の回路は次のとおりです。

送信部はハンドマイクの中に入れるため、できるだけ小さい方が良いので1.25mmピッチの蛇の目基板で作り、部品はチップ部品を使いました。

発振部はコルピッツ発振回路で、トランジスタは手元にあった2SC5089を使いましたがFM放送帯で発振できればなんでもOKです。またバッファーにも同じトランジスタを使いました。最初はこのまま出力としていましたが発振が弱くアンテナが短いため、出力不足でバッファーの意味でも出力段にここでもuPC1651のICを使いました。

FM変調はバリキャップ1SV50を使いましたが、これは手持ちの部品を活用したまでで、特性等に特に意味がある訳ではありません。変調のNJM4558の出力は中点の3V程度の電圧が出ており、この電圧では1SV50の容量は30pF程度になります。

送信部のマイクは、手持ちの古いハンドマイクを活用することにし、蓋を開けてみるとダイナミックマイクが付いていました。その出力をOPアンプの4558で増幅します。マイク出力は2mV程度で、変調のためのバリキャップへの電圧を1Vと見積もると500倍約54dBのゲインが必要になります。そのため2段のアンプに振り分けて1段27dBのゲインとしました。

この基板はマイク本体のケースの中の隙間に入れました。

ワイヤレスマイクの外観は次のようになりました。電源の電池は、電圧と容量を考え006Pにしたいため、マイク本体の下に取り付ける電池ケースをアクリル板で作りました。アクリル板を電池の外形の大きさに切り、つなぎ目はアクリル板と一緒に売っている三角形で棒状の補強材で貼り付けています。この加工にはアクリル専用の接着剤を使用することで、強力に接着できます。

このケースはマイクに接する部分に穴を貫通させて3mmのビス2本で止めています。
底蓋は取り外しできるようにケース側に1mmの銅線でボッチを作って止めています。底蓋を外す際は小さなドライバーでこじ開けます。電池ケースの下側から出ているリード線はアンテナ線です。

このワイヤレスマイクを作ってみた感想は、LPF、発振回路とも再現性が比較的不安定のため、できれば受信部は普通のスーパーヘテロダイン方式にした方が良いように感じました。

実際に使ってみると一応便利ですが、マイクのカールコードを無くすためにここまでする必要があるのかどうか、正直なところ少し疑問が残る結果となりました。

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