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Masacoの「むせんのせかい」 ~アイボールの旅~

第21回 七沢希望の丘初等学校アマチュア無線クラブ(JN1YGB)の皆さん

Masacoの「むせんのせかい」 ~アイボールの旅~

◆ARISSスクールコンタクトのこと

クラブ活動の後、島根校長先生、牛島先生、八田さん、德久さん、髙﨑君と、もう少しお話ししました。伺いたかったのはARISSスクールコンタクトのこと。


アマチュア無線クラブ顧問の牛島先生(JI1IXC)と島根校長先生(JJ1EUC)

「ARISSスクールコンタクトは、私の前任校(青山学院初等部)でやったことがありました。凧揚げの時に八田さんといろいろお話しました。その後、学校行事で丹沢山系の大山へ6年生のお別れ遠足で登った際、山頂と学校のアマチュア無線でのやり取りを見た児童が、アマチュア無線に大変興味をもち、アマチュア無線クラブが創立しました。最初は純粋にマイクを握るため、子供たちが数か月の間に勉強していましたが、ARISSスクールコンタクトの発表からより一段と励み、ハムの免許を取ったんです。

子供にはよい動機づけになりました。この動機づけがヒットすると、子供はそれができてしまうんですよ。だから回りは、良いチャンスボールを投げてあげる必要があります」と島根校長先生。

--そうですよね。「ハムの資格を取れば、宇宙飛行士さんと交信できる!」と聞いたら、子供たちは頑張っちゃいますよね!!

「ところが、3月にARISSスクールコンタクトの申請を出したら、6月下旬になってNASAから“9月か10月の実施候補にします”という連絡が来たんです。もっとずっと先だと思っていたんです。これでは準備が間に合わない。最終的には12月の実施になりましたが、大変でした」

「みんなでメーリングリストを作って連絡を行いましたが、何百というメールが飛び交いました」

「アンテナシステムは全部手作りで、公民館を借りてアンテナ作成やケーブルの準備などを何度かに分けて行い、一番最後に学校へ持ち込みました」

「あの時はよくできましたね。まさに財産ですね」

と、島根校長先生、牛島先生、八田さん、德久さんも思い出を語ってくれました。


ボランティアスタッフの皆さんが、ARISSスクールコンタクトで使うローテータ(仰角、方位角の2基)をパソコンでコントロールできるかをテスト中の写真です

ところが、アンテナ建設では問題発生!!

「最初は、アンテナを校舎の屋根に立てようと思ったのですが、世界的な建築賞をもらった校舎なので、勝手な変更ができないんです」

--ええっ、それは困りましたね!!

「はい。さあどうしよう!? と考えて、じゃあグラウンドに10mのタワーを組んで設置するしかない。でもグラウンドでは運動会の練習もやっている…。子供たちに“悪い、ちょっと貸して”と言って一部を使わせてもらいました。こうして先生方も子供たちも全員がARISSスクールコンタクトに関わっていきました」


校庭の一部を使ってアンテナタワーにクロス八木を設置中。給電部のケーブル作りからタワー建設まで、やることはとても多かったそうです

--学校ぐるみの一大イベントですね。油井宇宙飛行士に質問することもみんなで準備したんですか?

「ARISSスクールコンタクトは、アマチュア無線部の8人の子供たちがマイクを握ることになりました。8人で3周ぐらいはできるだろうと、質問は24項目を準備することにしました。修学旅行のバスの中でみんなで考えて、一部は一般募集もしたんですよ」


ARISSスクールコンタクト当日、アマチュア無線クラブの8人が交代でマイクを握り、24の質問すべてをすることができました

その中には「宇宙ごみにはどんなものがありますか?」「宇宙でくしゃみをするとどうなりますか?」なんて質問もあったそうです。そして「アマチュア無線では実際に会う(アイボール)をしますが、宇宙から帰ってきたら、この学校に来てくれますか?」という質問も!! この質問はさすがの油井さんも答えづらかったみたいで、交信の翌日、Twitterで下の写真のようにつぶやいていらっしゃったそうです。


ARISSスクールコンタクト翌日、油井亀美也宇宙飛行士のTwitterより

--ほかにも、大変だったことはありますか?

「当日、ISSからの交信は油井さんが担当してくれることになりましたが、もしスクールコンタクトのスケジュールが変ったり、油井さんの帰還が早くなったりしたときは、日本人以外の宇宙飛行士さんが担当することになるので、英語で質問する練習も必要でした」

--えー、英語! 私は今「Masaco&FB Girlsの目指せバイリンガル」でスパルタ教育を受けてるので(笑)、大変さがわかります!!

こうして2015年12月2日、ドキドキとワクワクの中でARISSスクールコンタクトが始まり、無事に成功!!! コントロールオペレーターを務めた八田さんが呼びかけ、油井さんから応答があったときは、みんな「やったー!」という気分だったそうです。子供たち交代でマイクを握り、用意した24の質問が全部できて本当によかったね!!


油井宇宙飛行士と交信する子供たち


当日は父兄や地元の人たちも応援に来てくれました

◆ARISSスクールコンタクトが与えた影響

素敵なことに、ARISSスクールコンタクトが行われたことで、子供たちや父兄の間に、いろいろな良い影響があったそうです。

子供たちは宇宙を身近に感じるようになったり、ハムの資格を取った人もいるそうですし、夏休みの自由研究に「モールス符号について」を発表した子までいたそうなんです!!

アマチュア無線クラブの髙﨑君は、お昼休みになると先生のところへ「無線機貸してください!」と来て、ずっと無線を聞くようになったそうです。そればかりか、地元の航空祭に出かけたり、地元の鉄道無線に詳しくなったり!! ついにはお母さんもハムの免許を取ったんですって!!! お母様♪ 素晴らしい!!!

ほかの父兄の中にも、お子さんと一緒に養成課程講習会に参加する人が増えているそうですよ。そして、ARISSスクールコンタクトに協力してくれた地元の無線クラブの人たちは、その後もクラブ局の運用やアンテナ製作などでサポートを続けてくれているそうです。

またARISSスクールコンタクト当日に駆けつけてくれた、青山学院初等部アマチュア無線クラブの皆さんとの交流も続いています!


青山学院初等部アマチュア無線クラブの皆さんから受け取った「友好証」を掲げる髙﨑君。今でも校内に大切に飾ってあります

アマチュア無線クラブの今後ですが、牛島先生は「今は授業の範囲での活動ですが、そのうち移動運用をしたり、コンテストにも参加してみたいです」と語っていました。

私の甥っ子も無線に興味があるけれど、お父さんもお母さんもハムじゃないし、どうやって入門したらいいかわからないみたい…。もし小学校にアマチュア無線クラブがあって、先生や地域の人が教えてくれたら、関心を持つ子供は多いだろうなあ~。電気や宇宙、科学全般の知識もつくしね! “いろんなチャンスボールを投げてあげる”ことで、スポンジのようにどんどん吸収していく子供たち♪ 夢や可能性が将来へとつながっていくんやなぁ♡ 情熱をもった素晴らしい取り組みの学校でした♪♪♪


JN1YGBのQSLカード

というわけで、七沢希望の丘初等学校アマチュア無線クラブの皆さん、島根校長先生、牛島先生、八田さん、德久さん、そして髙﨑君、どうもありがとうございました! これからも元気いっぱいの声で交信を楽しんでね。私もお空で会えることを楽しみにしています!!

(JH1CBX Masaco)

★Masacoプロフィール

兵庫県生まれ。シンガーソングライター。
学生時代は陸上競技ランナー、全日本インカレ出場。公務員となったが「歌い手になりたい」を実現すべく退職し上京。

NHK朝の連続ドラマ小説出演などを経て、IBS茨城放送のレギュラーラジオ番組パーソナリティーを6年、ラジオNIKKEI第一でもパーソナリティーとして活躍。全国高校統一模擬試験「英語リスニングテスト」の 日本語出題ナレーターなども務める。

オリジナル「あなたとともに咲かせましょう/むせんのせかい」はバックに流れるモールス信号も話題となり無線愛好家からの支持も得る。ファン1人1人からのエールを受け出来上がった最新作「むこう岸」はMasacoの新たな世界が広がっている。

コールサインはJH1CBX(第3級アマチュア無線技士)

・公式サイト:http://www.19box.net/masaco/
・オフィシャルブログ(Masaco Diary):http://blog.goo.ne.jp/33masaco/
・Twitter:https://twitter.com/Masaco3
・Facebookページ:https://www.facebook.com/Masacosama

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