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テクニカルコーナー

My Project/第13回 【ワイヤレス】 腕時計型ハンディー機リモコン

JP3DOI 正木潤一

回路
動作などについては、前ページにある動画を参照してください。また、マイコンのプログラムはここからダウンロードできます。


ブロック図


結線図

・操作ユニット
電源(“VCC”)にはボタン電池(3V)かリチウムイオン電池(3.7V)を使用します。


キー操作回路

腕時計型コントローラーのスイッチに触れる指先と腕とが導通することでキー入力を検出します。タッチ端子、つまりPNPトランジスタのベースに指で触れると、腕と時計の裏蓋を通じて僅かにベース電流が流れ、エミッタ-コレクタ間が導通します。すると、NPNトランジスタのベースに電流が流れ込んでコレクタ-エミッタ間が導通し、マイコンの入力端子がGNDに落ちます。このキー入力により、各ポートに割り当てた制御データ(ビットパターン)がGP2から出力され、そのまま発振回路の電源になります。

なお、操作ユニットと制御ユニットでプログラムを共有しています。GP3ポートに入力する電圧でマイコン内部のプログラムを切り替えていて、このポートを“High”(100kオームを介してVCCに接続)にすると操作ユニット用のプログラムになります。


315MHz発振回路

マイコンから出力される制御データの"High"と"Low"がそのまま発振回路の電源になります。つまり、制御データの"1"と"0"で発振を断続させることで2値データ変調(On Off Keying)を掛けます。制御電波の届く範囲が半径1mくらいになるようにアンテナの長さを調節して、微弱電波の範囲内に十分に収まるようにします。それでも、リグをベルトに取り付けたりバックパックの中に入れたりした状態で制御できます。

・受信ユニット
受信回路と制御回路の電源は無線機から供給されます。図中の“VCC”は、無線機の外部電源端子に接続します。


受信回路

制御電波の復調には超再生検波方式を使用します。315MHzの電波を検波して増幅し、オペアンプによるコンパレーター(データスライサー)によって矩形波に整形して制御データを復元し、"High"と"Low"の信号としてPICマイコンに入力します。


制御回路

マイコンの出力ポートにはトランジスタスイッチを付け、ポートが"High"になると無線機の制御ライン”REMOTE”が抵抗を介してGNDに接続されるようになっています。つまり、制御回路がリモコンキーを押したような振る舞いをするわけです。

・制御データ
4つのうちどのキーが押されたのかを、発振状態(High)と非発振状態(Low)によって受信ユニットに送ります。無信号時の内部ノイズにより、オペアンプからは常にランダムなビットパターンが出力されています。ノイズとデータを識別するためのプリアンブル(目印)として、3ミリ秒間“High”(=発振)状態にします。受信側では、“High”(=315MHzの信号)が3ミリ秒間続いたら制御データとみなし、後に続くビット(0.5ミリ秒幅)を制御データとして認識します。キーを割り当てたビットに応じたポートがトランジスタスイッチをONにして、抵抗を介して“REMOTE”ラインをGNDに落とします。


制御データのビットパターン

制御データの送出は7/1000秒で終わります。あまりに短いので、広帯域受信機によってはスケルチが開きません。

部品実装
・受信回路
基板を極力小さくするため、AFアンプまでを基板上に実装し、最後に上からオペアンプを被せます。


一旦ここまで実装してからオペアンプを載せる↓


オペアンプを実装したところ
(使用しないオペアンプの端子は切り取っておく)

・受信ユニットの制御回路


マイコンを中心に左右で基板を分ける

・操作ユニットのキー操作回路


マイコンを中心に左右で基板を分け、発振回路を右側の基板に接続する


「コ」の字型になるようにマイコンの脚をハンダ付けする

・発振回路


「コ」の字型に組んだ操作回路の側面に取り付ける

<参考:基板のホール内への部品実装>
ユニバーサル基板のホールは1mm径なので、1608サイズのチップ部品が中に収まります。今回の回路では、GNDに接続する部品の幾つかをホールの中に入れて直接裏面のGNDと接続させました。これにより、基板のサイズを極限まで小さくしています。また、部品を直接GND(ベタアース)に接続することから寄生インダクタンスが最小となるため、高周波的にもメリットがあります。


基板の断面図

GND面の銅箔の穴開けには、リーマーを使わずに1mm径のドリルの歯を使います。これは、穴を開けたときに銅箔片がホールの中に残らないようにするためです。銅箔片が残っているとショートしてしまいます。

使用感
キーにメモリーチャンネルやコールチャンネルを割り当てておいて、手元で切り替えることができます。ID-31/ID-51では、スケルチを開いた状態で[△/▽]キーを押すと、音量がアップ/ダウンします。スピーチ機能をONにしておけば、周波数やコールサインを読み上げられるので画面を見ずに設定できます。
各社から様々なスピーカーマイクやイヤホンマイクが出ているので、好きなものを使うことができます。無線機を露出せずにある程度制御できるので、襟元にマイクを付けるイヤホンマイクと組み合わせてスマートでスリムな運用も可能です。

注意:
・今回使用した腕時計は防水ではありません。リチウムイオンバッテリーを使う場合は、絶対に水に濡らさないよう気を付けてください。
・無信号時の内部ノイズはプログラムで対策していますが、パソコンなどの外来ノイズによって誤って押下検出する場合があります。特に受信アンテナやケーブルに触れたりするとノイズが発生して誤作動することがあります。
・制御電波自体が極めて弱いので、距離や環境によっては制御波がデータ化けを起こして誤作動することがあります。
・リモコン機能は、ボイス送信などの送信中の機能も制御出来ます。しかし、今回のコントローラーは検波回路の選択度が低いため、近傍界の送信波を検出してしまう(“コンパレーター出力がHighになったままになる”)ことがあり、送信中は制御できません。
・キーに割り当てる機能によっては長押しが必要です。ソフトを改良すれば対応可能ですが、現在公開しているソフトでは対応していません。

最後に:
今回は、電波法で定められた微弱電波の範囲内で楽しむワイヤレスデータ通信を紹介しました。市販のモジュールを使わずに発振回路や復調回路を1から作ると、低電圧でも動作する回路やコンパクトに組むための実装方法を工夫する楽しみがあります。また、ハードだけでなくマイコンのソフトウェア要素もありますから、まさにこれまでのMy Projectの記事の集大成といったところです。

ところで、制御ユニットのマイコンのGP2端子が未使用です。ここからCI-Vコマンドを出力できるようにすれば、もっと操作の幅が広がります。まだまだ改良の余地が残っていますので、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

部品の入手先:
-SAW共振子-
・『ザイコストア』
https://www.zaikostore.com/zaikostore/

-その他の部材-
・『秋月電子通商』
http://akizukidenshi.com/catalog/top.aspx
・『マルツ』
http://www.marutsu.co.jp/
・『シリコンハウス』
http://eleshop.jp/shop/

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