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Masacoの「むせんのせかい」 ~アイボールの旅~

第28回 FMぱるるんアマチュア無線クラブ(JQ1ZKB/8J1MITO)の皆さん

Masacoの「むせんのせかい」 ~アイボールの旅~

「FMぱるるん」開局のあゆみ

ここで、「FMぱるるん」の開局とアマチュア無線クラブ発足のいきさつを海老澤さんに教えていただきましたよ。


楽しいお話を聞かせてくださった、FMぱるるんアマチュア無線クラブの藤田さん(左)、水田さん(中央)、海老澤さん(右)

FMぱるるんの正式局名は「水戸コミュニティ放送」(コールサイン:JOZZ3AN-FM)で、1997(平成9)年3月2日に開局しました。放送局にはいろいろな種類がありますが、1992(平成4)年に施行された「コミュニティ放送局」という制度に基づく、市町村単位を放送エリアとして地域に根ざした情報発信を行うための局で、当時の送信出力は10W(現在は20W)。茨城県水戸市と周辺地域をカバーしています。


初代FMぱるるんのロゴマークは、新聞記事で開局を知った地元の方がデザインしてくださったもの。このキャラクターは「マイク君」と呼ばれていたそうです

海老澤さんは昔、茨城県の民放AMラジオ局に10年ほど勤務していました。その後、事情によりご家族が局長を務めていた特定郵便局を継ぐ必要が生じたため、このラジオ局を残念ながら退職することになったそうです。

郵便局長として毎日忙しい仕事に当たる中で、たまたま郵政省(当時)で、コミュニティ放送局の制度を作った人と知り合いました。ある日、その方から「海老澤さん、まだラジオの仕事をしたいんじゃないの? それならコミュニティ放送局という制度を活用して、水戸でラジオ局を開設しては?」というアドバイスがあったそうです。

昔から、地域に根ざすコミュニティの中核にあるのが郵便局でしたが、次第にその“地域性”が薄れていくのを実感していたことから、「それをフォローしていくのは絶対にコミュニティ放送局だ」と気付き、放送局を立ち上げる話にとても興味を持ったそうです。

その頃、特定郵便局長は「国家公務員」という扱いでしたので、コミュニティ放送局を兼業することはできません。そこで海老澤さんの奥様(元・地元民放ラジオ局のアナウンサー)が社長を務めることにして、ご自身は“参加はするけれど無報酬”という形で放送局作りに関わることになりました。

放送局を作る方法としては、地元の自治体に資金面などで協力してもらい「第三セクター」で開局する方法と、民間資金だけで開局する2つの方法がありますが、海老澤さんは局の運営や番組制作の制約が少ない「純民間」にこだわり、立ち上げ準備をほぼ1人で進めました。

送信機やミキサーなど、放送に必要な機材は自力で調達し、そのセッティングや配線なども海老澤さんたちが手作業で行うことでお金を節約。また放送局のスタジオを郵便局の建物の上階に作ることも認可を受けて実現しました。


FMぱるるんで使用しているミキサーの1台

こうして節約する代わりに、流す番組は開局時点からクオリティの高い物を提供しようと、メインとなる番組スタッフはすべて東京から集め、構成作家も起用。東京の民放FM局に負けない洗練された番組作りに力を注いだそうです。開局後は、東京からのスタッフ用にホテルと一軒家も借りたんですって!

結果は大成功! この頃の茨城県は首都圏で唯一、民放のテレビ局もFM局もない“電波のエアポケット”のような地域でしたから、FMぱるるんはとても新鮮で、地域の人たちに受け入れられ、番組のリスナーはどんどん増えていきました。そして今は、社員やパーソナリティ、リポーターなどを含めると50人を超えるスタッフが頑張っているそうです。

ちなみに「FMぱるるん」という名前の語源ですが、友達を意味するパル(Pal)と、ルンルンした気分を組み合わせて「ぱるるん(palulun)」にしたんですって!! でも海老澤さんは「実は開局当時、郵便貯金に“ぱるる”という愛称がついていました(笑)。FMぱるるんの“ぱるる”は、郵便局の放送局という意味も込めています」と、こっそり教えてくださいました!


FMぱるるんのロゴマークは2017年夏にデザインをリニューアル。フランス人デザイナーのセバスチャン・コジンスキー氏によるものです

私、このお話を伺っていて、ちょっと気になったことがあります。思い切って海老澤さんに伺ってみました。

--あの…水田さんや周囲の皆さんが、海老澤さんのことを「局長」と呼んでいらっしゃいますが、もしかして“郵便局長さん”という意味ですか!?

「はい、大当たりです! 郵便局長はもう辞めましたが、郵便局長を辞めた後でもずっと周りの人たちから“局長”と呼ばれ続けているんです(笑)。今はFMぱるるんという放送局の局長でもあるので、まあいいかなと思っています」

--やっぱり! それで「局長」だったんですね~!!

アマチュア無線クラブ誕生のきっかけ

ところで、開局直後のFMぱるるんにはアマチュア無線クラブも、ハムの番組もありませんでした。

「きっかけは2011(平成23)年3月の東日本大震災でした」と海老澤さん。「あまり知られていませんが、関東地方では水戸市が一番震度が大きかったようで、甚大な被害がありました。地震直後には市内は停電し、電話もつながらなくなりました」

--大変な地震でしたね…。FMぱるるんにも被害はあったのですか?

「はい、建物の中に約6畳と8畳のブース(スタジオ)がありましたが、2トンも重さがあるのに30cmも動いてしまい、中にいたスタッフが出られなくなってしまいました。停電と電話回線の途絶で放送は完全に止まったばかりか、外部と連絡ができなくなりました。壁は一部が剥がれ、ラックに整理されていたCDは全部落ちるし…。

--そんな中でも、放送はすぐに再開したいですよね。

「私はその時のために放送局を作って、少しは災害に備えていたつもりなのに役立ちませんでした…。あとで皆さんから“地震のとき、すぐラジオでFMぱるるんをつけたけれど、聞こえなかったよ”と言われたのが悔やまれて…」


東日本大震災はFMぱるるんにも大きな被害をもたらしました。2トンの重さがあるブース(スタジオ)が30cmも動いて、隣の事務室の壁が破壊…。停電は復旧までに4・5日かかったそうです

「震災直後、FMぱるるんの送信機とアンテナがある茨城県庁に行って、送信機にマイクをつないで放送を行おうとしました。苦労して県庁の25階の屋上まで駆け上がってみたら、送信アンテナが倒れていて全然使い物になりませんでした」

--うわあ…、悔しいですね。

「そこで、FMぱるるんの屋上に急ごしらえのダイポールアンテナを物干し竿で立て、駐車場に止めた車から電源を取って、翌朝から放送を再開しました。サービスエリアは少し狭くなりましたが仕方ありません。市内の各地へスタッフが取材に飛び回り、FMぱるるんまで戻ってリポートするという状態がしばらく続きました。最近の電話機は停電すると使えないですし、“最後の最後に頼れるのは無線だなあ”ということを痛感したのです」

--そうですよね!! いざという場合の連絡手段は無線ですよね!


東日本大震災の翌日、FMぱるるんの屋上に臨時に建てたダイポールアンテナで放送を再開! 小型ミキサーにマイクとCD、中継リポート用の携帯電話など最低限の機材を使って情報を送り続けました。アナウンスをするのはスタッフの奥山さん(JI1MYQ)

「それでスタッフに“みんなでアマチュア無線の資格を取ろう!”と呼びかけたのが、アマチュア無線のきっかけです。その呼びかけに応えて、社内で一番早くハムの資格を取ったのが水田さんでした」

--水田さん、すごい!!

「最初に資格取得を呼びかけたときは、スタッフも“携帯電話があるのに無線?”とか、“無線ってトラックの運転手さんが使うアレでしょ?”といった反応でしたが、水田さん効果もあって少しずつ理解を深まり、今ではFMぱるるんのスタッフ全員がハムの資格を持っています!」


FMぱるるんの本社を個人局の常置場所にしているスタッフも多いので、保管している無線局免許状もこんなにたくさんあります!

--わあ、スタッフの皆さんも頑張りましたね! 皆さん、個人局の無線機は何を使っているのか気になります。

「実はID-31が一番人気なんです。安いし小さいし、D-STARレピータ経由で遠距離交信もできて、相手局のコールサインも表示されますから」

--あ! なるほど!! ID-31は初心者に優しいハンディ機ですよね♪ ところでFMぱるるんでアマチュア無線の番組を始めたのは、どんな理由からですか?

「無線に関心がない人にも受け入れてもらえるようなハムの番組があると、アマチュア無線への理解も深まるし、ハムを目指そうとする人が増えるだろうなと考えて、2014年8月に“CQ ham for girls”、2016年6月に“OMのラウンドQSO”を始めました。放送回数はハムガールのほうはもう200回、OMのほうも100回を超えました。こういう番組を実現できたのも、自由な番組編成ができる純民間の放送局だからだと思います」

この番組の影響もあってか、最近は水戸市周辺でアマチュア無線の養成課程講習会を受ける人が増えているんですって! ステキなことですね~!!

東日本大震災以降、FMぱるるんは、地震や台風で被災した地域に情報を伝える「臨時災害放送局」の設置、運営にも積極的に協力しています。写真は2015(平成27年)9月の関東・東北豪雨で被災した茨城県常総市内に開設された「常総災害FM」の放送風景です。被災の3日後には電波を出し始めました

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次号「月刊FBニュース2018年10月号」は 10月1日(月)と15日(月)に公開予定

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