2014年12月号

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ID-5100に追加されたファーストデータ

編集部

先日、アイコムのWEBサイトでID-5100の新ファーム:Release J2が公開されました。またハンディ機ではID-51の機能プラスモデルが発表されるなど、D-STARはさらに便利で楽しく進化し続けています。今回はファームアップでID-5100に追加された『ファーストデータ』を中心にご紹介します。

新たに追加された機能

ID-5100の新ファーム:Release J2では、主に次の機能が追加/変更されました。
●データ通信のファーストデータ対応
●スタンバイビープ機能の選択肢追加
●DVモードでの録音データに交信相手との距離表示を追加
●GPSロガーの記録センテンス選択設定追加
●外部GPS接続対応
●SDカードのセーブ/ロード高速化

『ファーストデータ』についてはこの後ご説明しますが、例えばスタンバイビープのピロピロ音は、仲間からの呼びかけを聞き逃さなくなり、安心して待ち受けできるようになりました。またGPSやSDカード関連の機能アップも、使っているうちに便利さが実感できる内容ですが、これらの機能の多くはID-51 アイコム50周年記念モデルやID-51機能プラスモデルにも搭載されており、ID-1やIC-U1でD-STARデビューした愛好家にとっては、急激な進化が楽しくてたまらないのではないでしょうか。

ファーストデータ

D-STARのDV(デジタルボイス)モードは、伝送速度4.8kbpsの中で音声セグメントとデータセグメントを交互に伝送させることで、音声でQSOしながら、GPSやテキストなど複数のデータを同時に送信できるしくみになっています。

ID-5100やID-51のPlusモデルでは、この伝送速度を速めてデータ通信ができる機能が追加され、『低速(スロー)データ』に対し、伝送速度が速くなったことから『ファーストデータ』と呼ばれています。

なお4.8kbpsのDVモードで送信するデータを『スロー(低速)データ』と呼ぶのに対し、128kbpsのDDモードで送信するデジタルデータは『高速データ』と呼ばれています。

なぜファーストデータは伝送速度が速くなるのか?これにはD-STARの音声系通信の諸元を見るとわかります。


JARLの『アマチュア無線のデジタル化技術の標準方式』諸元Ver.5.0aより抜粋

DVモードでは音声や音響を伝送する「音声フレーム」と「データフレーム」を交互に伝送しますが、データフレームは24bitと小さいため、2つのデータフレームをつなぎ合わせ(24+24=48bit)ブロック化して通信データとして使われます。データブロックの最初のバイト(8bit)はデータ種別を判別するミニヘッダとして使うため、1つの通信データは40bitとなります。


DVモードのフレーム構成

最初のデータフレームと音声フレームの21回ごと、420ms周期で再同期信号(24bit)が挿入され、このときのデータ伝送速度は

40bits *(20frame /2) /420ms = 952.38 bps

となり、DVモードの低速(スロー)データ通信では約950bpsの速度で通信を行っていることがわかります。

ファーストデータ通信の場合も420ms周期で再同期信号(24bit)を挿入される仕様はスローデータと同じですが、音声フレームとミニヘッダの割当が変わり、音声フレーム部分にもデータが割り当てられます。


ファーストデータのフレーム割り当て例
(JARLの『アマチュア無線のデジタル化技術の標準方式』諸元Ver.5.0aより)

ファーストデータでは、約1秒間隔でファーストデータをスローデータのブロックに切り替え、ビープ音が挿入されます。この方法でデータ伝送を行った場合、約3480bpsの伝送速度となり、スローデータの約950bpsの伝送速度に対し、約3.5倍の早さでデータ伝送できることがわかります。


ファーストデータ通信時のフレーム。データブロックの切れ目でビープ音を鳴らす。
(JARLの『アマチュア無線のデジタル化技術の標準方式』諸元Ver.5.0aより)

ここで気になるのが、「ファーストデータの伝送途中でしゃべりたくなったらどうするか?」ですが、伝送途中にPTTをONにすると、ファーストデータのブロックの切れ目の後からスローデータに切り替わり、通常の音声フレームとして音声が送信できるようになります。


ファーストデータ通信中にPTTを握り音声通信(スローデータ)に切り替えた時の構成
(JARLの『アマチュア無線のデジタル化技術の標準方式』諸元Ver.5.0aより)


RS-MS1Aの画像伝送画面
ファーストデータ対応機同士では画像を高速伝送できる


PTTを押している間、同じ画像をリピート送信(スロー)する機能。
ラグチューしている間画像を上書きし続けるため、QSLカードデータなどの伝送に適している。

D-STARのメリット

今秋、D-STAR&画像伝送機能を防災訓練に取り入れ、好評だった旨の情報が各地から寄せられました。D-STARによる通信にAndroidアプリのRS-MS1Aを併用することで、コンパクトな装備でも、GPS機能を利用したマッピング機能や画像やテキスト伝送などプロ級のインフラ構築が可能なことから、今後ますます各地で広まると期待しています。しかしD-STARを導入する一番のメリットは、「楽しく遊べる」ことだと思っています。日頃楽しく遊ぶことで、興味が広がり、機能を使いこなし、新たな遊び方を切り開けるのではないでしょうか。

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