2015年12月号

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<D-STARレピータ設置事例>
万一の災害時にもインフラとして活用可能なJP6YHZ(鹿児島430)を設置 - 鹿児島県鹿児島市/米盛病院(社会医療法人 緑泉会)

全国各地に設置が進んでいるD-STARレピータ。その設置場所や管理団体の活動に注目する「D-STARレピータ設置事例」として、今回は鹿児島県鹿児島市のJP6YHZレピータ(鹿児島430)を紹介しよう。


2014年9月に鹿児島市与次郎に移転開院した米盛病院。最上階の10階にヘリポートを設置。
JP6YHZレピータのアンテナも塔屋にある

★移転開院した病院にレピータ局を設置

JP6YHZレピータは鹿児島県鹿児島市の中央部、与次郎1丁目に2015年2月14日に開設。周波数439.45MHzのDVモードで運用されている。設置場所は2014年9月9日に同地に移転開院した米盛病院(社会医療法人 緑泉会)で、最上階の10階塔屋にアンテナがある。ここは桜島を目の前に見ることができる絶好のロケーションで、鹿児島湾を中心に広範囲にカバーしている。


米盛病院のヘリポートからは桜島が目の前に見える。取材日も噴煙が上がっていた


米盛病院の1階ロビー。ホテルのような落ち着いた雰囲気だ

米盛病院は1969年に米盛整形外科医院として鹿児島市内で開院。以来40年以上、地域に根ざした医療活動を行ってきた。2014年9月の移転開院後は防災上の災害拠点病院を目指し、救急科と整形外科を核として、24時間救急医療に対応した体制を取っている。ドクターカーやドクターバイク、民間医療ヘリなども導入し、屋上にはヘリポートも設置された。

そして、このD-STARレピータには「万一の災害時にも、インフラとして活用できるようにしたい」という、病院関係者の願いがこめられている。JP6YHZ管理団体のメンバーで、米盛病院の災害対策室室長 兼 日本DMAT業務調整員の内山 圭氏(JA6QAH)にお話を伺った。

★内山氏とD-STARとの出会い

内山氏は1995年1月17日に発生した阪神大震災をきっかけにアマチュア無線局を開局。「この地震が日本の災害医療の原点だ」と語る。同氏は震災発生の2日後、交通が麻痺する中で名古屋から被災地入りした。電話は不通、電気、ガス、水道などのライフラインもすべて停止している状態を目の当たりにして「これは通常の救急医療とは違う。患者を“待つ”のではなく、医療側から患者のところへ行かなくてはいけない」と直感。アマチュア無線家に協力してもらい、活動拠点に無線機とアンテナを仮設、救急車にアマチュア機を搭載して被災地を巡回する医療活動を行ったという。

また2011年3月11日の東日本大震災の際、内山氏はDMAT(災害派遣医療チーム)の一員として、地震発生の6時間後には現地へ赴くことが決まった。携帯電話や有線電話網が途絶する中、用意できた無線機はMCA無線と特定小電力トランシーバーしかなく、「被災地支援にあたる周辺地域など、他エリアとの一斉通信が困難で非常に苦労しました」と振り返る。


JP6YHZ管理団体のメンバーで、米盛病院の災害対策室室長 兼 日本DMAT業務調整員の内山 圭氏(JA6QAH)

「そこで、無線関係のコーディネーターとして日頃お世話になっている原口無線(鹿児島との県境に近い宮崎県都城市にある)に“なにか良い無線システムはないだろうか”と相談したところ、教えてもらったのがD-STARだったのです。近距離なら直接波で、周辺なら近くのレピータ局の山かけ、遠方ならゲート越えという方法で、あらゆる場所と連絡が取れるのは驚きでした。4アマ資格で手軽に使えるというのも魅力でしたね」と語る内山氏は、DMAT隊員にも4アマ資格の取得とD-STARの導入を進めていった。

ちなみにD-STARは、東日本大震災を契機に「画像伝送アプリ」が開発された。現在、Androidスマートフォンと連携し、撮った画像や位置情報を送受信できる「RS-MS1A」は1万人以上に愛用され、アマチュア無線が参加する防災訓練などでも、被災地の状況を手早く伝達する情報ツールとして使われている。

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