2014年3月号

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テクニカルコーナー

CY703F、CL40Cx2使用レポート

編集部

2月15~16日の週末に開催されたARRL international DX コンテストの電信部門で、主題の大型アンテナを使用する機会を得たのでレポートする。

仕様等

クリエート・デザイン製の両アンテナの主要スペックを取説から抜粋すると、

CY703F (取り付け位置 51.3mh)
・周波数帯: 3.5~3.8MHz 3チャンネル
・利得: 8.5~11.5dBi/1000km以上、最大放射角28°/40mh
・FB比: 8~22dB
・エレメント数: 3
・エレメント長(最長): 44.8m
・ブーム長: 19.5m
・回転半径: 24m
・耐風速: 45m/s
・質量: 480kg

CL40C (取り付け位置 55.3mh、27.1mh上下2段スタック)
・周波数帯: 7.0~7.2MHz
・利得: 9.0~11.0dBi/1000km以上、最大放射角25°/25mh
・FB比: 20dB平均
・エレメント数: 4
・エレメント長(最長): 22.4m
・ブーム長: 15.6m
・回転半径: 13.3m
・耐風速: 35m/s以上
・質量: 110kg
(上記はアンテナ単体のスペック)

なお、今回は、3.5MHzでの比較用にフルサイズのダイポールアンテナ(給電点地上高30mh)を用意したが、このダイポール(以下DP)は水平や逆Vには展開せず、偏波面がなるべく垂直に近くなるように、逆L型に設置した。これによって、3.5MHzでは、CY703とDPの切り替え比較が可能になるとともに、偏波面の切り替えにもある程度対応可能とした。

CL40Cのスタックとシングルの切り替えについては、クリエート・デザイン純正のスタックキット(CN-056H)と、アンテナスタック制御器(CM-40)を使用した。この制御器は、通常状態でスタック動作となり、内部のリレーに12Vを印加することで、上側1枚のシングル動作となる。(下側1枚のシングル動作は選択不可)

CM-40の内部

VSWR

実際に使用する前に、まずはVSWRの測定を行った。較正されていない機器で測定したたため、多少の誤差がある可能性はあるが、目安として見ていただければ幸いである。

CY703F VSWR (Ch1 Ch2 Ch3は、チャンネル切替器のポジション)

CY703Fはエレメント長が長いため、1チャンネルあたりのカバー範囲が広いことが分かる。ちなみにセンターのCh2ポジションでは、VSWR1.5以下の帯域が約220kHzとれている。そのため、3チャンネルの組み合わせで、3.5MHz帯と3.8MHz帯の全バンドをVSWR1.3以下でカバーできている。

CL40C VSWR (シングル/スタック)

一方、CL40Cは、シングルでも、7.0~7.2MHzの全バンドをVSWR1.3以下でカバーできているが、スタックにすることにより、さらに使用可能帯域が広がり、7.0~7.2MHzの全バンドでSWR1.0。米国などリージョン2の7MHz帯である7.0~7.3MHzの全バンドでもVSWR1.3以下でカバーできている。もちろん調整によって同調周波数をもう少し上に移動させることで、シングル、スタックとも、さらに低VSWRで、全バンドをカバーできると思われる。

スタックによるメリットは、フロントゲインの向上、およびビームパターンの向上が期待できるとともに、使用可能帯域が広がるというメリットもあることが分かった。

ビームパターン

ビームパターンについては、簡単に測定できないため、それぞれの取扱説明書から抜粋させていただく。

CY703F (40mh)

水平面の指向性は、標準3エレ相当のパターンになっており、垂直面の指向性は、約28度で最大輻射が得られる。ただ、3.55MHzではF/Bが12dB程度と十分でないが、もともとこのCY703Fは3.8MHzで最大のパフォーマンスが得られるように設計されているため、これは致し方ない。

CL40C (シングル、25mh)

7.1MHz

水平面では4エレ相当のきれいなパターンになっており、垂直面では約25度付近で最大輻射が得られる。シングルでこのパターンのため、上下2段スタックにするとメインローブの打ち上げ角がさらに下がると思われ、遠距離通信には適するが、国内QSOには使いにくいアンテナになることが予想される。

CY703F使用感

2月のARRL international DX コンテストにおいて、関西では完全に日没となった1830j頃から3.5MHzで米国が入感しだした。しかも西も東も同時に入ってきた。しかしこれがアンテナによって著しく異なる結果となった。まず、西海岸W7のビッグステーションは、比較用のDPよりCY703Fの方がS1~2程度強かった。DPだとQSBの谷間ではコピー不可能な状況になったが、CY703Fだとフルコピー可能で、これは想定どおり。

しかし、同時に聞こえてきた東海岸W3のビックステーション2局は、CY703FよりDPの方が強く入感。しかもS1~2程度強かった。W7の局とは完全に逆の状況で、CY703Fではコピーが苦しいQSBの谷間でもDPなら楽々コピーできた。これは、おそらくこの時間、東海岸から到達した信号の偏波面が垂直に近かったからではないかと思われる。もし、フェーズドバーティカルでも設置していたのなら、この時間にもっと多数の東海岸局とQSOできた可能性がある。

その後、東海岸のビックステーションは徐々に弱くなっていったが、現地の日の出近くになると再び信号レベルが上がってきた。その時には、おそらく信号の偏波面が水平になっており、CY703Fの方が強力に受信できた。DPに切り替えるとノイズに埋もれて受信不可能な状態でも、CY703Fでは十分にコピー可能だった。

残念ながら、この2日間はローバンドのコンディションがもう一つで、CY703Fを駆使してもW1 W2は1局も受信できなかった。しかし、数局のW3と、ある程度のW4をログインすることができた。W4が日の出に時間になると、W4から連続して呼ばれたが、CY703Fでもカツカツの状況で、DPでは全く入感がなかった。ここではCY703Fの真価が発揮できた。

その後は、W7で完全に日が昇ってしまう0000j頃まで、グレーラインの移動に伴って日の出を迎えるW各局の信号は、終始DPよりCY703Fの方が、S1~2程度強力に入感した。ただ、西海岸は、距離的に近いこともあって現地の日の出時には信号が強力になるので、CY703Fを使わずとも、DPでも十分に交信可能だった。

ARRL DX CWにおける過去5年間の3.5MHzでの結果

結果として、CY703Fを使用しても、W1 W2が聞こえないというコンディションを覆すことはできないが、それでも、W3 W4 W8 W9の日の出時には、威力を発揮できた。おそらく、例年のようにCD78を使用していたのなら、2014年は30マルチに達していなかったと思われる。

CL40Cx2使用感

関西では7MHzは15時台からWが入感しだしたが、例年、この時間は、呼んでも応答がなかったり、CQを出してもあまり呼ばれなかったりと効率が悪いので、2日間とも1630Jを回ってから本格運用を開始した。例年、7MHz の運用開始後は、60QSO/h以上のレートが出るが、本年は、7MHz もコンディションがあまり良くなく、レートが上がらなかった。

なお、本年はアンテナテストをコンテスト参加の主目的にしたため、運用中にアンテナを頻繁に切り替えて信号の比較を行った。対象はW局だけでなく、ルール上JAからはコールできない、カリブからの信号についても受信比較を行ってみた。コンディションは良くないながらも、7MHzでは多数のカリブ局を受信することができたので参考になった。

その結果、スタックがシングルに負けることは一度もなかった。受信した全ての時間、全ての(北米/中米/南米の)信号において、信号強度は同等もしくは、スタックの方が若干強かった。ただ耳で聞いた限りでは信号に大差はなく、リグのSメーターで、最大1目盛り程度。平均的には半目盛り程度の差であった。

従って、3.5MHzにおけるCY703FとDPとの比較で、信号が聞こえる/聞こえないという差が出たというようなことはほとんどなく、QSBの谷間などで、スタックの方が了解度の面で若干有利だったという結果となった。もろちんスタックがシングルに負けることは無かったため、実戦では、常時スタックで使用すれば問題ないと考えられる。

仮に7MHzも比較用に垂直偏波のアンテナを用意していたなら、JAの日没時には別の結果が出ていたかも知れない。

ARRL DX CWにおける過去5年間の7MHzでの結果 (アンテナ)

上記の結果を見ると、7MHzは概ね例年程度のスコアが得られているが、2010~2013年は夜間、上記の3.5MHzに加え1.8MHzや若干14MHzも運用した。本年は、3.5MHzと7MHzの2バンドだけの運用だったことを考えると、例年より多くの時間を割いたかつ、例年より大型のアンテナを使用したにも関わらず、例年並みのスコアに終わったという事実から、やはり、今年はローバンドのコンディションがもうひとつだったと考えられる。

最後に

今回は2日間という限定された時間での使用であり、長期間使用するとまた別の結果が出るかも知れない。それでも、大型アンテナを使用してもコンディションを克服することはできないことが身をもって体験できた。コンテストは日時限定なので、開催日にコンディションが悪ければ仕方がないが、日々の運用においては、コンディションを把握して運用することが重要だと改めて感じた。

もちろん、コンディションの克服はできなくとも、アンテナが大型であればあるほど、受信、送信ともに有利であることに間違いはなく、大型アンテナの魅力は大きい。

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