2013年6月号

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移動運用便利グッズの製作

JO2ASQ 清水祐樹

第3回 1.9~7MHz 長さ10mホイップアンテナ

アンテナの基本形の一つである1/4波長垂直型アンテナは、1/4波長のエレメントを地面から垂直に立てて給電し、給電線の他方はアースに接続します。移動運用では、アースとしてラジアルや自動車のボディを利用できます。移動運用で実際に設置できる垂直エレメントの長さは、7MHzの1/4波長である約10mが限界で、これ以上の長さでは扱いが難しくなります。そこで、10mの長さのエレメントにローディングコイルを挿入することで、7MHzに加えて3.5MHzと1.9MHz(3.8MHzや1.8MHzも同様)にマッチングさせる方法が考えられます。今回は、その製作と調整のノウハウについてご紹介します。

このアンテナの最大の利点は、狭いスペースでも運用可能なことです(図1)。また、打ち上げ角が低いため、設置の条件によっては遠距離通信に有利になる可能性があります。


図1 10mホイップアンテナの全体図。伸縮ポールの上に釣竿を接続している。風による揺れを防ぐためロープを1本だけ支線として張り、写真左下のコンクリートブロックに固定。

基本構造

10mの垂直エレメントの最下部に給電し、アースとして自動車のボディーアースを使用しました。長さ10mの釣竿をそのまま使った場合、強風等で破損する可能性が高く、しかも長い釣竿は高価です。そこで長さ5.4mの伸縮ポールと長さ5.3mの釣竿を連結部品で連結することにより、10m長さのエレメントを支えます。長さ5m程度の釣竿ならば安価で、破損の心配がありません。連結部品は、厚さ1cmの木の板にVボルトと蝶ナットを取り付けたものです(図2)。当初は鉄板で作ったところ、重くて使いにくいため、木の板を使って軽量化しました。耐久性には問題ありません。


図2 伸縮ポールと釣竿の連結部分。木の板とVボルト、蝶ナットを使用。

エレメントは0.75mm2のACコードを裂いたものです。先端には小型のナスカンと呼ばれる金具を取りつけ、釣竿の先端に付けた金属製の小さなリングにワンタッチで取り付けできるようにしています。 長さ10mのエレメントの給電部付近に挿入するローディングコイルは、1.9MHzでは約96μH、3.5MHzでは約24μHが必要です。巻線にみの虫クリップでタップを取る可変コイルにより、バンド切り替えと共振周波数の調整を同時に行います(図3)。周波数の調整に使う部分は巻線の間隔を広く、それ以外は狭く巻きました。このように変則的な巻き方をしているのは、この大きさで約100μHのインダクタンスを実現するためのカットアンドトライの結果です。


図3 コイルの形状

コイルを巻いただけの場合、3.5MHzでは多くの場合SWRが十分に下がりません。原因は、給電点から見たアンテナのインピーダンスが50Ωよりも大きく低下するためです。それを補正するため、トロイダルコアを使ったマッチングトランスを使用しました(図4)。トロイダルコアはFT-114#43で、1mmのポリウレタン線を16回巻きです。アース側から10回巻きの部分を紙やすりで削って別のリード線をハンダ付けしてタップにします。7MHzを運用する場合は、スイッチを切り替えてトランスによる補正を入れないようにします。1.9MHzでは設置環境によってタップが必要な場合と、そうでない場合があり、最適な側に切り替えて使用します。


図4 回路図

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