2014年4月号

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連載記事

防災とアマチュア無線

防災士 中澤哲也

第2回 「非常通信」とは

我が国において無線通信に関する主たる法律として「電波法」があります。この中にいきなり「非常通信」とは、と条文冒頭から規定されているのではありません。ベテランハムの中には、そのような事は百も承知だ、とおっしゃる方も少なくないでしょうが、今回は改めてそこから話を進めます。

電波法において「非常通信」の定義と指される記載は第52条にあります。ここでは「目的外使用の禁止」について規定されており、その例外となる通信の一つとして記載されています。

(電波法)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25HO131.html#1000000000005000000001000000000000000000000000000000000000000000000000000000000

第52条 無線局は免許状に記載された目的又は通信の相手方若しくは通信事項(特定地上基幹放送局については放送事項)の範囲を越えて運用してはならない。ただし次に揚げる通信については、この限りでない。
一 遭難通信 …(略)
二 緊急通信 …(略)
三 安全通信 …(略)
四 非常通信(地震、台風、洪水、津波、雪害、火災、暴動その他非常の事態が発生し、又は発生するおそれがある場合において、有線通信を利用することができないか又はこれを利用することが著しく困難であるときに人命の救助、災害の救援、交通通信の確保又は秩序の維持のために行われる通信をいう。以下同じ。)
五 放送の受信
六 その他総務省令で定める通信

我が国において、無線局は「原則」総務大臣の免許を受けなければならない。(電波法第4条)
無線局の免許を受けようとするには定められた事項を記載した書面をもって申請せねばならないが、その事項の筆頭に「目的」がある。(法第6条第一号) 
この「目的」とは無線局を開設及び運用する目的であり、無線局免許手続第4条第2項で定める別表第2項で定める無線局事項書部分の「無線局の目的」欄に、一般に「○○業務用」と記載される。

電波法施行規則には無線局の業務の分類と定義が規定されており、アマチュア局の場合は「アマチュア業務」であり、簡易無線局では「簡易無線業務」である(電波法施行規則 第3条)

注目したいのは同条に「非常通信業務」が規定されている。つまり「非常通信業務」は独立した業務となっている。「無線局の目的」に「非常通信業務」を記載した無線局、一般にいう「非常局」、詳細には電波法施行規則第4条第二十一号で規定される「非常局」【非常通信業務のみを行う目的として開設する無線局をいう。】がかつては存在した。
現在は無いようで、総務省のWEBサイトである「無線局等情報検索」の「エキスパート検索」で検索してもヒットしない。

(無線局等情報検索:エキスパート検索)
http://www.tele.soumu.go.jp/musen/SearchServlet?pageID=2&SelectID=5

ここで条文を精読しましょう。「非常通信」に該当する条件として、発生した(するおそれがある)事態について例示しています。火災と暴動を除けば自然災害のみが列挙されていますが、「その他非常の事態」の部分で、本誌前号で触れた「防災基本計画」で列挙される災害が全てカバーされると解釈できましょう。加えて災害、火災、暴動とは定義されない「その他非常の事態」、では何が、と明言することは難しく、時代の変化とともに様々な事態が新たに発生するでしょうから、包括的な表現のままにおくのが良いように考えられます。

また、もう一つの条件として、電気通信事業者等が提供するいわゆる「電話」が利用不可あるいは利用困難な場合を記載しています。この条文制定当時は、今一般にいう「携帯電話」の普及など想定外であったと考えられます。加えて現代では、スマートフォンによるアプリケーションを利用した通信サービスも広く利用されています。これらを考慮し平易に言えば「スマホ、ケータイ、電話(FAX含)による通信がダメなとき」と言えましょう。

「非常通信」は目的外通信としてアマチュア無線家の間でしばしば議論の的となります。
一般社団法人日本アマチュア無線連盟(以下、「JARL」と記す。)が発行する「アマチュア局の非常通信マニュアル」においては、

*要件の該否判断については自己判断
*その判断立証を求められるものではない
*事実の錯誤を恐れ非常通信未実施となることは避ける
*状況不明の第三者が疑義を呈するのは間違いである

と述べています。


(上はJARL 「アマチュア局の非常通信マニュアル」)
http://www.jarl.or.jp/Japanese/2_Joho/2-4_Hijou/emergency-communication-manual.pdf

(この資料は上記JARL WEBのみならず内閣府のサイトにも見出す事が出来る)
http://www.bousai.go.jp/kaigirep/houkokusho/hukkousesaku/saigaitaiou/output_html_1/pdf/emergency-communication-manual.pdf

このマニュアルは「運用マニュアル」ではないので、具体的な通信手順、内容、電文例についての記載はありません。また、JARLは「非常通信に関する基本方針 ならびに 非常通信実施要領」を作成しており、この中で、「非常の事態が発生した場合の無線通信」について「別表」にまとめられています。


(JARL 非常通信に関する基本方針 ならびに 非常通信実施要領)
https://www.jarl.org/Japanese/2_Joho/2-4_Hijou/Kihon-to-jissiyoryo.pdf

ここでは前述の「非常通信」のほか、「非常の場合の無線通信」、「人命救助などの急を要する通信」が一覧表になっています。電波法第52条は前記囲み部分のとおりです。

電波法第52条第六号の「その他総務省令で定める通信」というのは、施行規則第37条を指します。ここには各号に様々な場合が列挙されていますが、局種、業務、目的の視点からアマチュア局も対象となる定めが第三十三号となり、一般に「人命救助などの急を要する通信」といわれています。
(電波法施行規則) http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25F30901000014.html

「非常の場合の無線通信」はその根拠に電波法第74条第1項を示されています。先月号でご覧いただいた中央非常通信協議会会長からの要請には電波法第74条に基づくものでないことが明記されたことを、今回改めて確認いただければ、と思います。

運用・取扱の部分で運用規則第129条ないし第137条が示されています。ここは特定の無線局(厳密には詳細に記載され、そこにはアマチュア局は明示されていない)の運用に関する「章」のなかで、「非常の場合の無線通信に関する内容を「節」として示される部分です。しかし、第137条の準用規定により、第129条から第136条までの規定をアマチュア局に準用することが示されています。
(無線局運用規則) http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25F30901000017.html

施行規則第37条第33号の規定の中には「非常」の文言がありません。これより、人命の救助のための通信が必要で他に手段がないときは、通常の運用の中でできる、と理解できます。これはいざ!の時に、手順などに囚われて必要な通信への実行性、即時性、正確性へ影響を及ぼすことを避ける目的もある、と考えられます。

「非常通信業務」を行う「非常局」については前述のよう、かつては開設されていたようですが、現在はないようです。各無線局とも非常通信は目的外通信となります。

アマチュア局は非常通信目的で開設することはできません。

一部の登山やマリンレジャーをなさる方がアマチュア局の運用に必要な免許や資格を有しないまま、非常に備える目的でアマチュア無線機を持参される場合もあるようですが、その状況で電波を発射した場合、電波法違反となります。また運用せずともその状況でアマチュア無線機が電波発射可能な状態であれば、不法局開設容疑に問われます。

アマチュア局ではありませんが、ヨット界では過去国際レース開催時に総合通信局でなく海上保安庁の臨検により、開催地にて特定船舶局不法開設容疑で数時間に及ぶ事情聴取を受け、予定していたレース行事のパーティーに出席できなかった事例があったようです。

船舶検査対象船のオーナーなどは、講習会等で海上特殊無線技士の資格取得の上、一般に国際VHFと呼ばれる特定船舶局を開局し運用することが可能です。この船舶局は後で述べる遭難通信、緊急通信、安全通信の運用が可能です。

お気付きのよう電波法第52条で定められる遭難通信、緊急通信、安全通信について船舶、航空機等に関係する業務局については無線局運用規則で細目にわたり定められており、Q符合(同規則別表第二号)でも必要な符合を定めています。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25F30901000017.html
(このURLは無線局運用規則全体を掲載しているので、別表はその下部にあります。符合例としては、“QTD”、“QTW”等を参照してください。これらの符合はJARLの発行するアマチュア局用電波法令「抄録」には掲載されていません。「抄録」はあくまでも「抄録」でしかありません。)

アマチュア局についての直接の記載は
「無線局運用規則」第8章第261条
ここで準用する第4章第2節第129条ないし第137条に「非常の場合の無線通信」
として種々の定めがある。

その中にある無線局運用規則第130条に(使用電波)として、A1A 4,630kHz と指定されています。これはもっぱら「連絡設定周波数」として指定されているものです。電波法および無線局運用規則が制定されたのは昭和25年であり、その当時の時代背景、技術背景等からこの条文規定にはアマチュア局としても支障が生じるものではない内容であったかと想像できます。

尚、その当時はアマチュア局の送(受)信機は殆ど自作であったため、この指定への対応はそう困難でなかったと考えられます。しかし、時代が進み、殆どのアマチュア局がメーカー製の機器を使うようになり、ハムバンドから離れた周波数であるためか、国内セットメーカーではこの指定に対応するものが無かった時があったと記憶します。その後、この指定の意義に気付いたメーカー(例えばアイコム)が送信対応可能とし、現在では国内セットメーカー各社共運用可能に至っています。

(各社のトランシーバーにおけるA1A 4,630kHz対応の例)

(アイコム:IC-7800の非常通信モード設定時のオープニング画面 この周波数の重要性を鑑み特別なメニューとして設定されている)


(クリックで拡大します)

(ケンウッド:TS-990カタログの記載 赤枠は筆者加筆)

(アルインコ:DJ-SR9J/Mカタログの記載 赤枠は筆者加筆)

アマチュア業務に使用できる電波の型式及び周波数の使用区分については、無線局運用規則第258条の2の規定に基づき、平成21年3月25日総務省告示第179号において定められています。しかしここには非常通信周波数についての記載がない事に注意が必要です。

これに対し告示内容に従ったうえで

JARLではアマチュアバンドプランを設定し非常通信周波数を設けています。

(バンドプラン)
http://www.jarl.or.jp/Japanese/A_Shiryo/A-3_Band_Plan/bandplan20090330.pdf

(解説)
http://www.jarl.or.jp/Japanese/A_Shiryo/A-3_Band_Plan/operateing.pdf

このようにJARLバンドプランにて定められた周波数、あるいは地方自治体等との協定、運用細則等更には有志の間であらかじめ定められた周波数で有事の際に備え、また訓練が行われるようです。

かつてのよう、アマチュア無線家の殆どがJARL会員であった時代には、アマチュア無線家に対する周知・広報はJARLが担えばよかったのですが、非会員のアマチュア無線家がかなりの数に上る現代は、こと非会員へも目を向ける必要があるかもしれません。また、南海トラフ大規模地震の発生が懸念される今、アマチュア無線家が大規模災害に備え、いざ!の時に動こうとしている事を、広く一般大衆へ理解いただくこと、Public Relation、を会員/非会員などと立場にこだわらずやるべき時になった、と思います。

アマチュア無線家については上記の状況ですが、国の視点では「非常通信協議会」が法的根拠を有する組織として構成されています。この法的根拠とは、電波法第74条の2(非常の場合の通信体制の整備)であり、中央非常通信協議会、地方非常通信協議会及び地区非常通信協議会等で組織、運営されています。

その詳細については総務省の「電波利用ホームページ」の記載をご覧下さい。
http://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/hijyo/what/index.htm

この中央非常通信協議会の構成員は関係省庁、通信事業者、ライフライン関係企業等が並び、JARLもその名を連ねています。アマチュア無線家にとっては少々なじみの薄い組織かもしれませんが、非常通信訓練コンテストの主催者である事もしばしばあります。

そのコンテスト入賞局への表彰状発行者として、非常通信協議会の名が記されるが為に参加意欲を掻き立てられた方も少なくないでしょう。筆者もそのひとりです。

(上は20年前のもの。非常通信は無線通信だけでないとして、今は組織名から無線の二文字がなくなっている。コンテストルール上、通常の「CQ」に「クンレン」を前置すること、内容の異なる複数の電文を、和文通話表を用いて送信すること、となっていた。)

このコンテストに参加することで非常通信への意識が高まったのは、言うまでもありません。

また、中央非常通信協議会は会長(=総務省総合通信基盤局長)名にて都度、集中豪雨災害、雪害等の発生時期に先駆けて協議会会員宛に「通信の円滑な実施体制の確保」についての依頼文書を発行しています。その中でマニュアルについて触れていますが、このマニュアルは電波利用ホームページにて誰でも読むことが出来ます。
http://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/hijyo/manual/manual/index.htm

このマニュアルにも実際の通信手順には言及しておらず、非常通信に興味を持つアマチュア無線家にあっては、実際どうするのか?と戸惑いもありましょう。しかし、職業上この種の通信を実施、或いは実施する可能性のある者と異なり、アマチュア無線家はプロでありません。このため、日常的に訓練を行い運用手順を習得すること、最新機器の操作技術を習得すること等は強制できず、またこれらの習得、技量維持は義務ではありません。よって運用に際し、法に定められた要件を遵守すれば、その余は手順等に囚われることなく、通報すべき事項を正確・簡潔・即時に伝えることに注力でき、またそうすべきだと考えます。

(プロの世界でも特に船舶においては自船遭難時の緊急対応のみならず、周辺海域での他船遭難時の救助救援等が生じる可能性が低くない。このため国際条約に基づき一定規模以上の船舶局の管理・運用に新たに従事しようとする無線従事者(=船舶局無線従事者)に対して指定訓練修了が電波法上義務化され、また一定の期間船舶局の無線設備の操作を行わない場合には、再訓練を行うことが義務化されている。)
http://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/operator/ship/index.htm

中央非常通信協議会は協議会構成員他に対し毎年非常通信訓練を実施している。
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban13_02000024.html
(総務省報道資料)

上記URLの報道資料より、国は災害に備え防災行政無線を整備し、それが機能しない場合には警察、電力会社等各機関が独自に有する通信網を利用する非常通信ルートを設定している事が理解できます。そのルートをも途絶する大規模災害が発生した際には、アマチュア無線を含む多様な通信手段を以て非常通信ルートを確保することも想定されていることが分かります。(この場合のアマチュア無線の役割は情報「伝達」であると考えられます。市町村等においては、情報「収集」の役割をアマチュア無線に求める場合もあります。)

(「情報収集」の役割設定例:奈良市地域防災計画 3-39ページ参照)
http://www.city.nara.lg.jp/www/contents/1217830258308/files/3saigaioukyuu.pdf

アマチュア無線技士は、船舶局無線従事者のよう非常時対応技量維持等のための訓練が義務づけられていません。また、従事者免許のクラス、取得時期により資格要件が異なります。これより個々で運用技術、技量が異なります。よって緊急時に、なんら事前の手続き無く地方自治体等に情報伝達のボランティアとして個人で対応しようとしても、何者なのか、どのような事が出来る人物なのか相手に理解されないため受け入れられない事が生じます。実際に東日本大震災のとき、そのような事態があったようです。特に組織上の地位等なく、全くの一個人である場合には遭難通信の受信等に基づく救助要請を警察・消防等に行う場合を除き、一般に受け入れられるのは困難であると考えられます。

地方自治体等との「連携」を行おうとすれば、アマチュア無線家が目的意識を一とする者により団体を構成し、その運営も明文化されたルールに基づき行うものとし、定期的に訓練を実施し一定レベルの技量を維持・担保するような活動を行う団体を構成したうえで、地方自治体等と「協定」を締結し、緊急時に備える事が適当と考えられます。
http://www.soumu.go.jp/main_content/000221685.pdf
(総務省関東総合通信局「災害時に活用できる情報伝達手段」 スライド20ページ以降参照。協定書サンプル第7条に訓練に関する記載がある)

http://open.fdma.go.jp/e-college/chihou/yobou/04/01/index01-1.html
(総務省消防庁e-college 災害予防コース「非常通信システムの確保」【地方公務員向けカリキュラム】 第12章参照)

(協定の例:岐阜県ではJARL岐阜県支部との協定を締結している)
http://www.pref.gifu.lg.jp/bosai-bohan/bosai/bosaitaisei/kyotei.data/kyouteiichiran20130912.pdf

災害発生に備え組織化されたアマチュア無線家の集団の代表的なものして、日本赤十字社の傘下にあり、一般に「赤十字無線奉仕団」と称される組織があります。

赤十字社そのものは海外で創設され、創設150年を迎え、我が国では1877年に創立された博愛社を前身とし、日本政府がジュネーブ協定に加盟した事に伴い、1887年に日本赤十字社と改称し、1947年制定の災害救助法には救助活動団体として明記され、1952年の日本赤十字社法に基づき設立された法人です。「無線奉仕団」は、かつて「電話」と称した電電公社による加入電話と公衆電話の他に、利用可能な無線通信手段としてアマチュア無線しかなかった時代に各地で結成されたようです。日本赤十字社が同社定款に基づき各都道府県に支部を設け、昭和26年の規定にはじまり昭和31年に定められた赤十字奉仕団規則等に従い、特殊奉仕団として結成されているようです。
http://www.akita.jrc.or.jp/gyoumu/12houshidan.pdf
(日本赤十字社秋田県支部WEBサイトより)

その活動展開には各支部(都道府県)における地域性、備えるべき災害発生要因(例:降雪量、活火山の存在)等の為か、画一的なものではないようです。
http://www.hokkaido.jrc.or.jp/pdf/m3pdf/m303h14_3tokusyuhoshidan.pdf
(例 日本赤十字社北海道支部 3ページ参照 網走では昭和30年に登録されたことが分かる)

赤十字無線奉仕団では団員は文字通り「奉仕」活動、言い換えれば「ボランティア」活動です。ですが団員に対して万一事故発生時にはルールにより見舞金が交付される仕組みがあります。これは赤十字社そのものが法人であり、歴史も古くその活動に対して都度見直しがなされた結果、と考えます。

一方JARLも法人格を有しますが、現在はボランティアの組織化を行っておらず、また非常通信を担うボランティア活動中の事故発生についての見舞金交付制度等はありません。(前掲の「非常通信に関する基本方針」をご参照ください。)

非常通信を担おうとするアマチュア無線家が組織した団体であっても、その全ての団体、全ての活動が一般にいうボランティア保険の加入対象になるとは限りません。地方自治体の社会福祉協議会登録団体となるなどの条件を満たさなければならないようで、注意が必要です。

そこからは、「命あっての物種、ボランティア活動」といえます。いくら利他愛、自己犠牲の精神があっても、

アマチュア無線家が命を賭け非常通信を行うことは、絶対にしてはなりません。

万一の時、本人は悲劇のヒーロー、ヒロイン、美談の主人公かもしれません。しかし、残された家族はどうなるのでしょうか。本当に「作業者、運用者の安全確保が第一」となります。これだけは肝に命じていただきたいと思います。

(災害時ならずとも、アンテナ整備中のタワーや屋根からの墜落事故も耳にします。落下防止用安全帯、高所作業用保護帽などを着用されると思いますが、くれぐれもご注意お願いします。)

前回、東日本大震災当日D-STARにて東京⇔大阪間の通信の様子を記載しました。D-STARの利便性をご理解いただけたと思いますが、当時に比較し、現在はD-STARユーザーは大幅に増加しております。

防災意識をお持ちの方ならまだしも、単に野次馬的視点で現地の状況を知る目的のみで「災害発生地およびその近隣」のレピータへgate越えでアクセスすると、そのサービスエリア内の、いわば、被害に遭われた方や、その救助救援その他必要な通信にレピータを山がけで使おうとされる方が使えない状態が生じる可能性があります。平常時は閑散としていても非常時には急激に通信量が増加します。

まずワッチ(WATCH)していただければ、と思います。

D-STARに限らずレピータを使わないアナログの交信も同様です。

筆者は阪神・淡路大震災発生当日から一週間連続して、その後も会社休日には被災地に家族の救援にバイクで通っていました。被災地で情報を得るため430メガFMを聞き続けていると、あるとき、通信要員を組織として有する公的機関が船舶により神戸市東部に入り、物資提供他救援活動についてその組織内のハムが各局宛に情報を流していました。その情報について照会しようとしたとき、被害が無かったと思われる地域のハムが、情報を流したその公的機関のハムをコールし、救援活動激励の旨の交信を始めました。筆者が活動していた神戸市西部には、その公的機関の救援船は入っておらず、救援活動予定など知りたいところでした。激励したハムの気持ちも少しは分かります。
しかし、状況を把握いただいて

不要不急な通信はしない
これがワッチする者が真っ先に配慮すべき事

ではないか、と強く思いました。

今回は、我が国に於ける非常通信について、特にアマチュア無線との関わりについてまとめました。次回は海外の場合についてまとめてみたいと思います。

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