2015年4月号
連載記事
はじめに
「3人娘アマチュア無線チャレンジ物語」をご愛読いただき、ありがとうございます。
今号からは、スピンオフシリーズ「無線ガールあーちゃん奮闘記」がスタート!
何事にも好奇心旺盛なあーちゃんが、アマチュア無線の色々なジャンルに、体当たりでチャレンジしていく企画です!
サミーやエリーもときどき登場します。3人のプロフィールは、「3人娘アマチュア無線チャレンジ物語」の「はじめに」をご覧ください。
第1話 エアバンドを聞いてみた
サ 「最近、おしゃれな女の子の間では、カメラが流行っているらしいよ☆」
ある日のサミーとの交信中、そんな話を聞いたあーちゃん。
思い返してみると、旅先で、おしゃれな女の子が首から一眼レフのカメラをさげているのを見かけたことがあります。エリーなんて、山籠もりをするくらい、天体写真を撮るのに夢中です。
あ (ヤバイ、流行に乗り遅れる!)
ということで、あーちゃんもさっそくカメラを始めてみることにしました。
カメラの先輩・エリーにアドバイスを求めたところ、
エ 「一番は星空の写真だと思う」
あ 「え・・・?」
エ 「簡単だよ。カメラを固定して、シャッターを何時間か開けっ放しにして、あとは見守るだけ。その間に天体観測も一緒にできるから一石二鳥だよ。この季節はちょっぴり寒いけどね」
あ 「えっと・・・。私はもっと、迫力があって、みんながビックリするような、そんでもって自慢できる写真が撮りたいな~なんて」
エ 「う~ん・・・。それなら、飛行機とかは?この前テレビで空港の特集やってたんだけど、飛行機はすごい迫力だったし、写真で撮っても絵になるんじゃないかな。まぁ星空には負けるけど」
あ 「いいね!飛行機!」
思い立ったが吉日。あーちゃんがすぐさま向かった先は―――。
関西国際空港(通はKIXと呼ぶらしい)の展望ホールSky Viewです。
「うう・・・。ちょっと寒い」
スカイというだけあって、強い風が吹きすさんでいます。すでに心が少し折れそうになっています。
目指すは5Fのスカイデッキ!
今回、あーちゃんは事前に本やインターネットで情報収集をしてから写真撮影に臨みました。行き当たりばったりはお手の物ですが、飛行機の写真に関しては、どこでどう撮ればいいのかすらあまりよく分かりません。
左『航空無線のすべて2015』株式会社三才ブックス
右『航空無線ハンドブック2013』イカロス出版株式会社
定番の撮影場所はやはり空港とのこと。多くの空港には見晴らしの良い展望デッキがあり、誰でも利用可能です。
「へぇ~!エアバンドっていうのがあるんだ」
飛行機と空港の地上施設との間で交わされる、航空業務に関する無線をエアバンドと言います。このエアバンドを聞いていると、写真撮影の時に、飛行機の動きが分かってとても便利なのだそう。
総務省が定める「航空移動無線で使用する周波数区分」によると、民間機の飛行管制などに使われる周波数は118.0~136.975MHz、受信はAMモードとなります。取扱説明書を見てみると、
「おっ、ID-51で聞けるじゃ~ん!」
ID-51では108~137MHzまで、受信することができます。民間エアバンドなら、あーちゃんのライムカラーのID-51で十分に聞くことができそうです。
写真撮影の時に聞くとよいのは、主に飛行の管制なのですが、それはいくつかのセクションに分かれており、それぞれ周波数が異なります。
あーちゃんのメモ
※解説
CLR:クリアランスデリバリー。フライトプランの承認を飛行機に伝達する。
↓
GND:グランド。地上の飛行機や車両の交通整理を行う。
↓
TWR:タワー。離着陸の指示を出す。初心者はまずここから。
↓
DEP:ディパーチャー。離陸した飛行機を航空路まで誘導する。
↓
ACC:コントロール。上昇後から降下までの間、航空路を飛ぶ飛行機を、目的地の近くまで誘導する航空路管制。
↓
APP:アプローチ。航空路を離れた飛行機を目的空港まで誘導する。
↓
TWR
↓
GND
また、関西国際空港などではTWRだけでも、実際使用されている周波数が3つもあります。予め、メモリーチャンネル機能を使って、周波数を記憶させておくとよいでしょう。
とは言っても、あーちゃん的には、いきなり全てのエアバンドを区別して聞くのは難しい・・・。まずは初心者にオススメの「TWR」をワッチすることにしました。
スカイデッキに出ると、ちらほら写真家の人たちの姿が見えます。音声が流れても迷惑をかけないよう、人の少ないポジションに移動します。(人混みではイヤホンを使いましょう!)
「Asiana 0114, Cleared to land, Runway 24 left」
「ふむふむ。なるほど、なるほど。って英語かーい!」
まさか英語だとは思いもよらなかったあーちゃん。あーちゃんの英語レベルは、高校卒業を機にそこでストップしています。最近では洋画を字幕で観ることすら億劫なあーちゃんは、ひとまず自力で飛行機の撮影に挑むことにしました。
「あの飛行機が飛び立つ瞬間を撮るぞぉ」
慎重に狙いを定めるあーちゃん。ちなみに、この日が一眼レフデビューです。高価なカメラを持つ手が震えます。
狙って、狙って・・・!
死角からドーーーン!
「えっ?!後ろから?!」
慌てて振り返ってみても、時すでに遅しです。飛行機は滑走路に着陸した後でした。
やはり、エアバンドを聞いていた方がいい写真を撮れることは間違いないようです。
もう一度、関西国際空港のTWRを聞いてみます。
「む~、やっぱりちょっと難しい。けど、意外と同じようなセリフが多いんだなぁ」
離陸する飛行機を追いつつ、カメラを構えつつ、ID-51から流れる音声を聞きます。風の音が邪魔してはっきりとは聞こえませんが、「ラジャー」や「レディ」や「ストップ」、「ウェイト」などはあーちゃんでも聞き取れました。慣れてしまえば、交信の内容を理解することは難しくなさそうです。
「あ、テイクオフって聞こえた!」
目星の飛行機に的を絞って、集中。
そして、「今だ!」とシャッターを切りました。
たくさん写真を撮れて大満足のあーちゃんは、帰宅するとすぐに撮影したデータを確認しました。
「な、なんじゃこりゃ!」
エアバンドを聞く練習より、先に写真のセンスを磨いた方が良さそうだなぁと実感したあーちゃんでした。
(注)記事中に登場する無線通信の内容は実際のものとは異なります。
次回・・・
民間エアバンドを聞いたら、次はやっぱり、あれしかない!