2014年2月号

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移動運用便利グッズの製作

JO2ASQ 清水祐樹

第11回 28MHzリニアローディングダイポールアンテナ

HFの移動運用に適したアンテナの一つとして、V型ダイポールアンテナがあります。これは1/2波長ダイポールアンテナのエレメント(片側1/4波長)を少し上向きに取り付けてV型の形状にしたアンテナで、18~28MHz用が手頃なサイズで製作できます。素材としてアルミ、ステンレス、釣竿、農業用資材のグラスファイバーポールなどが考えられます。

製作時には、何らかの方法で共振周波数を微調整する必要があります。一般的には、ローディングコイルやマッチング回路を取り付けるか、エレメントの一部を折り返しや伸縮機構にする方法があります。アンテナの電気的長さを変える他の方法として、リニアローディング方式があります。これは図1のような形状で、折り返し部分の可動式接点を動かすだけで電気的長さを変えることができます。


図1 リニアローディング方式ダイポールアンテナの原理。ショートバーの中心部はエレメントと絶縁されている。

V型ダイポールアンテナのエレメントの先端を電線で接続すると、デルタループアンテナとなり、利得が向上します(図2)。この場合も、アンテナの電気的長さをリニアローディング方式で調整します。ダイポールアンテナとデルタループアンテナのどちらにも使用可能な、28MHz用のアンテナを紹介します。

図2 28MHz用のリニアローディングアンテナ

a) 水平ダイポール


b) V型ダイポール


c) デルタループ(V型ダイポールの先端を電線で接続したもの)

構造と製作方法

エレメントは長さ90cmのアルミパイプ3本を差し込み方式で接続し、プラスチックのまな板で作った基台に取り付けました(図3)。差し込みの形状は第5回50MHz軽量HB9CVアンテナ(2013年8月号)と同じです。すき間なく差し込みできる外径16mm、14mm、12mm、10mmのアルミパイプがそれぞれ入手できたので、基台部分に16mm、リニアローディング部分に14mm、エレメントに12mmと10mmのアルミパイプを用いて、先端ほど細くなるようにしました。基台部分の16mmアルミパイプの長さは10cmで、差し込み部分の切り込みの長さは4cmです。アンテナの形状を水平、V型のどちらにもできるように、基台部分の16mmパイプは角度を変えて2組(4個)を取りつけました。ただし、後述するように、実用上は水平ダイポールが必要となることはありませんでした。


図3 給電部とリニアローディング部の構成

基台にはバラン(FT-82#43コアに1.5D-QEVの同軸ケーブルを5回巻き)とM-J型コネクタ、およびUボルトを取りつけ、伸縮ポールの先端に基台を取りつけて同軸ケーブルに接続します。

リニアローディング部分の形状を図3下段および図4に示します。給電部に近い側と遠い側で、それぞれ水道用の塩ビパイプでアルミパイプを接続しており、塩ビパイプの内部ではアルミパイプは離れています。塩ビパイプの上から1mmスズメッキ線を接続した圧着端子をネジ止めし、ネジがアルミパイプに食い込むようにして導通させています。給電点に近い側の塩ビパイプに差し込んだ2本のアルミパイプは、別のスズメッキ線を使って導通させています。長さ10cm、幅1cm、厚さ2mmのアクリル板の両端の断面に溝を彫ったものでスズメッキ線を平行に保持し、2本のスズメッキ線の間をミノ虫クリップコードで接続しています。このクリップコード(ショートバー)の位置を変えることで、アンテナの実効長を変えて共振周波数を調整します。リニア・ローディング部分のショートバーには、共振周波数、あるいはエレメントの実効長の目盛りを付けておくと便利です。


図4 リニアローディング部分

エレメントの全体の長さは270cm、エレメントの先端を接続してデルタループにするための電線の長さは320cmです(図5)。目玉クリップの穴の開いた部分に圧着端子をネジ止めして電線(ビニル線)を接続しました。


図5 デルタループにするための電線。長さ320cm

調整方法

ダイポールアンテナとして使用する場合、ショートバーの位置を調整するだけで、目的の周波数でSWR=1にすることができます。デルタループとして使用する場合は、ショートバーの位置の調整だけではSWRが十分に下がらないので、アンテナチューナーを併用します。これはインピーダンスが50Ωより高いためです。

デルタループにすることで、ダイポールよりも利得が向上します。28MHz帯のコンテストでダイポールアンテナよりも良好な成果を挙げているほか、29MHz帯をダウンリンクとするアマチュア衛星AO-7の受信にも効果的です。AO-7のダウンリンクの信号は弱く、ホイップアンテナ等では受信がやや困難です。ダイポールアンテナでは明瞭にダウンリンクを確認することができ、デルタループではSSBでも交信の内容を完全に確認できました。アンテナの打ち上げ角が衛星の方向に近いことと、ループアンテナでは受信が特定の偏波に限定されないことも、良好な受信ができる一因と思われます。

水平ダイポールとV型ダイポールを比較すると、水平ダイポールではサイド(エレメントの先端)方向の信号が全く聞こえなくなることが分かります。実用上はV型としての使用で全く問題ありませんでした。

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