2016年11月号

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ケータイを携帯できない『だんじり祭り』で無線機が大活躍
大阪府堺市で伝統の「鳳だんじり祭り」開催、
安全確保と円滑な運営を120台の無線機が支える

毎年秋には全国各地でさまざまな祭りが行われるが、その安全確保と円滑な運営のため、無線を利用しているケースがある。大阪府堺市西区で10月7~9日の3日間行われた「鳳(おおとり)だんじり祭り」では、351MHz帯のデジタル簡易トランシーバー(簡易無線登録局)とIPトランシーバーなどが多数使用されている。その模様を紹介しよう。


「鳳だんじり祭り」の最終日に行われた連合パレードの模様

「鳳だんじり祭り」は約400年の歴史を持つ秋まつりで、全国的に有名な「岸和田だんじり祭り」(大阪府岸和田市)よりも歴史が長いと言われている。現在は堺市と隣接する高石市の10地区(大鳥区、野田区、新在家区、北王子区、野代区、長承寺区、上地区、富木地区、石橋地区、濱寺元町)が「鳳地車連合会」を組織し、年に一度の祭りを開催している。

祭りの中心となるのは、各地区自慢の「だんじり(地車)」だ。さまざまな飾りや提灯で飾られただんじりを青年団や子供会など300人以上が息を合わせて綱で曳行し、JR阪和線の鳳駅前のアーケード(鳳本通街)を通り抜け、猛スピードで出てくるシーンは“圧巻”の一言に尽きる。この迫力ある姿を見ようと、毎年祭りの日には数十万人が鳳駅周辺に集まるという。


野田区のだんじり(地車)は平成25年に新調されたもの。細部まで施された彫刻が特徴だ。普段は地区の
地車小屋へ大切に収められている


野田区のだんじりの運行風景

だんじりは広い府道30号線だけではなく、直線コースで約2.5kmある小栗街道や各地区内の道路も曳行するため、交通整理や運行管理にはスタッフ間の連絡と連携が欠かせない。そのため「鳳だんじり祭り」では、高出力(5W)で広範囲をカバーし、誰でも使える351MHz帯の「デジタル簡易トランシーバー(DCR=簡易無線登録局)」や、携帯電話のIP網を利用して同報通信も可能な「IPトランシーバー」が大活躍している。


商店街の中に設けられた野田区のだんじり本部。ここでも無線を使った指示が行われている


スタッフが使用している2台の無線機。写真左は351MHz帯のデジタル簡易トランシーバー・IC-DPR6、右
はIPトランシーバーのIP500H。いずれもアイコムの製品だ

351MHz帯のデジタル簡易トランシーバーを導入しているのは新在家区(ch10を使用/8局)、北王子区(ch20を使用/11局)、長承寺区(ch25を使用/10局)、石橋地区(ch05を使用/5局)など。事前に地区ごとに使用するチャンネルや秘話コードなどを打ち合わせし、異なる地区との混信が起きないように設定しているという。

またIPトランシーバーは大鳥区(12局)、野田区(15局)のほか、鳳地車連合会が26局を導入している。こちらもトークグループの設定を行って、必要な通信のみが聞こえるようになっている。

このほかの地区でも、アナログ簡易業務無線機を各町で数台から十数台活用している。


地区によっては連絡にアナログ簡易業務無線機を活用している

すなわち、「鳳だんじり祭り」では120台ほどの無線機がだんじりの安全な運行と、祭りの円滑な進行を支えているのだ。

実際の通信としては、狭い路地などをだんじりが進む際、交通整理のスタッフ同士が安全確認や道路の一時遮断の連絡(自動車だけでなく、路地から出てくる自転車や通行人にも配慮が必要になる)をするケースや、だんじりの現在位置報告や進行・待機の指示、必要になった資材の運搬に関するもの、さらには怪我人や急病人の連絡まで多岐にわたっている。本部スタッフは次々に入る無線連絡で片時も気を許すことができない状況だ。


だんじりは地区内をくまなく曳行する。方向転換やUターンには後部の「後梃子」という舵取り装置で行
うが、重さは数トンあるため、狭い道路では大変な作業になる


だんじりはJR阪和線の踏切を越えて進むケースもあるため、地区スタッフとJR職員、ガードマンなどが
協力して安全確保を行う


連合パレードの開始直前には見物客で大混雑となる(JR鳳駅下がりの府道30号線交差点付近)

関係者によると「鳳だんじり祭り」で無線機が使われるようになったのは35年ほど前。当時は誰でも手軽に使え、サービスエリアが広く多チャンネルが使える無線システムが少なかったため苦労も多かったが、現在はデジタル簡易トランシーバーとIPトランシーバーの導入で快適に通話が行え“無線のつながりが悪く、意思疎通に困る”ということはなくなり、「それが安全と円滑な進行に大きく寄与した」という。

また、無線機を導入していることについては「複数の人へ一斉に情報を伝えられる点(同報性)や、送信ボタン(PTT)を押すだけで瞬時に話せるという操作性の良さと即時性、さらにランニングコストを考えると携帯電話への置き換えは考えられない。地区ごとに無線機を用意し、祭りの際に交信に慣れておけば災害時にも役立つ」という説明があった。これだけ携帯電話が普及しているにも関わらず“無線機でないといけない場面”がここにはあるのだ。

10月9日、祭りの最終日の午後に行われる「連合パレード」は、鳳地車連合会10地区のほか、近隣の津久野地車連合会の中組、大東、神野と八田荘連合会から平岡町のだんじりがそれぞれ参加するという(今年は“日程の関係で昨年よりも参加が少ない”ということだが)見応えのあるイベントだ。

これを見学するため、シンガーソングライターのMasacoさん(JH1CBX)と、FB Girlsのあーちゃん(JP3KGT)が会場を訪れた。


連合パレード見学のため、会場を訪れたMasacoさんとあーちゃん


Masacoさんのいる交差点を猛スピードで曲がっていくだんじり

だんじりの大きさと総勢300人以上(後梃子、大屋根、鳴物係などを含む)の曳行により猛スピードで進んでいく迫力に圧倒された2人だが、やがて「私たちも一緒に走りたい!!」と、許可を得てだんじりの後ろを追いかけ始めた。若い女性をも虜にする魅力があるのだろう。


野田区のだんじりがやってきた!!


目の前を通過していく野田区のだんじり


許可を得て、だんじりの“追っかけ”を始めるMasacoさんとあーちゃん

Masacoさんは、初めて見た「鳳だんじり祭り」について、「初!だんじり祭り!!! 町中をあげてのあの熱気! 歴史と伝統が繋ぐ迫力と男気! 無線でやり取りをしてる颯爽たる風姿! あ~ちゃんと私は、釘付けになってしまい、終始、心が躍っておりました!!!(笑) なんだかものすごいパワーをもらって、とっても楽しい1日でした!」と感想を語っている。


野田区だんじり保存会の白江会長とMasacoさん

(取材協力:鳳地車連合会、野田区だんじり保存会)

頭の体操 詰将棋

Masacoの「むせんのせかい」~アイボールの旅~

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