2016年11月号
テクニカルコーナー
My Project/第2回 【ミリ単位を楽しむ】チップ部品の活用で見えてくる工作の新しい世界【AFアンプ】
JP3DOI 正木潤一
今では、ほとんどの電化製品には表面実装部品(チップ部品)が使われています。そして、我々アマチュアでもチップ部品を入手しやすくなり、とてもコンパクトに回路を組むことができるようになりました。パターンを描いてプリント基板を作らなくてもチップ部品を使うことはできます。今回は、汎用的に使えるAFアンプを例に、ユニバーサル基板を使ってチップ部品を実装する方法をご紹介いたします。
例) 1石AF増幅回路
チップ部品
ユニバーサル基板のランドの間に収まる、“1608”サイズ(1.6×0.8mm)のチップ部品を使います。これより大きなサイズ(“2012”や“3216”など)では部品同士が干渉し合うので、高密度実装には向きません。
抵抗器:
チップ抵抗器の値は3桁の数値で表されています。
例) 103=10×10^3=10kΩ 222=22×10^2=2.2kΩ 331=33×10^1=330Ω
なお、ジャンパー線のように離れた部品同士を接続させるときは、0(ゼロ)オーム抵抗を使います。
コンデンサ:
チップコンデンサには容量が表記されていません。他の容量の物と混ざらないように注意が必要です。
※10uFくらいまでは“1608”サイズが手に入りますが、それ以上の容量は“2012”や“3216”などの大きなサイズしか手に入らない可能性があります。
トランジスタ:
SOT-23というパッケージを使います。ベース、コレクタ、エミッタの各端子が、ユニバーサル基板のランドに接続できます。コレクタ端子の接続に2つのランドを使用し、ベースとエミッタを合わせて合計4つのランドを使います。
例では低周波小信号用途の2SC2712を使用しています。これは2SC1815と同じような汎用トランジスタです。チップトランジスタには型式の表記がありませんので注意してください。
入手先:
チップ部品、特にチップトランジスタを店頭に置いているパーツショップはあまり多くありません。大抵の場合、ネット販売を利用することになります。
※取り扱い品目は変わることがあります。
・『秋月電子通商』*
http://akizukidenshi.com/catalog/top.aspx
・『鈴商』*
http://suzushoweb.shop-pro.jp/
・『マルツ』*
http://www.marutsu.co.jp/
・『シリコンハウス』
http://eleshop.jp/shop/
*チップトランジスタの取り扱いもあり
部品配置の検討
経験上、回路図を見ながら部品を実装すると、行き当たりばったりの配置となり、やり直しやジャンパー線の引き回しが増えてしまいます。必ず回路図を元に配置を決定してから実装します。
チップ部品は、ユニバーサル基板のハンダ面のランドを接続点にして、隣り合うように配置します。どうしても隣同士に配置できない部品は、0Ω(ゼロオーム)の抵抗器をジャンパー線として使います。しかし、高密度で実装するためには、いかにゼロオーム抵抗を使わないかがポイントとなります。
では、1石AF増幅回路を例にして、配置の工夫次第で高密度実装ができることを見ていきます。
※部品配置の説明が目的のため、定数については参考程度です。
回路図
配置パターン その1:
回路図の部品シンボルの位置に合わせた部品配置です。回路図と見比べやすいですが、3つのジャンパー抵抗(0オーム)が必要です。
配置パターン その2:
バイアス抵抗(R2)をトランジスタに沿わせ、さらにエミッタ抵抗(R3)とそのパスコン(C4)をまとめて配置すると、ジャンパー(0Ω)が不要になり、このくらい小さくなります。
配置パターン その3:
コレクタ抵抗(R1)と電源ラインのパスコン(C3)を右下に配置した場合、さらに小さくなります。
配置パターン その4:
エミッタ抵抗(R3)とそのパスコン(C4)、電源ラインのパスコン(C3)を共通のGNDポイントに落とすと、ここまで小さくなります。
これらのパターンは部品配置も基板サイズも異なりますが、回路としては全く同じです。いろいろな配置パターンが考えられますが、最も効率のよい部品配置を考えます。
ユニバーサル基板の加工
切り分け:
ユニバーサル基板は、ガラスコンポジット製のものを使います。ベーク基板の切断にはカッターナイフや糸ノコなどを使いますが、ガラスコンポジットの基板は、挿入面を半丸(甲丸)のヤスリで削って浅い溝を刻み、そのまま折り曲げると割ることができます。
GND面:
部品挿入面には銅箔テープを貼ってGND(ベタアース)にします。こうすることで、回路上のどこからでもスズめっき線などを使ってGNDに接続できます。
銅箔テープ
銅箔テープを挿入面に貼り、ペンチのグリップなどで叩いてしっかりと密着させ、はみ出た部分をハサミで切り取ります。
ハンダ付け
20W程度のハンダごてを用意します。細いコテ先と細い糸ハンダを使用してください。まず少量の予備ハンダをランドに盛り、ピンセットで部品を掴んで予備ハンダを溶かしながらランドの間に置きます。そして、もう片方の端子をハンダ付けします。
チップ部品には少量のハンダで十分です。ただし、少なすぎると部品の反対側に熱が伝わり、先に付けたハンダが融けてしまうことがあります。また、ユニバーサル基板のランドは小さいため、熱を加え過ぎると銅箔が剥離してしまうことがあります。少ないハンダを短時間で流し込むのがポイントです。
ちなみに、当局は慣れるまで、ごく少量の事務用糊を爪楊枝で部品に塗り、基板に部品を固定させてからハンダ付けしていました。
回路例を上記の“パターン4”の配置で実装したところ
最後に
自作の回路をFRISKなどの清涼菓子の小さなケースに収めている作例をよく見かけます。チップ部品を積極的に使えば、電子工作に「より小さく組む」という要素が新たに加わります。いかに高密度で実装して回路をコンパクトに仕上げるか・・・部品配置を工夫するのも楽しみ方の1つです。チップ部品を使えば工作の世界が広がります。