2016年11月号

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テクニカルコーナー

移動運用でEMEにチャレンジ

JN4JGK/3 難波正憲

きっかけ

以前、本Webマガジン「月刊FB news」でEMEに関する記事が掲載され(2013年7月~10月)興味を持っていましたが、アパマンハムで移動運用が中心の私にとっては敷居が高そうに感じていました。

今春、知り合いのOMから430MHzの八木アンテナを譲りうけたところ、本誌編集長より「これがあればEMEもできる!」と助言を受け、チャレンジしてみることにしました。

設備

EMEにチャレンジしてみるにあたり、極力追加の投資は避けて今ある設備でやりたいと考えていました。このため、以下のような設備となりました。

・リグ:IC-7100M(430MHz帯の出力は35W)
・アンテナ:25エレ八木 2パラ(ナガラSS-450Z、Gain=22.7dBi、ブーム長=5.05m(7.27wl))
・プリアンプ:無し
・同軸ケーブル:5D-FB 3m
・ノートパソコン:AMD A4-1200 APU 1.00GHz、メモリ2GB
・ソフト:WSJT9(最新版は10.0だが、私の使用環境ではうまく動作しなかったため)
・I/F:自作(http://blog.livedoor.jp/jn4jgk/archives/8671438.html
Amazonから370円で購入したUSBオーディオモジュールを使用
(IC-7100Mに内蔵のUSBオーディオを使用しても良い)
PTT制御のためにUSB-シリアル変換ICを使用
(シリアルポートのDTRまたはRTSを使用する)
(WSJT9ではCI-VによるPTT制御に対応していない)


運用に使用した設備

事前準備①

まず、パソコンにWSJT9をインストールして、無線機と接続して動作確認しておきました。WSJT9の設定については、月刊FB news 2013年7月号を参考にしました。一通り設定が完了したあと、動作確認を兼ねてローカル局と地上波でQSOの練習をしました。

HF帯でのJT65の運用に似ていますが、WSJT-XとWSJT9では若干使用感が違い、またEMEではショートメッセージ(RO、RRR、73など)によるやり取りもあるため交信手順もやや異なります。

事前準備②

次の2点を考慮して、実際に運用するタイミングを決めました。

1つはコンディションです。こちらのwebサイト(EA6VQ's EME calendar for year 2016 http://www.dxmaps.com/emecalendar.html)を参考にして、コンディションの良い日を確認しました。

もう1つはQRVする局が多そうな日です。特にイベントがある日、つまりコンテストのタイミングであれば多くの局がオンエアすることが見込まれます。

この2点を考慮して、今回、ARRL EMEコンテストの開催される10月22日~23日の週末に運用することにしました。ちょうどコンディションも良さそうです。運用時間については、比較的430MHzでのアクティビティの高いEU圏とのパスを狙いました。

10月22日~23日、日本では22日の23時頃に月が昇りはじめ、翌23日の13時頃に月が沈む計算でした。(時間はJST) UTCでは22日14時~23日4時となり、EU圏とのパスは後半つまりEU圏では深夜の時間帯となるため、相手局がどれだけいるかやや心配でした。

事前準備③

HB9Q EME Loggerへの登録をしました。これは特に430MHz帯以上のハンドで運用するEMEerの集まるチャットで、CQの周波数等をアナウンスしたり、どこで誰がCQを出しているかを確認したりするために使用します。(参考: 144MHz帯のEMEerは、N0UKが主催するのチャットを主に使用)

JT65を用いた耳で聞こえるかギリギリの信号を扱うため、無線機のダイヤルを回して信号を探すのは極めて困難ですので、このようなチャットを使用します。そして、運用の前日にはあらかじめ運用する旨をアナウンスしておき、EU圏とJAのパスとなる深夜帯に多くの局が起きておいてもらえることを期待しました。

運用当日

10月23日の運用当日、EUとのパスが開けだす7時(JST)頃から運用できるよう、早朝に家を出ました。特に西方向に障害物のないダム湖のほとりへ行きました。


アンテナを設営した様子

EMEの場合、月が見えれば良いのでアンテナの地上高を高く上げる必要はありません。ブームマストのU字ボルトを若干緩めておき、仰角を手動で調整します。

アンテナの向きについては、方位、仰角共に正確に合わせる必要があります。方位はコンパスがあれば分かりますが、仰角については分度器を使って簡易の仰角計を作りアンテナに取り付けました。


自作の仰角計(分度器と糸と錘)

月の方位については、WSJT9メインウィンドウの右上に数値が表示されますし、衛星の位置計算プログラムCalsat32を用いると月の位置にあわせてパスの範囲を確認することもできます。

また、もし天気が良く、肉眼でも月が見える場合はアンテナのブーム方向と月を見ながら目視で合わせることで、より正確に合わせられます。


目視でアンテナの向きを合わせた様子(ブーム先端の左に白い三日月が見える)

アンテナや無線機、パソコンの設営を完了し、HB9Qチャットを見ながらCQを出している周波数を順にワッチしていきましたが、なかなか信号は見えてきません。

8時台になって、有名EMEerでありチャットルームのオーナーでもあるHB9Q Dan氏がCQを出しているとの書き込みがあり、早速ワッチしてみました。さすが大きな設備と出力を持ち合わせている局だけあり、信号が見え実際に耳で聞くこともできました。

すかさずこちらから呼んでみると、「QRZ」と返ってきました。再度呼ぶとコールサインを取ってもらうことができたようで「OOO」が返ってきましたので、こちらからは「RO」を送りました。ただ、この「RO」がなかなか取ってもらえず何度かやりとりがありましたが、無事に「RRR」が返ってきて、最後は「73」で無事QSO完了となりました。


HB9QとのQSOの様子

HB9Q Dan氏とのQSOが私のEMEでの初めてのQSOとなりました。

感動している間もなく、このQSOの様子に気づいたDL7APV Bernd氏からチャット上で「Hello Nanba look for me on 063」とのメッセージの書き込みがあり、周波数を432.063MHzに合わせワッチしてみました。彼の信号も十分な強度でデコードできていたため、うまくQSOできました。


DL7APVとのQSOの様子

このあと試しにCQを出してみたところ、UA3PTW Dmitrij氏とのQSOにも成功しました。
このとき同時にOH2PO Matti氏からもコールがありましたが、これ以降、彼の信号を受信することができずQSOには至りませんでした。


UA3PTWとのQSOの様子(こちらからCQを出した)

このあと更にCQを出したりチャットでアナウンスされるCQの周波数をワッチしたりしましたが、QSOには至らず、今回合計3局とのQSOとなりました。

最後に

今回、移動運用で、しかも出力35WでEMEに挑戦してみましたが、幸いにも3局もQSOでき大満足な結果となりました。もちろん相手局の設備のおかげではありますが、このような簡単な設備でも入門することができることが分かりました。今回のQSOでEMEの楽しさを味わいましたので、これからもっと多くの局とQSOできるよう、運用のタイミングや環境、設備等、様々な方向からステップアップを目指したいと思います。

また、2016年11月19日~20日にかけて再びARRL EMEコンテストが開催されますので、この機会に多くの方がEMEにチャレンジされることを願っています。

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