2013年11月号

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テクニカルコーナー

D-STAR×GPS講座(1)

JK3AZL 高岡奈瑞

DVモードのデータ通信

D-STARのDVモードは4.8kbpsのキャリアで、コールサインなど『無線部ヘッダ』部に続き、音声セグメントとデータセグメントを交互に送ることで、音声/音響データとパケットデータを同時に送受信できるしくみになっています。このデータセグメントに、GPS位置情報やテキストメッセージなどのデータが入ります。


DV(デジタルボイス)モードの構成

GPSレシーバーを内蔵した無線機であれば、内蔵GPSをONにすることで、無線機でGPS位置情報を「見て確認」することができるようになります。さらにDVモードでGPS位置情報を送信するには、「GPS送信」をONにする必要があります。(初期設定はOFF) この「GPS送信」をONにする時、「GPS(=NMEAセンテンス出力)」か「GPS-A(=D-PRS出力)」のどちらかを選ぶことになりますが、この部分は次回説明します。

なおDVモード対応の無線機には「データ端子」があるため、GPSレシーバーを内蔵していない無線機でも、外部のGPSレシーバーを簡単に接続することができます。


ID-880に外部GPS(Garmin 18x PC Receiver)を接続した状態


Garmin 18x PC Receiver

なお、上記の例ではシリアルポート接続タイプの市販GPSレシーバーを接続していますが、GPSモジュールなども市販されていますので、自作してみるのも楽しいでしょう。


GPSレシーバーモジュールキットの構成品例

DVモードとNMEAフォーマット

GPSモジュールからはNMEAフォーマットのテキストデータが出力されます。NMEAフォーマットは米国海洋電子機器協会(National Marine Electronics Association)が定めた規格で、中でもNMEA-0183は、GPS受信機とナビゲーション機器の間を、シリアルポートを利用して通信するための規格で、情報はASCIIテキストの「センテンス」の集まりで構成され、1つのセンテンスは「$」で始まり改行で終わります。

DVモードでは、このNMEA-0183センテンスの中から、RMC/GGA/GLL/GSA/VTG/GSV(*)の6つのセンテンスを扱います。(*一部機種GSVセンテンス非対応)

<D-STARで扱うセンテンスの種類>
RMC (時刻位置情報速度方向)
GGA (時刻、緯度経度、標高、測位状態、DGPS基地局番号などの基本情報)
GLL (Geographic Position, Latitude and Longitude 位置情報、測位時刻)
GSA (GNSS DOP and Active Satellites Dop値及び使用衛星)
VTG (進行方向速度情報)
GSV (衛星情報、一部D-STAR機未対応)

<ID-31から出力されるNMEAのセンテンス例>
$GPGGA,003744.000,3433.9960,N,13531.6591,E,1,10,0.9,31.9,M,34.5,M,,0000*66
$GPGSA,A,3,03,19,16,06,07,13,11,23,21,31,,,1.5,0.9,1.2*33
$GPRMC,003744.000,A,3433.9960,N,13531.6591,E,0.00,145.64,221011,,,A*66
$GPVTG,145.64,T,,M,0.00,N,0.0,K,A*0F

<参考:GARMIN製GPS(eTrex)がシリアルインターフェースに出力するセンテンス>
NMEA-0183センテンス
GPGGA
GPGLL
GPGSA
GPGSV
GPRMB
GPRMC
GPRTE
GPWPL
GPBOD

GARMIN特許センテンス
PGRME (推定誤差)
PGRMM (マップデータム)
PGRMZ (高度)
PSLIB (ビーコン受信機制御)

無線機の画面でGPS位置情報を確認する

自分の位置情報=MYポジションでは、緯度経度などの他に速度も表示できます。(MYポジション表示は、DV/FMモード設定にかかわらず表示可能)内蔵GPSをONにしておけば、列車の中でもGPS位置情報を見ることができるので、最近では列車などに無線機を持ち込み、「この区間は時速○○○kmだった」、「大和路線の最高スピードは○○○km」、「最速記録を写メったから見て!」などの情報を交換しあうコミュニティも登場し、「QSOする予定がない時も無線機を持ち歩く習慣ができた」との声もあがっています。

相手局の位置情報=RXポジションは、DVモードで受信した電波にGPS情報が含まれている場合、相手局の位置情報と、現在地から相手局までの方向と距離が表示されます。

GPSメモリ=MEMポジションは、あらかじめメモリしておいた目的地の位置情報と、現在地から目的地までの方向と距離が表示されます。この機能が「登山に便利」と認識され、登山家HAMの間ではGPS機能がブラッシュアップされたID-51を使う方が増えているようです。

山では雪やガスで視界が悪くなり、目の前にあるはずの目標物が見えなくなることがしばしば起こりますが、GPS機能によって、目的地までの方向と距離がわかるため、心細さが大いに軽減され、落ち着いた行動に繋がります。


晴天時は見晴らしの良い山も、視界が悪いと数メートル先も見えなくなる。上の写真は、今年の6月に北海道旭岳で撮影したもの。(左6月23日、右6月21日の山頂風景)


(左)GPSメモリから目的地を選択、(右)現在地から目的地までの方向/距離を表示

今回はD-STARとGPSについて簡単に紹介しましたが、次回はGPS位置情報の送信とGPSログ機能、地図に取り込む方法などを中心に紹介します。

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