2015年11月号

トップページ > 2015年11月号 >CW skimmer の導入 その2

テクニカルコーナー

CW skimmer の導入 その2

編集部

前号では、CW skimmerと一般的な無線機(受信機)を組み合わせた使用法について記載したが、今回は無線機をSDRに置き換え、より広い帯域でデコードすることによる活用法について説明する。

パイルアップが大きい時などは、コールする局が広がるため3kHzのAF帯域では収まらず、もっと広範囲でバンドを監視することで効率が上がることがある。コールバックがあった局がどこ(周波数)で呼んだか、あるいは、誰も呼んでいない空き周波数を的確に把握することで、CW skimmerを導入していない局よりも早く交信できる可能性がある。

必要機材

新たに必要となるのがSDR(Software Defined Radio)である。市場には各種のSDRがあり、価格も手ごろなものから高価なものまで様々である。すでに手持ちのSDRがあれば、それを活用するのが手っ取り早いが、これから購入するのであれば、それぞれの仕様や特長をよく検討してから購入すると良い。

迷った場合は、ソフト開発元のSystem Requirementsのページに掲載され、上の画像(CW skimmerの設定画面)に名称が表示されている下記の4タイプから選択するものひとつの方法である。
・SDR-IQ
・QS1R
・Mercury
・Perseus
今回はこの中からQS1Rを使用した例を説明する。

SDRの例


Software Radio Laboratory LLC社のQS1R

SDRの他には、アンテナラインを2分岐するスプリッターが必要となる。(ただし、SDR専用の受信アンテナを使用する場合を除く) これは、アンテナから受信した信号を2分岐し、一方を無線機に、もう一方をSDRに入力するからである。

スプリッターの例


第一電波工業のSS500  コメットのCAS-900 (ただし生産完了品)

構成

スプリッターを挿入して、信号を2分岐する箇所は、無線機の受信ラインを使用する。これによって、実運用に多数のアンテナを使用している場合でも、無線機でまさに使用しているアンテナが確実にSDRに接続されるからである。オートアンテナセレクターを使用し、無線機の運用バンドに連動してアンテナを切り替えている場合は特に便利である。

この構成の場合は、無線機に入力されるものと同じ信号がSDRに入るため、CWスキマーに表示された信号は、無線機で確実に受信できる。一方、スキマー専用のアンテナをSDRに接続した場合、アンテナのゲインやビーム方向の差異によって、無線機で受信できている信号がCWスキマーには表示されなかったり、あるいはその逆の現象が発生したりすることがある。

受信ラインを無線機のコネクタやジャックから外部に取り出せる機器ならば、接続は容易である。そのようなコネクタやジャックの無い無線を使用する場合は、回路図を見て自分で探すか、メーカーに問い合わせることになる。今回は、簡単な接続例として、受信ラインを機器背面のRCAジャックから外部に取り出せるアイコムのIC-7600を例に説明する。


IC-7600の取説より

IC-7600の場合、アンテナから入ってきた信号は、送受信切り替えリレー通過後に、「RX ANT OUT」ジャックから外部に取り出すことができる。この「RX ANT OUT」ジャックから取り出した信号をスプリッターに入力して2分岐し、一方を「RX ANT IN」ジャックに接続して無線機に戻し、もう一方をSDRのアンテナ端子に接続する。

この接続により、無線機に接続されたアンテナで、無線機とSDRが同時にワッチできるようになる。(IC-7600の場合、アンテナセレクターで1/Rもしくは2/Rを選択する) もちろん、信号を2分岐することで、信号レベルが半分になるが、Sメーターがわずかに振れなくなるだけで、HF帯の実運用には大きな支障は生じない。

なお、特に大電力で運用する場合は、送信波の混入によりSDRが故障しないよう、スプリッターとSDRをつなぐ同軸ケーブルの途中にリレーを入れ、そのリレーを無線機の送受信切り替えに連動させることで、無線機が受信中はSDRのアンテナ端子に受信信号が入力され、無線機が送信中はSDRのアンテナ端子にダミーロード(別途用意)が接続されて、終端されるように回路を組むのも一案である。


リレーを挿入した接続例 (IC-7600)

設定方法

接続したSDRを初めて使用する場合、まずドライバーのインストールが必要となるため、製品に付属しているメディアや、メーカーのホームページからダウンロードしてドライバーをインストールする。QS1Rの場合は、メーカー(Software Radio Laboratory, LLC)のWEBサイトからSDRMAX Vをダウンロードして、これをインストールすることで、自動的にドライバーもインストールされる。

ドライバーのインストールが終わったら、CW skimmerを立ち上げる。そして、「View」メニューから、「Settings..」と進むと下のウインドウが開く。「Hardware Type」に接続したSDRを(例QS1R)を選択、次に必要に応じて「Sampling Rate」を設定するが、初期値の「48kHz」で問題ない。最後に「OK」をクリックする。

最低限、以上の設定で、CW Skimmerは動作する。
メイン画面に戻った後、このメイン画面は上下に広げることが可能になっているので、メイン画面ウインドウの上端、あるいは下端をマウスでドラッグして、好みのサイズに広げると、通常のパソコン用モニターで概ね10kHzの範囲を一覧できるようになる。

使用方法

上記の設定を行った後、CW skimmer画面上の無線機マーク(上の画像の赤丸)をクリックする。すると下記の表示が現れた後、デコード動作が始まる。


赤枠白抜き文字の599が直前のコールバック、ピンク文字の599は以前のコールバック

SDRの受信周波数の変更は右上にある周波数表示部をマウスで右クリックすると、周波数入力窓が開くので、キーボードからkHzオーダーで周波数を入力後「Tune」をクリックする。


14025と入力した例

設定した周波数に前後にCWの信号が出ていれば、画面上に表示される。表示されたデコードさせるには、その信号の上をマウスで左クリックする。

もし、CW skimmerが表示する受信信号の周波数と、無線機で受信した周波数に差異がある場合、パイルアップなどの実戦では使いにくいので、周波数の補正を行い、SDRと無線機の受信周波数を一致させると良い。

(QS1Rでの補正例) 補正はなるべく高い周波数で行う
無線機とSDRで同一信号を受信し、
・無線機の表示周波数が28020.000 kHz
・SDR(CW skimmer)の表示周波数が28020.300kHz
であった場合、下記の式で補正値を計算する。
28020.300/28020.000=1.0000107

CW skimmerの設定ファイル(CWSkimmer.ini※)の中にある[SdrQS]の項に記述されている、FreqCalibration=1を、FreqCalibration=1.0000107と書き換える。
※CWSkimmer.iniの格納場所はWindows7の場合、
C:\Users\(ユーザー名)\AppData\Roaming\Afreet\Products\CwSkimmer

DXハンティングでの活用例

スプリット運用しているDX局を探し、CW skimmerの周波数を合わせると、DX局をコールしている局が一目瞭然となる。599を送っている局のところには、赤枠に白抜き文字で「599」と表示されるので、どこの周波数で呼んだ誰にコールバックしたかが瞬時に把握できる。またその傾向を継続して観察することで、たとえばDX局のダイヤルを回す癖を把握することが可能になる。

また、表示されたDX局の軌跡をクリックすることで、DX局の打鍵内容がデコードされるため、たとえば自局へのコールバックを目でも確認することができる。なお、10kHz幅を超える広いスプリットの場合は、DX局の軌跡を見ながら、コールバック周波数を同時に見ることができないので、DX局の信号は無線機から自分の耳だけで聞き、CW skimmerはコールバック周波数の周辺に合わせることで対応すると良い。

SDRと組み合わせたCW skimmerの導入により、効率の良いDXハンティングが可能になるため、この機会に導入を検討されてはいかがでしょうか。

頭の体操 詰将棋

無線ガール奮闘記

  • 連載記事一覧
  • テクニカルコーナー一覧

お知らせ

発行元

発行元: 月刊FBニュース編集部
連絡先: info@fbnews.jp