2016年1月号

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連載記事

日本全国・移動運用記

JO2ASQ 清水祐樹

第4回 都心部の限られた場所で移動運用

政令指定都市の全区との交信を目標とするWAKUアワードが2010年に制定され、区での移動運用が以前にも増して注目されるようになりました。大都市の区では移動運用の場所の確保が難しく、特に、基本的に大きなアンテナを必要とする、ローバンドの運用は人気があります。

そこで、都心部の限られたスペースで、周辺の迷惑にならないように移動運用する方法を工夫してきました。そのノウハウ、体験談を紹介します。

移動運用の準備

都心部の場合、交通量が多かったり見通しが効かなかったりして、現地で運転しながら運用場所を探すことは難しいです。走行に集中できない危険もありますし、夜間の運用場所探しは特に困難です。可能な限り事前の下調べをしておき、候補地を数か所探しておきます。Googleストリートビューなどを活用すると良いでしょう。

運用できそうなスペースが見つかっても、頭上に送電線があってアンテナを設置できない場合があります。運用場所の候補を見つけたら、頭上も忘れずにチェックしましょう。

基本はホイップアンテナ

アンテナの設置スペースが限られている場合は、ホイップアンテナを使用します。過去の製作記事を参考に挙げておきます。
・7~50MHz釣竿ホイップアンテナ
・1.9-7MHz長さ10mホイップアンテナ

アンテナの周囲に金属性の物体が接近すると共振周波数が下がるので、アンテナを短くする(またはローディングコイルのインダクタンスを減らす)か、アンテナチューナーで整合するとよいでしょう。

公園等のフェンスに沿ってロングワイヤーアンテナやダイポールアンテナを設置することも考えられます。その場合、人と接触することが無いよう注意します。通路が無い所でも、犬の散歩などで人が通行する可能性があります。

その他、アンテナが倒れないような処置をする、目立たない色の素材・電線を使うなどの配慮もあると良いでしょう。アンテナを建てる時には出来るだけ垂直にすると、周囲の景観に対する違和感が少なくなります。

コインパーキングでの運用

都心部の運用を手軽に行うには、コインパーキングに駐車して、車1台分のスペースで設置できるホイップアンテナを使用する方法があります(図1)。その場合、コインパーキングの方式によっては、運用時に注意すべき点があります。

コインパーキングの課金は、次のような方法があります。

  1. 駐車場の入口ゲートで駐車券を受け取り、出口ゲートで精算する方式
  2. 駐車枠に入庫すると自動的にロック板が上がってタイヤが乗り上げられないようにロックし、精算するとロック板が解除される方式
  3. 駐車枠にロック板などが無く、監視カメラや地面埋め込みコイルで車両を検知し、課金する方式

このうち、無線の運用に最も適しているのはAです。敷地が広く、空いている場所を選択できる、というメリットがあります。

Bは、ロック板が作動した後に車を動かすと、車体やロック板を破損する恐れがあるため、タイヤベースを使用する場合は、ロック板が作動する前に固定します。

最も適さない環境はCです。監視カメラや地面埋め込みコイルが、HF帯に強力な混信を発生させます。バリバリといったパルス性ノイズではなく、ピーポーという連続音が強力に聞こえることが特徴です。現地に到着して運用を始める前に、運用予定のバンドをワッチして、ノイズや混信が無いことを確認するとよいでしょう。

都心部での運用は、騒音が問題となるため、アイドリングを行わないよう配慮が必要です。筆者がコインパーキングで運用する際は、無線機専用のバッテリーを用意し、車のアイドリングを行わないようにして運用しています。運用時間を予定より延長した場合も考慮して、予備のバッテリーや昇圧コンバーターを用意しています。


図1:都心部でのローバンド移動運用の様子。釣竿アンテナを使い、車1台分のスペースを使用。
細いアンテナを真っ直ぐ立てることで、周囲の景観との調和を図っている。

都心部での運用で気づいたこと

都心部で運用した経験や、近隣で運用している局をモービル走行中にワッチして信号強度を調べた経験から、電波の伝搬について次のようなことに気付きました。
・ 1.9MHzの電波は、建物の裏側にもある程度回り込んでいきます。大阪市内で、北東側に高層ビルがある場所から8エリアと交信したことがあります。波長160mと比べてみれば建物は小さい、ということなのでしょう。
・ 周波数が高くなるほど、建物によって電波が遮られやすくなります。HFのハイバンドを運用する時は、目的とする方向に障害物が少ない場所が有利です。
・ 144MHz以上の周波数では、反射によって建物の裏側とも交信できる場合があります。

垂直系のアンテナの場合、打ち上げ角が低いために、特に1.9MHzでは近距離との交信が苦手になります。可能ならば逆L型のようにアンテナの水平部分があるアンテナを使うと、近距離との交信には有利です。

東京23区など無線人口の多い地域の場合、モービルアンテナを使った144/430MHzの移動運用でも、多くの局と交信できます。コンテスト開催中や、クラスタ等に運用情報を掲載した場合によく呼ばれます。

運用場所の確保が特に難しい東京や大阪の都心部以外で、ローバンド移動運用が難しいと感じた区は、福岡市の区と熊本市中央区です。運用場所の確保の問題に加えて、地理的に離れていることと、日没が遅いため運用開始時刻を遅くせざるを得ないという事情があります。2012年4月、熊本市が政令指定都市となった時に、中央区のローバンド運用は広い場所が確保できず、ロングワイヤーアンテナを敷地の境界線に沿って、上から見てL字型に展開して運用しました。

通報対策

都心部の運用では、周囲に影響が無いように運用していても、住民に通報されたり、パトロール中の警察官に職務質問されたりすることがあります。

運転免許証、無線従事者免許証、無線局免許証票はすぐに提示できるようにしておきます。警察官が無線局の免許システムに詳しくない場合もあるので、無線局免許状は持参する方がベターです。また、無線の交信が目的であることを説明できるような資料(移動運用の計画表、コンテストの規約など)を用意しておくと、説明時の補助資料として役立つ場合があります。

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