2013年7月号

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テクニカルコーナー

EMEにチャレンジ (1)

編集部

受信にトライ

レベル合わせが完了したら、いよいよEME局を探しますが、EMEのチューニングはリグのVFOを1kHzステップに設定すると便利です。ただしアンテナが小さい場合は、EMEの信号が耳で聞こえることはまずありませんので、144.100~144.150MHzの間を、闇雲に探しても簡単にはEME局は見つけられません。そのためインターネットを活用します。下記2つのサイトを参照すると、その時間にどの周波数でどの局が運用しているのかが分かります。


(写真15) JT65 EME Link by NØUK (http://www.chris.org/cgi-bin/jt65emeA)


(写真16) Live CQ (http://www.livecq.eu/)

「JT65 EME Link by NØUK」の方は、自局のコール加えて、アンテナの型式と送信出力を明示している局が多いので、ターゲットを探す参考になります。できるだけアンテナと出力の大きい局のCQに狙いをつけてその周波数をワッチしてみます。目安として、8八木、1kW以上の局であれば、受信できる可能性が大きくなります。
(例: JA3YUA/4X12/500という表記なら、4x12エレ八木に500W出力という意味)

EMEでは、ドップラー効果で周波数がシフトしますので、ダイヤルを合わせた周波数ジャストで信号が受信できることはまずありません。しかし、±600Hz(初期設定値)に入っていれば受信できますので、受信周波数がずれているからといっても問題はありません。

なお、ドップラー効果による周波数のシフト量は、相手局の方位と距離、それに月の位置によって決まりますが、ターゲット局のコールサインをTo radioの枠に入力して、「Lookup」をクリックすると、右上のDopのところにシフト量(単位はHz)が表示されます(写真17)。値がマイナス表示の場合は、低い方にズレることを意味します。ただしこの値は、ターゲット局のリグと自局のリグの周波数が正解に一致していないと、当然誤差を生じますので、参考値程度にお考え下さい。


(写真17) ドップラーシフト量の表示例 (この時間にK1JTの信号は、53Hz高く入感するという意味)

なお、上記で「Lookup」をクリックしても、ターゲット局のグリッドロケーターが下の欄に表示されない場合は、その局のデータが「call3.txt」ファイルに登録されていませんので、手動で登録する必要があります。「call3.txt」への追加方法については、6月号の本コラムをご参照願います。なお、EMEに数年以上アクティブな局であれば、登録されていますので、ビッグガンならほぼ登録されています。

デジタルモードによるEMEの運用は基本的に1分間送信、1分間受信の繰り返しですので、最低でも2分間は同じ周波数をワッチし続ける必要があります。1分間しかワッチしないと、たまたまその1分間がターゲット局の受信中の時間だったという事があるからです。できれば5シーケンス(送信+受信の1シーケンスが2分間のため、5シーケンスは10分間)は受信し続けてみて下さい。QSBで浮かび上がってくることがあります。

また、JT65モードでは、毎分0~50秒(月面反射にかかる2.5秒の遅延含む)受信して、残りの約10秒間のうちで信号を解析し、デコード結果を表示します。従って、信号の受信を開始してから、最低50秒間待たないと、デコード結果を見ることができませんので、早く諦めてしまうのは避けて下さい。

EMEは机上計算である程度回線設計が成り立ちますが、それでもその日、その時のコンディションがありますので、回線設計が成り立っているからと言って、必ずしも相手局が受信できるとは限りません。特に支配的なものは、月との距離などの要因で決まるDegradation 、相手との位置関係で決まるGeometric rotation、それに電波が電離層を通過する際に発生するFaraday rotationです。これらの要因があるから大規模設備同士でもQSOできないこともあれば、小規模設備でもQSOに成功することもあります。

つまりいつも同じ局が計算どおりのS/Nで受信できる訳ではなく、HF帯の通信と同じように、QSOできるかできないか分からないからEMEもおもしろいという事が言えます。とくに、Faraday rotationは時間と共に刻々と変化するため、まったく受信できなかった信号でも1時間同じ周波数のワッチを続けたら、偏波が変化して受信できるようになったということはあたり前のようにある話です。

なお、現在のEMEのアクティビティは日本から見ると西高東低となっており、北米より欧州の方が圧倒的に多くの局が運用しています。そのため、月が西寄りにある時の方が、より受信チャンスが広がります。144MHzの場合、ほぼ毎日誰かが運用していますが、他のバンドと同様、やはり週末の方がにぎやかになります。

本物の信号かどうかの判断

6月号の本コラムで説明しましたが、ディープサーチデコーダーを使用した場合、WSJTがエラーデコードをすることがしばしばあります。デコード結果表示窓に現れた結果が、本物の信号かどうかは、下記を基準に判断してみて下さい。
・デコードした信号のDT値がほぼ2.0~3.0に間に入っている(写真18)。
(このDT値は、受信信号の遅延の秒数を示す。月面で反射した信号は約2.5秒遅れて届くため、もしDT=2.5だと、自局と相手局の時計がぴったり合っている状態)
・同じ内容を2回連続してデコードした。(たとえば2回連続して同じ局のCQが見えた)
・上記JT65 EME Link by NØUKあるいはLive CQに、その周波数でその局がその時間にオンエアしているという情報がある。
下記3条件のうち、2つ以上にマッチすれば、受信した信号はほぼ本物だと判断できます。


(写真18) DTが2.0~3.0間の値であれば、本物の信号である可能性が高い。

なお、ターゲットが日本の局の場合は、GW(地上波)かEcho(月面反射波)かが分かりにくい場合がありますが、これはDT値で判断できます。DT値が-1.0~1.0であればGW系、DT値が2.0~3.0あればEMEのEchoになります。

この記事を読んでトライした場合、簡単に受信に成功したという方もいらっしゃると思いますし、なかなか受信できないという方もいらっしゃると思います。なかなか受信できない場合は、コンディションの良い週末を狙ってみて下さい。コンディションの良い週末には、世界的から多くの局がオンエアします。コンディションの善し悪しの判断はこのサイトなどが参考になります。2013年7月であれば、7/13-14、7/27-28の週末が比較的ねらい目のようです。


(写真19) Dgrd値が-3.0以下であればコンディション良好、-2.0以下であればベストコンディションとされる。

もし、受信に成功したら、受信に成功したWSJTの画面はスクリーンショットを撮って記念に保存しておくと良いかも知れません。

次号では、EME受信に関する細かいテクニックやコツについて説明します。


(写真20) JA初の2mDXCCを完成させたJH5FOQ局の4×14エレクロス八木(ブーム長10.5m)

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