2013年7月号

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移動運用便利グッズの製作

JO2ASQ 清水祐樹

第4回 144~5600MHz帯 試験信号発生器の製作

U/SHF帯で運用している時、相手局がなかなか見つからず、受信機が本当に動作しているのか不安になることがあります。受信機が何らかの原因で動作していない場合に加えて、SHF帯では、例えば呼出周波数を受信しているつもりでも、周波数偏差のために目的の信号を受信できない可能性があります。このような場合の確認のため、また、受信感度の調整をする場合や、アンテナの指向性を確認する場合に、連続的に電波を発生する信号源があると便利です。

そのような場合に便利に使える、144~5600MHzまでの各周波数帯に対応した試験信号発生器をご紹介します。製作においては、高周波回路を扱うための特別な技術を要しないように工夫しました。本器により、受信機が確実に動作しているという安心感が得られますし、アンテナの指向性など、受信機だけでは分からない新たな発見があります。

簡易型の発振回路であるため、周波数の安定度は重視していません。それでも、調整の方法によっては、2400MHzや5600MHzでCW(A1A)を指定周波数で待ち受けして、信号を見失わない程度の周波数精度(数100Hz以内)に調整することが可能です。

動作原理と回路

基本周波数として24MHzの水晶発振を行い、その高調波を放射するトランジスタ1石の回路です(図1)。24MHzの整数倍の周波数が144~5600MHzの各バンド内に収まることを利用しています(表1)。1200~5600MHzはバンド内に複数の高調波が存在しますので、表1にはFM/SSB/CWで使用頻度が高い周波数に最も近い値を表しました。発振波形は正弦波ではなく大きくひずんでいるため、周波数逓倍器を設けなくても、希望する周波数数の高調波が得られます。


図1 回路図


表1 周波数対応表

水晶発振回路にはいくつかの種類があり、回路によっては水晶振動子の銘板周波数よりも低い周波数が得られることがあります。この回路は、銘板周波数に比較的近い周波数で発振します。24MHzの水晶振動子を使う場合、これより低い周波数で発振すると144MHz帯で不都合が生じます。6倍高調波が144MHz帯の下限よりも低い周波数になるため、受信機が144MHzよりも低い周波数を受信できるよう、アマチュアバンド外の受信改造が必要になります。

トランジスタは2SC3355を使いました。これは2SC1815などと同じTO-92と呼ばれる外形で、fT(トランジション周波数)が6500MHzです。通常、このような高周波で使用できるトランジスタはチップ部品のような非常に小さな外形をしています。2SC3355を使えば、HF帯と同じような製作方法で5600MHzまでの信号を発生させることができます(この周波数で増幅ができるとは限らないので注意)。ただし、電極配置が2SC1815などと全く違うので注意してください(図2)。型番面から見て左からベース・エミッタ・コレクタの順です。周波数の上限が430MHzでよければ、2SC1906(fT=600MHz)などを使うことが考えられます。


図2 2SC3355の電極配置

144MHzを1200MHz帯に変換するトランスバータには、144~146MHzを1293~1295MHzおよび1295~1297MHzに変換する2チャンネルを実装した機種があります。この場合、1293~1295MHzのチャンネルでは本発生器の信号を受信できません(親機を受信改造して147MHzが受信できれば可)。周波数較正としては別の方法を考える必要があります。市販品として容易に入手できる水晶振動子を逓倍して、1294MHzまたは1295MHzになる周波数を探すことは非常に難しいです。電源は006Pの乾電池です。電圧を安定化しなくても意外に安定します。

製作方法

普通の高周波回路は、電波が漏れないことを考えて作ります。しかし、この回路は、安定性に影響しない程度に電波が漏れることを意図して作りました。キャリブレーション(http://calibration.skr.jp/)から発売されている「CALトランジスタ基板(小)」に表面実装し、アクリルケース(70×90×22.5mm)に収めました(図3)。配線した基板をアクリルケースの内側に両面テープで貼り付け、トリマコンデンサを回転する部分のアクリルケースのフタに穴を開けました(図4)。


図3 外観写真


図4 内部の写真

トリマコンデンサは大型のエアトリマで、ドライバーで回転させる部分が大きなものを使うと調整が容易になります。コア専用の絶縁ドライバーを使うと人体の接近による周波数変動を防げます。無い場合は、割り箸または竹串を削って瞬間接着剤で固めることで自作することもできます。

使用方法

周波数の較正に使うには、まず、24MHzが正確に発振していることを確認します。HFの標準電波等を使ってHFのトランシーバー(ゼネカバ受信機)の周波数較正をした後、そのトランシーバーの受信周波数を24MHzに合わせて本機の24MHzの電波を受信し、トリマコンデンサを回して正確な24MHzに合わせます。なお、私が所有している、あるHFトランシーバーでは、24MHzに内部ビートがあり、本機からの電波を確認することが困難でした。そのような場合は受信周波数を48MHzに合わせます。

受信モードをCWに設定し、AF出力端子に周波数カウンタを接続して、受信音の周波数を受信機で設定されているCWのモニタ周波数(例:800Hz)に合わせると、正確な受信周波数合わせ(ゼロイン)ができます。その後、144~5600MHzの各周波数帯で本機の信号を受信し、正常に受信できること、および周波数が合っていることを確認します。

5600MHz帯では、そのままでは発生する信号が非常に弱いです。そこで、トランジスタのエミッタに5600MHzの1/4波長(約1.3cm)のスタブ(抵抗器のリード線)、つまり簡易ホイップアンテナを付けました。これにより、アンテナの放射器の正面数10cmの所で信号が確認できる強さになりました。なお、10GHz帯では信号は確認できませんでした。使用したトランジスタのトランジション周波数から考えて、10GHzの信号は発生していないと推測されます。

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