2014年2月号
テクニカルコーナー
D-STAR×GPS講座(4)
JK3AZL 高岡奈瑞
これまでに、GPS位置情報を『受信して楽しむ』方法と『送信して楽しむ』方法について紹介しました。今号では、山や旅行先で便利なGPSメモリー活用方法と、D-PRSのI-GATE設置方法、そして先日発表されたばかりの新製品、ID-5100のGPS関連機能についてご紹介します。
GPSメモリーを活用する
ID-31やID-51などにはGPSサンプルメモリーがプリセットされていますが、登山やハイキングなどを計画する場合、あらかじめ目安となる位置情報をGPSメモリーに登録しておくと便利です。
ID-51のクローニングソフト(無償)を使って簡単にGPSメモリーが編集できる。 レピータリストやコールサインと同様、csvファイルのインポートも可能。
◎無線機でGPSメモリーを呼び出す
ID-51の場合
[QUICK]-[GPSポジション]でダイヤルを回しMEM(メモリー)を表示している状態で
[QUICK]-[GPSメモリー選択]でGPSメモリーを選択できます。
ID-31の場合
ID-51同様、[GPSポジション]のMEM表示の状態で
[QUICK]-[GPSメモリー]でバンクを選んで決定(十字キーの真ん中キー)
希望のGPSメモリーにカーソルがある状態(注:ここで決定キーは押さない)で、
[QUICK]-[アラームON]-決定キーでGPSメモリーを選択できます。
GPSメモリーを選択することで、現在地から選択した場所までの方向/距離を表示できます。
ID-51のGPSメモリー例
頂上まではまだまだ遠い…
◎移動先の位置情報をGPSメモリーに登録する
皆さんはスキー場やショッピングモールなどの広い駐車場で、「あれ?自分の車、ドコに停めたっけ?」と焦ったことはありませんか? でもさり気なく『現在地をGPSメモリーに登録』しておくと、家族や仲間にウロウロする姿を見せずに済むので便利です。また登山の途中で「高山植物の群生を見つけた。次は良いカメラを持ってここに来たい」とか、「助かった!トイレが設置されている!仲間にここの場所を教えてあげよう」、などといった場合の記録にも使えます。
簡単に現在地をGPSメモリーに登録できる
ID-51の場合
MYポジションを表示した状態で[QUICK]-[GPSメモリーに登録]
必要に応じネームやグループ名を登録し<<追加書き込み>>
ID-31の場合
MYポジションを表示した状態で
[QUICK]→[GPSメモリー]→登録したいグループを選択
[QUICK]→[追加]→必要に応じメモリーネームを登録→<<追加書き込み>>
D-PRSのI-GATE局設置方法
前号でD-PRSの運用方法について紹介しました。
D-PRSのしくみ(FBニュース1月号より)
最寄りのD-STARレピータエリア内にI-GATE局がない場合や、シンプレックス周波数で仲間達とD-PRS運用をしたいときは、I-GATE局を構築することで、情報をサーバに送り込むことができるようになります。
I-GATE局に必要な機材
・D-PRS認証番号(アマチュア無線の無資格者が運用しないよう簡単な審査がある)
・I-GATE用ソフト
・DVモード対応無線機(GPSは不要)
・インターネットに接続できるパソコン
・データ通信ケーブル
受信用リグはGPSが付属していないID-91やID-800でもOK
◎D-PRS 認証番号(Server Validation Code)を取得する
下記JA6NKA OMが運営するサイトにアクセスし、認証番号を取得(無料)します。
http://www.suny.jp/Ham/D-PRS_Validation_Code.html
審査が終了すると、メールで認証番号の連絡があるので、認証番号を控えておきます。
◎I-GATE用ソフトを入手する
今回は海外でもよく使われているDPRS Interface(AE5PL局作のフリーソフト)を使った方法を紹介します。DPRS Interface は上のサイトからもダウンロードできます。zip形式でダウンロードしたファイルは、わかりやすいフォルダに解凍しておきます。ソフトの設定方法は、この後で説明します。
◎受信用D-STAR機の設定
・周波数とモードを設定。
・データスピード(Baud rate)設定。
[機能設定]でデータスピードを設定しておきます。DPRS Interfaceの設定と合わせる必要があるので、設定した内容はメモしておきます。
機種別データスピード
◎無線機とパソコンをデータ通信ケーブルで接続
データ通信ケーブルを自作する場合は、下図を参考にしてください。
市販のケーブルを利用する場合は、下記のケーブルを使います。
OPC-1529 :2.5φDATAジャック⇔RS232C
OPC-2218LU:2.5φDATAジャック⇔USB
OPC-1799(ID-92専用)
OPC-1384(ID-800,TMW-706専用)
ここまでの用意ができたら、いよいよI-GATE用ソフト:DPRS Interfaceを設定します。(説明はVer.4)
なおDPRS Interfaceの詳しいマニュアルは、ソフトを解凍したフォルダにできるDPRSInterface.pdf(英文)を参照してください。
コンピュータのコマンドプロンプトから、DPRS Interfaceを解凍したフォルダに移動し、下記のようにキーインすると、D-PRS Interfaceが起動します。
java -jar DPRSInterface.jar
D-PRS interfaceのメニュから[Tool]-[Configu]を選択し、I-GATEに必要な項目を設定します。
・Callsign:認証番号取得時に申請したコールサイン
・Radio ID:[I(アイ)]を設定。
・Serial Port:無線機と接続されたCOMポート番号
・Speed:受信用リグの設定に合わせる。
・APRS-IS Passcode:D-PRS 認証番号
・Server:認証番号取得時にメールで通知されたもの
・その他
I-GATE局BeaconもAPRS-ISに送信する場合は、[Beacon IGATE to APRS-IS]にチェックを入れ、緯度経度と、どのレピータ(または周波数)にI-GATEを設置しているのかわかるようなコメント(例:D-PRS>APRS 438.030MHz)を入力
入力が終われば[Save]をクリックしConfiguration設定を終了します。
メニューから[File]-[Start]でI-GATEの動作を開始します。
I-GATEが正しく動作すると、受信したデータをサーバに送り始めます。
最近はスマホのテザリング機能など外出先でネット環境を得ることができるので、仲間とのアイボールや旅行などの際には、あらかじめ連絡を取り合う周波数を決めておき、モバイル用のパソコンでI-GATEできるようにしておくと、「もう少しで現着」、「少し遅れそう」、「道に迷い中」の連絡を取り合うと同時に、APRSサイトで位置情報を確認することもできます。
小型パソコン+ID-31を使ったモバイルI-GATE局
D-RATSで運用するには
インターネット接続環境のない場所では、I-GATE局からAPRSサーバへインターネット経由でデータを送り込むことができません。しかしD-RATS(*)などD-STAR専用ソフトを利用し、ネット環境のない場所で『イントラネットD-PRS』的な環境を構築することができます。D-RATSはチャットやファイル交換など多彩な機能があり、ネット接続でもDVモード接続でも遊べるソフトです。
(*)D-RATSはDan Smith氏 (KK7DS)によるD-STAR専用コミュニケーションツール(フリー)
http://www.d-rats.com/
受信側の設備はDPRS Interfaceと同じで、使用するソフトをDPRSInterfaceからD-RATSに変更します。
受信(地図閲覧)側の設定
・あらかじめインターネット接続できる場所で、DRATS Map Downloaderで地図データを取得しておく。
以後はインターネット環境がなくても大丈夫です。
・Drats Communication Toolを起動
・Reference設定で受信リグ(Radio)の設定やPassなどを設定しておきます。
設定が終わりD-RATS Map Windowを表示すると、受信したコールサインや位置情報を地図に表示します。
新製品:ID-5100のGPS機能
アイコムから新GPSエンジン搭載の新製品:ID-5100が発表されましたが、FBニュースをご覧くださっている方には、いちはやくID-5100についてご紹介します。
気になるID-5100のGPS関連機能
ID-5100の特徴は、ID-31で爆発的にD-STARが普及するきっかけとなった『D-STAR簡単設定機能』と、IC-7100で好評の『タッチパネル』を採用し、「とことんわかりやすくなった操作性」が挙げられます。
待望のDVモード2波同時待ち受け対応。イロイロ楽しめるAndroidアプリも登場
受信データが大きくポップアップされる。コールサインや周波数を読み上げるスピーチ機能も搭載。
好評の『最寄りレピータ検索機能』が、FMモードにも対応。
ID-5100はコントローラ部にGPSを内蔵しており、GPSは準天頂衛星みちびきに対応(準天頂衛星みちびきについてはFBニュース11月号の記事もご参照ください)しており、ID-31やID-51から変わったGPSエンジンの動作に、興味が膨らみます。
またID-5100ではD-PRS機能が大幅に拡張され、D-PRSの送信フォーマットとして、自局ポジションだけではなく、オブジェクトやアイテムなども設定することが可能になりました。
なお2月2日に開催されるアイコムアマチュア無線フェスティバルin東京のメイン会場では、ID-5100が実働展示されるので、見て、触って、動作を確かめることができます。
最後に
GPS機能を使った具体的な遊び方は、取説を見だけではなかなか想像できません。ですが、ID-51のGPS機能のおかげで遭難を免れた経験者としては「こんな便利で楽しい機能、一人でも多くの方に知って欲しい」・・・と思っていたところ、FBニュースの編集長に誘われ、記事を連載させていただくことになりました。
連載中はたくさんの方から応援メッセージや問い合わせをいただき、とても嬉しく思っています。でも、D-STARとGPSを利用した遊び方はまだまだたくさんあり、たった4回の連載では伝えきれません。また新製品ID-5100に搭載されたみちびき対応GPSの動作や、拡張したD-PRS機能も気になるところ。いつの日か、詳しくご紹介させていただきたいと思っています。
最後に、これまで記事を読んでいただいた方、応援メッセージや問い合わせをくださった方、本当にありがとうございました。次は是非、山で、お空で、お会いしましょう。