2015年9月号
ニュース
モトDXサファリ ~バイクで標高2,500mの山頂からアマチュア無線キャンプ
フィールド運用は世界中のアマチュア無線家が思い思いのスタイルで楽しんでいる。米国カリフォルニア州のKA6USA ジョナサン・ハンドラー(Jonathan Handler)氏はこの夏、愛用のバイクで標高約2,500mの山頂を目指し、HFでのQRVを楽しむという「モトDXサファリ」を体験した。そのレポートが寄せられたので紹介しよう。
ホンダのゴールドウイングに40ポンド近い機材を搭載して山頂を目指す
私は「バイク」と「アマチュア無線」という、熱中している2つの趣味を組み合わせ、志を同じくする仲間と近くの丘に行くキャンプよりもっと楽しいことはできないかと考えました。その結果、コンパクトなハイパワートランシーバーを携えたバイクでのキャンプを計画しました。
そして、40ポンド(約18kg)近い無線機材一式を携え、2015ホンダ40周年記念のゴールドウイングに乗り、Cerro Noroesteというカリフォルニア州ベンチュラ郡で最も高い山の頂上(標高2,525m)に向かいました。目的は数日間のキャンプをしながら、アマチュア無線のHF帯による遠距離通信へのトライです。
山頂を目指したのは、「高所の方がより電波が飛ぶ」という理由からです。1人でバイクに乗って森の中に行き、そこからアマチュア無線を楽しむことの魅力を説明するのは簡単ではありません。隣の郡や、あるいは地球の裏側のアマチュア局と交信するのは大変スリリングです。アマチュア無線の交信相手は、米国だけでも775,000人おり、これは過去最高の数字となっています。
このモトキャンピングの計画段階で私が知ったのが「Summits on the Air (SOTA)」です。これは世界の山々の山頂から運用する局と交信して獲得するアマチュア無線のアワードで、英国に置かれた事務局が、世界のほとんどの山々をリスト化し、それらにポイントを与えています。ルールは非常に単純で、山頂からの運用者は、実際の山頂から(標高差)25m以内の地点から、バッテリーを使用して異なる4局以上とQSOを行う決まりになっています。発電機の使用や、車両からの移動は認められていません。
私は、規定の4QSOを行った時点で、Cerro Noroesteから運用した16人目のハムとなりました。それでは、今回のモトキャンプ旅行での運用で使用した機材を紹介しましょう。
●アンテナ
MFJエンタープライズ社のMFJ-2289を使用しました。このアンテナは調整によって7~55MHzを連続カバーし、アマチュア無線の8バンドに対応するポータブルアンテナです。全長は17フィート(約5.2m)あります。このアンテナをMFJ-1918という10フィート(約3m)のアンテナマストに取り付けて使用しました。このアンテナとマストは、42インチ(約1.07m)のバッグに収納できましたので、運搬に問題はありませんでした。
アンテナはMFJエンタープライズのMFJ-2289を使用。全長17フィートで7~55MHzをカバー
このアンテナは、オートアンテナチューナーのMFJ-925と、50フィート(約15.24m)の同軸ケーブル(RG-8X)を使ってリグと接続しました。しかし実際には、MFJ-2289はコイルのタップ位置とエレメント長の調整により、運用周波数に容易に同調できましたので、オートアンテナチューナーは不要でした。
●ソーラー電源
アスペクトソーラー社の「Solar Power Pack Pro 60-300」を使用しました。これは、同社の出力60Wの可搬型ソーラーパネル「EP-60」と、バッテリーパック(295Wh LiFePO4)とインバーターを内蔵した「EnergyBar 300」を組み合わせたものです。
SOTAの規定を満たすため、運用はソーラーパネルとバッテリーパックを使用
このバッテリーは、コネクタからDC12V(20A)が取りだせるので、無線機に直接接続することが可能です。また、充電はソーラーパネルだけでなく、家庭用のコンセントから充電することも可能になっています。
●無線機
アイコムのIC-7200を使用しました。このトランシーバーは使いやすく、ダイヤルやノブの回転、さらに各スイッチの感触は大変良好でした。「EnergyBar 300」からの電力で、フルパワー100Wを出力しても動作は完全でした。最終的にネブラスカ州、オハイオ州、ノースカロライナ州、ペンシルベニア州などの局と合計11QSOを行うことができました。
HFの運用はアイコムのIC-7200を使用。合計11局とのQSOに成功
さらに今回はもう1台、D-STAR対応のハンディ機、ID-51Aを持っていきました。このトランシーバーでは144MHz帯にオンエアし、5W出力でローカルレピータにアクセスできました。しかしレピータを使用した交信はSOTAには無効となるため、その後は呼び出し周波数の146.52MHzでコールしてみましたが、残念ながら誰からも応答はありませんでした。
次回は無線仲間と一緒に行き、もっと多くの時間を運用に費やしたいと考えています。
(Jonathan Handler, KA6USA)
※すべての写真はアイコムアメリカ提供