2013年9月号

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連載記事

楽しいエレクトロニクス工作

JA3FMP 櫻井紀佳

第4回 HF受信機2

前回に引き続き受信機のIC周辺の回路や部品の確認をしていきます。前回、中間周波のセラミックフィルターは、部品屋さんで買ってきたものを1個だけ使用するつもりでしたが、スペクトラムアナライザーを使って周波数ドメインの特性を測ってみるとあまり良くありません。そこで2段、3段と増やすと下図のように特性が良くなりました。

1段だけでも受信できないことはありませんが、混信やノイズが心配されますので、できれば3個買ってきて3段にしてみて下さい。また、このフィルターは少し周波数がずれているのか3段にした時、よく見るとこのフィルターの中心が460kHzで端が5kHz上の465kHz位になっていました。


セラミックフィルターを3段つないで測定

前回で説明した通り、中間周波のフィルターの帯域が広いため信号をフィルターの端によせて復調します。このため低周波 (AF: Audio Frequency)のLPFが必要となりそのブロックを追加しました。

4.1 BFO (Beat Frequency Oscillator)

この7MHz受信機はSSBとCWを受信することを主な目的にしていますが、これらの信号を受信するためにはBFOが必要です。前回までに説明したように、これらの信号をゲルマラジオのようにダイオードで検波しても了解できる音にはなりませんが、周波数的に少し離れたBFOの信号を加えて復調すると元の音が出てきます。

そこで、前回に説明した通り、LSBの一番高い周波数より更に300Hz高いBFOの信号を加えて復調します。例えば7,147.0kHz~7,149.7kHzの幅で出ているLSBの信号を周波数変換し、中間周波数462.5kHz~465.2kHzの信号になったとします。この信号に465.5kHz のBFOの信号を加えて復調すると、3.0kHz~300Hzの音声信号が出てくることになります。{465.5-(462.5~465.2) = (3.0~0.3)}

復調器の動作は実は周波数変換なのです。言葉の上では周波数変換器、ミキサー、混合器、乗算器、プロダクト検波器など色々出てきますが動作はどれも同じで、数学的にはかけ算、周波数的には引き算または足し算をするものです。

この周波数関係では、できるだけBFOの周波数が正確なことが必要だと分かると思います。セラミック共振子を使ってBFOを作ろうとしても、455kHzのセラミック共振子はネットで見つけることができますが465.5kHzのものは見つかりません。その他にコイルとコンデンサーの共振器で発振回路を作る方法もありますが、周波数が低いのでコイルの巻き数が多くて作り難く、また正確にその周波数を測る方法がありません。もし、周波数カウンターを持っていればできるかも知れません。

そこでCMOS ICによるCR発振器を考えてみました。この回路はよく知られていて周波数もf = 1/2.2・C・Rで簡単に決まります。都合のよいことにCを100pF、Rを10kΩにすると計算上は454.54kHzとなり少し調整すれば使えそうです。465.5kHzにするためにはRを9.8646kΩにすればいいことになり、部品のバラツキも考えて調整できるようにしてみました。500Ωの半固定抵抗を使ってその半分位の抵抗値で合うように考えると、固定部分は9.5kΩ位が必要です。10kΩと220kΩを並列にすると9.57kΩ位になるのでこれを使います。

写真はまだ調整回路をつけていないものですが、周波数は計算に近い状態になりました。
( C = C11、R = R49、R46、R55 (R49とR46の並列で9.565kΩ+R55)、R54は無関係)

4.2 LPF (Low Pass Filter)

前回、説明したようにラジオ用の広いフィルターの端に信号を寄せて受信すると、音声帯域の上の方に不要な信号が入ってきます。それをできるだけ取り除くために低周波のLPFを入れてみます。

次の図はOPアンプを使ったこのアクティブフィルターの設計ソフト※の画面です。回路図が見づらいと思いますが、文字キャラクターだけを使ってソフトを作ったのでご容赦願います。このソフトでは抵抗を最初に指定しますのでコンデンサーの容量が中途半端な値になります。この値に近い市販のコンデンサーの値に変更してシミュレーションしたものが、前回の最後の方にあるLPFの特性で、許容できる程度だと思います。
(4.62n → 4.7n、 23.07n → 22n、 183.73p → 180p)
※この設計ソフトに興味ある方は、ここからダウンロードしてトライしてみてください。

4.3 低周波増幅

LPFを通ってきた弱い信号を、スピーカーを鳴らすレベルまでの電力に増幅するためのアンプです。市販のデバイスで外付けの部品も少ないLM386が適当ではないかと選びました。このICは特性がほぼ同じで異なるメーカー製のNJM386もあり、どちらでも使えます。

低周波なので特に確認しなくても大丈夫とは思いますが、他の部分と同様に一応この部分だけを作ってテストしてみました。接続するスピーカーは8Ωのものであればなんでも使えます。出力側にスピーカーをつなぎ、入力側から音楽の信号を入れるときれいな音が出てきました。

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