2013年12月号
連載記事
楽しいエレクトロニクス工作
JA3FMP 櫻井紀佳
第7回 送信機2 (最終回)
前回に続いて送信機の説明をします。全体的な回路図は次のようになりました。なお、部品の番号は回路図の端から打ち直していますのでこれまでの説明図とは合致しません。
7.1 VFO (Variable Frequency Oscillator)
送信周波数を変えるVFOは1/4分周器の位相回路を使うため、4倍の周波数の28MHz帯になりました。
発振用のトランジスターは2SC1815を使いました。低周波用ですがこの周波数でも十分使えます。発振の後のバッファーアンプは手持ちのFET 2SK241を使ってインピーダンス変換しています。発振トランジスターにはできるだけ負荷をかけずにインピーダンスを上げ、また出力側はできるだけインピーダンスを低くするためです。このFETは現在製造されていませんが、まだインターネットの通販で入手することができます。
周波数を可変するポリバリコンは受信機に使った最大容量270pFのものを使いましたが、28MHz帯でも十分使えるようです。可変できる周波数範囲は、7MHz帯の7.0MHz~7.2MHzをカバーする4倍の28.0MHz~28.8MHzを計算上で求めたのがこの定数です。22pFと120pFのコンデンサーで分圧してポリバリコンを接続しました。ポリバリコンの回転角度と周波数の関係は、実測の結果次の図のようになりほぼ目標に近くなっています。周波数は1/4分周した7MHz帯で表しています。
受信機のコイルは単3電池を芯にして作りましたが、送信用VFOの発振コイルは受信機より周波数が高いため、今度は単4電池を芯にして少し直径の小さいボビンを作り、受信機と同様なやり方で17回巻きます。
7.2 分周、90°位相回路
VFOの出力はCMOSゲート1段のバッファーアンプを通して1/4分周器のフリップフロップのクロックとして使っています。このバッファーアンプはインバーターのため出力から入力に抵抗で負帰還させると直流的に中間の電圧になりアンプとして働きます。
74HCU04のUはアンバッファーの意味で、出力側にバッファーがついていないのでアナログ的な動作に都合よくなっています。Uのついていないものを使ってアナログ動作させると発振することがあるので注意が必要です。
90°位相差をつける1/4分周器は周波数が異なる以外は前回の1500Hzの局部発振器と動作は同じです。
7.3 マイクアンプ
これまでのブロックダイヤグラムには表示されていませんが、最初の平衡変調器に入る音声信号はマイクから入れますのでマイクアンプが必要です。マイクからの出力は普通平均値で2mV程度で、大きな声をだすと10倍の20mV位になります。
平衡変調器への入力は波形の端から端まで、つまりピークツーピーク(P-P)で1V位で、それ以上大きいと歪みが増えてきます。このため、少し余裕をみてマイクアンプのゲインは100倍(20dB)としました。2mVの100倍で200mV、P-Pでは約570mVとなり少し大きな声をだすと1Vを越えると思います。
このアンプは反転増幅器と言われ、入力がプラスになると出力はマイナスに振られます。アンプのゲインはR103/R102で決まり、1M/10k = 100倍になります。
7.4 高周波増幅
VFOを変調してLSBになった信号を増幅します。このアンプは出力端子からの影響を内部に伝え難くするバッファーの意味もあります。ここでも2SC1815を使ってみました。このトランジスターの入力側のインピーダンスはシミュレーション上では500Ω位になっています。そこで500ΩのLPFを前に入れます。計算上は次のようになりましたが、スイッチング変調器の負荷は2kΩ位にしたいところです。そこで2kΩから500Ωへの変換回路も考えます。シミュレーションの結果次のようになりました。
出力側はシミュレーションの結果次のようになりました。約8dB程度のゲインがあると思います。
この増幅段のシミュレーション結果は次のようになりました。ゲインに少しデコボコがありますが、これはやはりトランジスターの特性で高い周波数側のゲインが落ちていて無理に持ち上げようとしたからです。高周波用のトランジスターを使うともう少し特性が改善されると思いますが、他の部分で2SC1815を使っているので同じものでそろえてみました。
高周波増幅特性
出力のレベルは実測で約0dBm、つまり1mW程度です。これをアマチュア無線局にしようとすると、出力を10Wとしても40dBのゲインのアンプと、10W出力の高周波パワートランジスターが必要ですが、冒頭にも書いたように今回は電波法の関係もあって出力アンプは作りません。1mWでもそのままアンテナに繋ぐと電波法違反になりますので注意が必要です。免許のいらない微弱電波の話をよく聞きますが、電波法で許容する微弱電波は50nW程度で、1mWの1/20,000になります。