2014年6月号

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テクニカルコーナー

Androidアプリ RS-MS1A講座 その2

JK3AZL 高岡奈瑞

はじめに

先月、Androidアプリ:RS-MS1Aについて記事を掲載させていただいたところ、「ID-5100を買って、記事見ながら運用しました」のうれしい声のほか、「もっとBluetoothについて教えて欲しい」、「私のスマホでRS-MS1Aは動きますか?」のお問い合わせもいただきました。また某ハムショップさんでは「FBニュースの記事を印刷してお客さんに配布しています」とのこと。記事をご覧いただき、ありがとうございます。

また近年多くの地方自治体で地域防災計画の一環としてD-STARレピータを設置する動きが広まっていますが、ID-5100&RS-MS1Aの登場後、「RS-MS1Aを有効活用するための研修会を設けたい」のご依頼も寄せられるようになりました。

今月は、いただいたご意見なども取り込みながら、先月の記事の補足として
・なぜBluetooth機器は:正しく機能できるの?:Bluetoothのプロファイル
・以前買ったBluetooth機器と新しく買ったBluetooth機器との互換性は?:Bluetoothのバージョン
・自分のスマホは使えますか?RS-MS1Aが動く環境
・RS-MS1Aを防災に役立てる
の項目に分けてご紹介します。

なぜBluetooth機器は:正しく機能できるの?:Bluetoothのプロファイル

パソコンやデジタルオーディオプレーヤーなど様々な機器をケーブルなしで接続できるBluetoothは、【プロファイル】と呼ばれる通信ルールが定められており、マウスはマウス、ヘッドセットはヘッドセットとして認識できるようになっています。
Bluetoothで接続するには機器同士が同じプロファイルを含んでいる必要があります。

主なBluetoothプロトコル
◎SPP(Serial Port Profile)
Bluetooth機器を仮想シリアルポート化するためのプロファイル。
◎HFP(Hands-Free Profile)
ハンズフリー通話を実現するためのプロファイル。HSPの機能に加え、通信の発着信ができる。
◎HSP(Headset Profile)
ヘッドセットと通信するためのプロファイル。受信だけではなく、マイクで双方向通信できる。
◎HID (Human Interface Device Profile)
マウスやキーボードなどの入力機器を扱うためのプロファイル。
◎FTP(File Transfer Profile)
パソコン同士でデータをやりとりするためのプロファイル
◎HCRP (Hardcopy Cable Replacement Profile)
プリンタへの出力を行うためのプロファイル。
◎A2DP(Advanced Audio Distribution Profile)
高音質のステレオ音声をヘッドフォンなどに送るためのプロファイル。
◎AVRCP(Audio/Video Remote Control Profile)
AV機器のコントロールを行うためのプロファイル。

ID-5100のオプションユニット:UT-133はHSP/HFPとSPPのプロファイルに対応しており、1つのBluetoothユニットに対して、Android端末とヘッドセットの2種類の機器を同時に接続することができます。


ID-5100のBluetoothユニットのプロパティ表示。
仮想シリアルポート化機能とヘッドセット・オーディオ機能に対応していることがわかる。

ID-5100は、ヘッドセットの純正オプションとしてVS-3が発売されています。VS-3はHFP, HSP, A2DP, AVRSPのプロファイルに対応しており、ID-5100のBluetoothユニットだけではなく、スマートフォンやオーディオ機器にも接続することができます。また最近はコンビニでもスマホ用のハンズフリーヘッドセットが並んでいますが、多くの市販BluetoothヘッドセットもID-5100のBluetoothユニットに接続できます。ただしパソコンや携帯電話用に設計されたヘッドセットではPTT動作できないものがありますが、「受信はBluetooth、送信は無線機のマイク」または「送信はVOX機能」として使えるものがたくさんあります。(メーカー保証対象外のため、ご利用は自己責任となります)

Bluetoothヘッドセットと無線機の送受信のPTT動作関係は「早い者勝ち」。どちらか早くにPTT動作した方にのみ変調回路が接続され、PTT操作を解除するまでは、他方のPTT操作を受け付けない仕様になっています。

以前買ったBluetooth機器と新しく買ったBluetooth機器との互換性は?:Bluetoothのバージョン

基本的に新しいバージョンは古いバージョンと互換性があります。

ver.1.1:最初の普及バージョン
ver.1.2:2.4GHz帯の無線LAN(802.11/b/g)との干渉対策版
ver.2.0+EDR:Ver.1.xの3倍の通信速度となり、容量の大きいデータ通信に対応
ver.2.1+EDR:ペアリング簡略化+マウスやキーボードなどスリープ時間の多い機器のバッテリーの持ち改善
ver.3.0:無線LANの規格IEEE 802.11の利用で最大通信速度24Mbpsを実現+さらなる省電力化

ID-5100のオプションユニット:UT-133にはBluetoothバージョン3.0が搭載されているため、ストレスなくID-5100を操作できるようになっています。

自分のスマホは使えますか?RS-MS1Aが動く環境

「Android端末」と言っても、さまざまなスマートフォンが発売されているほか、いわゆる『中華タブレット』と呼ばれる激安タブレットも含めるとたいへんな種類の機種があります。さらにAndroidを搭載したウォークマン(しかもGoogle play対応!)や電子本専用のタブレットなども出回っており、確かに「このスマホ(またはタブレット)でRS-MS1Aが動くのか?」と不安になってしまいます。
スマホやタブレットは、同じバージョンのOSを搭載していても機種によって動作が異なるため、不安な方はメーカーが動作確認を行ったAndroid端末を使うのが安心ですが、
●Android 4.0以降
●Google play対応
を満たすAndroid端末であれば、概ね動作します。

機能を絞った「らくらくスマートフォン」や、ONKYO製タブレット、一部の中華タブレットなどGoogle Play非対応機種では、Google playサイトから直接RS-MS1Aをインストールすることができません。


Google play非対応機種は「端末にアプリをインストールできません」と表示される。

しかし、APKDownloaderやApk installerなどのツールを利用することで、apkファイルからRS-MS1Aをインストールすることもできます。(ただしこの方法では自動的にアプリがアップデートされない、ファイルマネージャーアプリが必要、などの条件があります。もちろんメーカーサポート対象外なので、自信がない方はAndroidに詳しい友人などに聞くなどしてください。)


Google play非対応機種にRS-MS1Aをインストールした様子。
無線機に接続し動作可能だが、地図表示できないなど機能に制約ある機種もある。

RS-MS1Aを防災で役立てる

各自治体では、災害時の連絡手段として防災行政無線などによるインフラを整備していますが、災害対策基本法に基づく地域防災計画の一環として、自治体と地元のアマチュア無線クラブとの間で災害協定等を締結するケースが増えています。

実際に、被災地となった地方自治体と地域アマチュア無線クラブ局が災害協定を結んでいたことにより、避難所からの物資調達等の最新情報や、市内巡回による被災状況など、リアルタイムな情報が収集でき、救援・救助活動が混乱なく円滑に行われた実績が数多くあります。

「アマチュア無線を活用することで大勢の『通信機器を所持』した『熟練した通信士』の協力が得られた」「アマチュア無線家はプロ以上の通信プロフェッショナル」と賞賛する自治体もあるほど、今、アマチュア無線が注目されています。

特に、阪神淡路大震災での非常通信の経験を活かして開発されたD-STARは、「はじめに」でもご紹介したように、現在多くの地方自治体で評価され、D-STARレピータを設置し、地元のアマチュア無線家と協力して防災活動に役立てる動きが広まっています。


全国に設置されるD-STARレピータ (http://batchgeo.com/map/d-star_rpt)

D-STARのDV(デジタルボイス)モードは、音声で一斉連絡しながら位置情報やメッセージも同時に送受信でき、効率良く活動できるメリットがあります。


D-STARは音声とデータが同時に送受信できるため、効率良いボランティア活動が可能

さらにID-5100+Androidアプリ:RS-MS1Aの登場で、音声+GPS位置情報+メッセージの他に、画像も送受信できるようになりました。メーカー製のカメラを新たに購入する必要はなく、使い慣れたスマートフォンを利用して、アマチュア無線の電波を利用して画像を送ることができます。

アマチュア無線にはさまざまな楽しみ方があります。近年は、DX’erやコンテスターなどといったジャンルに加え、『Tech系HAM』呼ばれる、アマチュア無線とIT技術を融合させた技術を楽しむアマチュア無線家も増えています。以前は『アマチュア無線の自作』と言えば半田ごてが必須でしたが、最近は無線の楽しみ方を広げるアプリ開発も『自作』の楽しみ方として定着しており、たくさんの自作アプリが公開されています。実際にGoogle playで「アマチュア無線」で検索してみると、驚くほどたくさんのアプリがヒットします。

多層基板や超小型チップ部品を駆使するメーカー製品があふれる中で「自作する余地が少なくなってきた」と嘆く声もありますが、アプリ開発としては、自作の方が自由に早くユニークなものを生み出せるかもしれません。

RS-MS1Aはアマチュア無線の楽しみ方を広げることができるアプリですが、すでにBluetoothを利用したIC-9100やIC-7100などの機種をコントロールできる自作アプリ(http://www.youtube.com/watch?v=pplWetqyQ-s) も公開されており、今後はRS-MS1Aを超えるユニークな自作アプリが登場することを期待しています。

頭の体操 詰将棋

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