2014年6月号
連載記事
第5話 国家試験
受験日の1週間前。3人の表情はあまり晴れやかではありません。
サ 「Oh, My God! 勉強ぜんぜんできてないよ(´ヘ`;)」
あ 「私も・・・。っていうか、仕事が忙しくなってきて、それどころじゃないっていうか」
エ 「だよね。私もほとんど毎日残業。まだ完丸の☆3つ以上のしか覚えられてないし」
あーちゃんは内心で「ヤッバ。まだ法規しかやってない・・・」、と思いながら苦笑いを浮かべました。
11月10日の早朝。LINEの3人のグループにメッセージが入っていました。
エ 「仕事はいっちゃった!!今日の試験いけません(ノД`)・゜・。悔しいけど、絶対また受験しようと思う。ふたりとも頑張ってね!応援してます」
あ 「そんなぁ。エリーがいないなんて」
3人で試験を受けることが大きな励みだったので、あーちゃんはがっくりと肩を落としました。
サ 「合格して、エリーにアドバイスしてあげなきゃ!」
サミーは合格への決意を新たにしました。
とうとう試験の日がやってきました。試験会場の最寄り駅で2人は待ち合わせました。そこからはスマホのMapを使って迷うことなく会場に着くことができました。建物の数部屋を借り切って試験が行われるようです。部屋の外では、友達同士で来た受験者が談笑する姿が見受けられました。
3人はバラバラのタイミングで申し込んだので、サミーとあーちゃんの試験会場は別々の部屋でした。
サミーの部屋は男性がほとんどで、若い人からお年寄りまで年齢層は様々でした。
あーちゃんの部屋には、男性に交じって、小学生が数人と、同じくらいの年齢の女性が何人かいました。
試験開始の9:30になる少し前から問題用紙とマークシートの解答用紙が配られ始めました。筆記用具以外をバッグにしまうと、いよいよ試験が始まるんだ、と二人とも緊張が高まってきます。
開始の合図が告げられました。あーちゃんは試験問題に目を通すと、見たことがない問題がちらほらありました。それらは後回しにして、分かる問題から正確に答えていきます。
試験は、法規と無線工学の2科目ありますが、2科目合わせて60分の試験時間内で解かなければいけません。問題数は各科目12問ずつ出題され、両科目とも8問以上の正解で合格となります。もし一方の科目が満点でも、もう一方の科目が8問以上正解できないと合格にはなりません。
サ 「うん、法規はバッチリ!工学もいい感じだ☆」
負けず嫌いのサミーは、実は2人の知らないところでコツコツと勉強を積み重ねていました。記憶を辿りながら丁寧に回答していきます。
あ 「昨日、工学だけじゃなくて法規も見直しとくんだった・・・。問題は見たことあるのに、回答覚えてないやつがいっぱいある(T_T) 工学はもはや暗号なんですけど―――!!」
分からなさすぎて投げやりな気持ちになってきたあーちゃんは、無線工学は一か八かでテキトーに塗りつぶしました。
試験開始から30分経過すると退出してもよいことになっています。10:00の退出可能時間になると、あーちゃんは解答用紙を提出して逃げるように会場から抜け出しました。10分ほどするとサミーも出てきました。サミーのニコニコ笑顔をみて、あーちゃんは今後の展開がすっかり予想できてしまいました。
2人は近くのカフェで自己採点を行うことにしました。
サ 「やったね♪合格間違いなしだ!!」
サミーの問題用紙には綺麗な赤丸がたくさん描かれています。
サ 「どれどれ~?あーちゃんの結果はっと」
問題用紙を覗き込んだサミーは、「Oh・・・」と低くつぶやきました。
あーちゃんは悔しさをこらえながら、カフェラテが入ったマグカップで顔を隠したのでした。
一方、試験が受けられなかったエリーは、その日の晩次の試験を申し込むため日本無線協会のホームページを見ていました。
エ 「今日申し込んでも受けられるのは1月かぁ・・・(>_<)」
アマチュア無線の国家試験は、即日結果が発表される特別な試験を除くと、試験を希望する月の2ヶ月前の20日までに受験を申請しなといけません。気がせいて仕方ないエリーですが、この時間を勉強に活かして絶対合格しようと強く思いました。
試験からおよそ1週間後、サミーの家に日本無線協会からの試験結果通知書が到着しました。Momから手渡されたハガキをドキドキしながら開くと、中には「合格」
の文字が!
サ 「Yeah!! これでイケメンGetだぜッ☆」
サ 「無線機買って~、電波飛ばして~、お兄さんとお話して~、バケーションにはハワイでデートだね♥」
お気に入りの黄色いネズミのキャラクターのぬいぐるみを抱きながら、ルンルン気分でサミーはあーちゃんに電話をしました。
あ 「もしもし・・・」
第一声から覇気がありません。
サ 「どうだった?」
あ 「もちろん、不合格だったよ」
あーちゃんの部屋の床には不合格と書かれたハガキが落ちています。それを見ながらあーちゃんはやるせない気持ちで答えました。
サ 「もう一回チャレンジするよね?」
あ 「正直、もう受けたくないなぁ」
サ 「がんばろーよ!大好きな山登りのためにさ(^O^) エリーと一緒に受ければいいじゃん!」
あ 「サミーは受かったから気楽でいいよね。少し考えさせて」
あーちゃんは通話を切ると、携帯を放り出してベッドに沈みました。憧れの富士山のポスターを眺めていると、涙が出そうになってきました。
一方、自室で11月下旬に観られるアイソン彗星の情報を収集していたエリーのもとに、サミーから着信が入りました。
サ「合格通知届いたよ~!」
エ「おめでとう!思ってたより早かったね」
サ「これからどうするか、Masaco先輩にまた訊かなきゃ」
エ「そういえば、あーちゃんはどうなったか知ってる?」
サ「それが・・・」
あーちゃんから試験の後なんの連絡もなかったので、エリーは「もしかしたら」とは思っていたのですが、自分の勉強や仕事で多忙のため、あーちゃんに直接確認することができずにいました。
サ「でも、やっぱり3人一緒がいいよね」
エ「今まで何でも3人一緒に頑張ってきたもんね。説得しよう!」
2人はあーちゃんがどうすればやる気を取り戻すか、作戦会議を始めました。
後日、あーちゃんは、試験結果を報告するためにMasaco先輩のオフィスを訪ねました。
サミーから電話で不合格だったことを聞いていたMasaco先輩は、あーちゃんのために4アマ合格のための資料やプリントをたくさん用意して待ってくれていました。
M 「簡単なんて言っちゃってごめんね。プレッシャーだったよね。私と一緒にもう1回頑張らない? あーちゃんのために特別補習やったげるから。大学の時みたいにね(*^^*)」
あーちゃんはとうとう泣き出してしまったのでした。
次回・・・
あーちゃんはどうなるの? エリーの試験は?
絶好調のサミーはついにアレをゲット?!
「第6話 無線従事者免許申請」
お楽しみに☆