2014年9月号

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テクニカルコーナー

ID-31にスマホを繋いで画像伝送をする

編集部

ID-5100とAndroidアプリ RS-MS1Aの誕生で、限られた狭帯域で音声も位置情報もメッセージ、さらには画像まで同時に伝送できるようになりました。さらにハムフェア2014では、新製品のID-51 50周年記念モデルだけではなく、ID-31やIC-7100などの既存製品でも画像伝送ができるようになったと、既存製品ユーザーにとって嬉しい発表がありました。今回はハムフェアで発表されたD-STAR新機能と、ID-31にスマホを接続して画像伝送を行う方法について紹介します。

機能アップしたRS-MS1A

ID-31で画像伝送ができるようになったのは、無線機とAndroid端末を接続できるケーブルの登場と、Androidアプリ:RS-MS1Aがバージョンアップしたことによります。
(RS-MS1Aの説明については、5月号の『Androidアプリ RS-MS1A講座』を参照してください)
http://fbnews.jp/201405/tech/RS-MS1A_01.html


(図1) RS-MS1A(Ver.1.1.0)起動直後の画面

RS-MS1Aの『接続する機器の選択』画面では、
 ◎ID-5100
 ◎ID-51(Plus)
 ◎その他
の3つから選択することができますが、この3種類の違いは
 ◎ID-5100=Bluetooth接続+DV fastモードに対応
 ◎ID-51(Plus)=ケーブル接続(データ端子から低速データ通信とCI-V制御)+DV fastモードに対応
 ◎その他=ケーブル接続(データ端子から低速データ通信のみ)
の違いとなります。


(図2) ハムフェアで配布されていた資料(抜粋)

図2のハムフェアで配布されていた資料の中身を、機種と機能別に分けてみると、RS-MS1A起動時に『ID-5100・ID-51 Plus・その他』の3種類から選択させる意味がわかると思います。


(図3) RS-MS1Aの各機能と対応機種

なおD-STAR無線機をAndroid端末にケーブル接続して使うには、RS-MS1A起動時に機種を選択する他、無線機側は、データ通信や制御を行うため、下記の設定が必要になります。
 ◎データ端子から簡易データ通信するための設定
 ◎CI-Vで無線機を制御するための設定(現在はID-51 Plusのみ)
 ◎必要に応じDV Fastモードの設定(現在はID-51 Plusのみ)

DV fastモード

もともとDVモードでのデータ通信は4.8kbpsで音声と同時に送受信する『低速データ(スローデータ)』と呼ばれるものでした。この『スローデータ』を高速化したものが『DV fastモード』と呼ばれる新しい機能で、先日D-STARの諸元である『アマチュア無線のデジタル化技術の標準方式 略称D-STAR Ver.5.0』としてJARLより発表されました。 http://www.jarl.com/d-star/STD5_0.pdf

DVモードでは音声セグメントとデータセグメントを交互に送ることで、音声通信と同時にデータ通信ができるしくみになっています。


(図4) DVモードのフレーム構成

今回JARLで改訂されたfastデータ通信の規定では、fastデータも従来の簡易データのフォーマット規則と同様としながら、音声セグメントとデータセグメントの周期を変更し、データ伝送の速度を速めた仕様になっています。もちろん途中でPTT を押した場合は、速やかに通常の音声セグメントとして音声が送信されるように移行するとされており、またfastデータ伝送中は、1秒を目安として周期的にfastデータを示すビープ音が挿入されることになっています。このDV fastモードの登場で、DVモードでのデータ伝送が約3倍の速度でできることになりました。

ID-31にAndroid端末を接続して画像伝送する

■Android端末にアプリをインストールする
アプリのインストール方法については、FBニュース5月号の:AndroidアプリRS-MS1A講座を参照してください。(http://fbnews.jp/201405/tech/RS-MS1A_01.html
RS-MS1Aを立ち上げると、以前のバージョンのRS-MS1Aにはなかった『接続する機器の選択』画面が表示されます。

(注意)
8月末現在、RS-MS1Aの動作環境としてGoogle Playサイトに記載されている条件は
 (1)Android 4.0以降
 (2)タッチスクリーンデバイス
の2点だけですが、USBケーブルでAndroid端末と無線機を接続するには、さらにAndroid端末がUSBホスト機能に対応している必要があります。USBホスト機能がないAndroid端末では、RS-MS1Aの『接続する機器の選択』画面でID-5100以外を選択すると、図5のようなエラーメッセージが表示され、アプリが終了してしまいます。

実はAndroid端末にUSBホスト機能があるかどうかを確実に見分ける方法はなく、基本的には、スマホやタブレットの取説や機器ホームページを見るか、スマホやタブレットのメーカーに問い合わせるしか方法がありません。したがって「自分のAndroid端末が使えるか?」が心配な場合は、まずはGoogle PlayサイトからRS-MS1Aをインストール(無償)し、起動直後の『接続する機器の選択』画面でID-5100以外を選択してエラーが出ないか確認してから、接続用のUSBデータ通信ケーブルを購入する方が安全です。(筆者の場合も、2台のスマホのうち1台が非対応機種でした)


(図5) RS-MS1Aのエラーメッセージ。この表示が出るAndroid端末ではケーブル接続できない

■USBケーブルの用意
ID-31とAndroid端末に接続するには、8月に発売されたばかりのAndroid/Windows対応USBデータ通信ケーブル:OPC-2350LUを用意します。


(図6) 左は既存のデータ通信ケーブル。右はAndroid/Windows対応データ通信ケーブル(OPC-2350LU)

見た目はほぼ同じですが、OPC-2350LUの方にはAndroid/Windows両方に対応したチップを搭載しているため、Windowsパソコンに繋いでも、Android端末に繋いでも動作します。したがってAndroid端末に接続して画像伝送やテキスト伝送をするだけではなく、自宅のパソコンに接続した際にはクローニングにも利用できます。

■ID-31の準備
ID-31は、データ端子を使う他の機能を全てOFFにし、簡易データ通信が行える状態にします。
・MENU「GPS」-「GPS設定」-「GPS出力」→OFF
・MENU「GPS」-「GPS送信モード」→OFF
・MENU「GPS」-「GPS設定」-「GPS選択」では、外部GPS以外を選択
・MENU「機能設定」-「データスピード」→9600bps
・MENU「DV設定」-「DVデータ通信」→オートを選択

■ID-31とAndroid端末を接続する
OPC-2350LUで接続します。特に難しい設定はありません。


(図7) ID-31で画像伝送する様子

(補足)
ID-31やID-51などのD-STAR機をAndroid端末に接続して画像やテキストを伝送する場合、ケーブルで接続する場合は『遠隔操作』には該当しません。またD-STARは元々パソコンなどの機器を接続してデータも伝送できる仕様になっているため、パソコンやAndroid端末を接続しても『外部装置を付加』したことにはならず、新たな変更申請は必要ありません。(総合通信局に確認済)

OPC-2350LUをWindowsに接続する

OPC-2350LUはWindowsにも対応しています。パソコンにUSBドライバーをインストールしておけば、D-RATSやチャットなどパソコンからのデータ通信やクローニングにも使うことができます。

■USBドライバーのインストール
OPC-2350LUをパソコンに接続すると、USBドライバーのインストールを自動で開始します。このときUSBドライバーが正常にインストールされない場合は、アイコムの 「アマチュア無線機器サポート」のページから「ファームウェア/ドライバ ダウンロード」と進み、「アマチュア無線機/オプション関連」を選択し、OPC-2350LUのUSBドライバーをダウンロードします。 インストールにあたってはOS別に用意された「USBドライバーインストールガイド」もダウンロードし、ガイドの手順に従ってインストールを行って下さい。


(図8) USBドライバーのダウンロードページ


(図9) 取説/インストールガイドのダウンロードページ

ドライバーが正しくインストールできたかどうかは、コンピュータのプロパティのデバイスマネージャーで確認できます。


(図10) OPC-2350LUのドライバーが正しくインストールされた状態

パソコンにOPC-2350LUのUSBドライバーがインストールされた状態でクローニングソフトを立ち上げると、デバイスマネージャーに表示されたCOMポート番号が表示されます。


(図11) ID-31のクローニングソフト

-番外編―

IC-U1で画像伝送をする

メーカー資料によれば、RS-MS1Aの画像伝送は『ID-31/ID-51/IC-7100から対応』とされていますが、所詮DVモードのデータ通信。(DVモードとしでは)大容量の画像を伝送するため、CPU処理能力など色々と差異はあるにせよ、ID-51/ID-31/IC-7100以外の無線機でもデータ伝送はできるはず!ということで、D-STARの初代ハンディ機であるIC-U1で画像伝送を試してみました。

IC-U1を簡易データ通信の設定に変更し、OPC-2350LUを介してAndroid端末に接続。結果は、下記写真のとおり、画像伝送ができました。


(図12) IC-U1でも画像伝送ができる
左: 画像伝送している様子。右: ID-5100で画像を受信した様子(320×240の高画質設定)

最後に

D-STARは、新しい機能やアプリの登場でどんどん進化を続けています。さらにJARLから新たな仕様も発表され、今後の進化が楽しみな世界です。何度か本FB NEWSでD-STARに関する記事を掲載してきましたが、D-STARのほんの一部の機能しか伝え切れていません。D-STARの、特に応用編に関する問い合わせが増えて来ていることから、今後は幅広く使い方の説明ができるよう、連載化を進めていきたいと考えています。記事をご覧になっていただいた方々からの個別のご質問も受け付けていますので、ご意見やご質問等がありましたら、お気軽にFB NEWS編集部までEメールでご連絡下さい。

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