2016年6月号

トップページ > 2016年6月号 > 楽しいエレクトロニクス工作/JA3FMP櫻井紀佳 第37回 パルスジェネレーター

連載記事

楽しいエレクトロニクス工作

JA3FMP 櫻井紀佳

第37回 パルスジェネレーター

スイッチング電源を製作する際、大電流のものになるとコイルとドライブするトランジスターまたはパワーFETの動作がよく分からず、デバイスを壊してしまうことがよくあります。

実際の動作では低い電流から高い電流までの過渡的な動作の詳細が分からないので、今回その動作解明のためにONとOFFのデューティサイクルを可変できるパルスジェネレーターを作ってみました。パルスジェネレーターまで作ってスイッチング電源を作る人はいないかも知れませんが、他にも使う用途があるのではないかと考えました。

市販のメーカー製パルスジェネレーターは、昔は今回製作するものと同様に周波数とデューティサイクルを変化させるだけのものもありましたが、今ではファンクションジェネレーターとして多くの機能を持つものがほとんどで、しかも高価です。

1.構成の考察

最近のスイッチング電源は、小型化のために周波数がどんどん上がり、1MHz以上のものもありますが、今回対象とする電源は大電流となる30A以上の出力を目指していますので、使用するFETの特性から周波数を余り高くできません。

大電流のスイッチング電源でよく使われる周波数範囲として、30kHzまでを4バンドで切り替えることにしました。周波数安定度はそれ程シビアに求められる訳ではないのでロジック回路による発振回路としました。この回路で、5kΩのVRを変化させると2、3倍位周波数が変わりますのでコンデンサーを4段階で切り替えます。

今回のパルスジェネレーターは、できればデューティサイクルを正確に変化させたいので分周器とシフトレジスターによって可変させました。なお、あまり細かいステップで変化させる必要はないと考え10%ステップの変化としました。

このブロックダイヤグラムは次のとおりです。

動作としては、発振回路の波形の立ち上がりでRSフリップフロップをセットしてHレベルにして、シフトレジスターの遅れてきた波形の立ち上がりでリセットしてLレベルにすると、その間の時間差でデューティサイクルが決まります。必要なデューティサイクルを10%から90%までとするとシフトレジスターは9段のものが必要です。

2.回路の説明

全体の回路図は次のようになっています。


(※クリックで拡大します)

・発振回路
ロジック回路による発振回路でアナログ動作のため、アンバッファの74HCU04を使用しました。周波数はどの周波数帯でも変化量は同じハズですが、実際に作ってみたところ、なぜかCの大きい低い周波数では3倍程度可変でき、高い周波数では2倍強程度しか可変できませんでした。理由はよく分かりません。回路的に外部からの信号入力を想定して、その入力端子と内部回路を切り離すジャンパーを付けています。

周波数帯をA、B、C、Dの4つに切り替えて測定した発振周波数は次のようになりました。

また、それぞれのバンドのグラフは次のとおりです。


(※クリックで拡大します)

・遅延回路
デューティサイクルを10%ずつ変化させるために、まず発振信号を1/10にします。74HC390の1/5と1/2を使いますが、50%のデューティサイクルが欲しいため、先に1/5に分周後に1/2分周します。

その信号をシフトレジスターで順番に遅らせて行きますが、全体として9段の遅延が必要です。シフトレジスターの74HC164は8段しかないので1段分だけ74HC74を使って9段としています。

全体の信号の波形は次のようになります。

動作は、まず、74HC390の出力波形の立ち上がりを取り出してRSフリップフロップの74HC74のPR端子に入力してONにします。

デューティサイクルの切り替えは10%から90%まで9段必要で、74HC390の出力は74HC74で1クロック分遅延させ、その後74HC164の8段シフトレジスターで順番に遅延させていきます。
それぞれの遅延出力はロータリースイッチで選択して取り出し、その立ち上がりでIC6BのRSフリップフロップ74HC74のCL端子に入力してOFFにします。このロータリースイッチで切り替えて取り出だした遅延分がデューティサイクルの幅となります。

信号をオシロスコープで測定した結果、予定どおり10%から90%まで10%ステップで変化させることができました。

次の図は10%、50%、90%の出力波形です。

・出力回路
出力は74HC74のフリップフロップから直接取り出すと誤動作の可能性があるため、バッファとして74HCU04を入れています。このロジック出力の他、スイッチング電源の試験用としてFETの2SK2009を使っています。ドレイン端子をオープンコレクターのような形で直接出力しているため外部の回路から電流を引き込むだけになりますが、最大200mA程度まで可能です。

・電源回路
ロジック回路は5Vで動作させるため、5Vのシリーズレギュレーターを使用しました。全体の電流は少なく、小さいレギュレーターで大丈夫です。

頭の体操 詰将棋

Masacoの「むせんのせかい」~アイボールの旅~

  • 連載記事一覧
  • テクニカルコーナー一覧

お知らせ

発行元

発行元: 月刊FBニュース編集部
連絡先: info@fbnews.jp