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荒川泰蔵アンティークラジオ・蓄音機コレクション展

2024年4月1日掲載

3月18日(月)と20日(水・祝)に前号のニュース記事でお知らせした、JA3AER荒川氏と、(公財)大阪狭山市文化振興事業団共催のアンティークラジオ・蓄音機コレクション展が開催された。


JA3AER荒川氏

会場は、約1400年前に築造された日本最古のため池「狭山池」の近く、南海高野線大阪狭山市駅より数分の大阪狭山市文化会館(SAYAKAホール)1階展示ホールで、筆者が訪問した際にもたくさんの来場者が見学していた。


荒川氏が海外現地法人に駐在していた1978~1988年(米国)と、1990~1998年(英国)を中心に収集された1920年代から1950年代のラジオ、1900年代から1920年代の蓄音機、また1910年代のラジオに使用されていたバリコンなどの部品、そしてラジオやテレビなどに関する郵趣作品など多くのものが展示されていた。


左にはラジオ、奥にはラジオや部品、右には蓄音機が展示されていた

ラジオ

日本でラジオ放送が始まった1925(大正14)年以前の1922(大正11)年の英国製鉱石ラジオから1959(昭和32)年の英国製ポータブルトランジスタラジオまで17点の鉱石式、真空管式、トランジスタ式が製造年代に分けて展示されていた。


左2台: 1922年, 1923年英国製の鉱石ラジオ
右2台: 1922年, 1924年米国製の真空管ラジオ


1922年, 1923年英国製の鉱石ラジオ


1922年, 1924年米国製の真空管ラジオ

また、その後登場したスーパーヘテロダイン方式の初期の真空管式卓上可搬型(と言っても幅が約1m)から、初期のトランジスタ式ポータブル型やキャビネット型など様々なタイプが展示されておりラジオの歴史が感じられた。


1924年米国製の真空管式卓上可搬型ラジオ
幅が約1mあり真ん中にはラジオの回路が入っており、両側には電池を入れるそうだ


1924年ころの三井物産のカタログ
右のラッパ状のスピーカー、真空管6個は附属品だが電池は別売りで価格は950円
荒川氏によると現在の数百万円となり、当時は家が建つくらいの金額だったそうだ


展示品の中では一番新しいラジオ(トランジスタ式)
ダイヤル板には放送局の所在地名が入っている

当時のラジオ部品

次に目に入ったのは、アマチュア無線家にもなじみ深い1910年代に使用されていた部品群。可変容量コンデンサ(バリコン)と可変コイル(バリオメータ)が展示されていて、荒川氏が自らふたを開け、来場者に内部を説明する一幕もあった。





蓄音機

蓄音機は1908(明治41)年ころの米国製円筒式から1927(昭和2年)の英国製ポータブル式や卓上式などの8点が展示されていた。


円盤式レコードは、針(ピックアップ)部が横方向に振れて信号を拾うのに対し、エジソンのものは縦方向(溝の深さ)で信号を拾うものだそうで、円筒式はもとより、その後のエジソンの円盤式のレコード盤は厚みが約1cmと非常に厚みのあるものであった。


当時の円筒形蝋管やレコード盤を手に説明

ここで実際に円筒型レコード用の1908年米国製エジソンスタンダードC型の試聴が行われた。音が鳴り始めた時には来場者から歓声が上がった。
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次に1925年ごろ米国または英国製の円盤式ポータブル蓄音機の試聴が行われた。
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どちらも100年から120年近く前の蓄音機でゼンマイ式であるが現在でも完全に動作し来場者の目を引き付けていた。

郵趣作品

荒川氏は、郵趣の趣味もお持ちで収集された切手のうち、「ラジオ放送と受信機(ラジオ放送開始100周年を記念して)」をテーマにした郵趣作品の展示も行われ、これでラジオ放送や、テレビ放送の歴史を説明されていた。


郵趣作品の一部

展示の内容は、1780年に生体電気を発見したガルバーニ(伊)に始まり、エジソンやマルコーニなど現代までの電気・通信に関連する先駆者達、国内外のラジオやテレビの放送に関連したものなど多数の作品であった。

また、ベリカード(受信証明書)もいくつか展示されており、荒川氏が変わったものがありますよと教えていただいた。指をさす先には奈良テレビ放送のベリカードであった。


こちらに変わったベリカードがあります。わかりますか?

よく見てみると我々アマチュア無線家になじみがあるデザインだった。当時奈良テレビ放送(UHF55ch)の奈良親局(大和郡山市と生駒郡斑鳩町の境の松尾山)のベリカードであるが、おそらくアマチュア無線局も併設されていたのかそのQSLカードを利用したものであった。


JONM-TVは、奈良テレビ放送のコールサイン

ステレオ(立体)写真

今回の展示会場内では、荒川氏の友人も説明を担当されていた。そのひとつがステレオスコープで、約100年前の明治時代末期にステレオ(立体)写真が流行ったという。これは、ステレオスコープに少し角度をずらして写したステレオ写真をセットし、左右それぞれの目で見ることにより、画像が立体的に見えてくる視覚現象を利用したものだ。

貴重な製品であったが、ステレオ写真の視覚効果を来場者に実際に体験してもらっていた。これは現代のバーチャルリアリティに通じるもので、体験した方は100年前にそういうことができていたのかと驚いていた。


ステレオ(立体)写真の体験コーナー
右下にあるのがステレオスコープとそのステレオ写真

大阪狭山ラジオクラブ(JR3YRL/JK3ZCR)シャックを再訪

Masacoの「むせんのせかい」 ~アイボールの旅~ 第16回(2017年5月号)で訪問した大阪狭山ラジオクラブのシャックを再び訪問した。当日はクラブ員が不在のため無人ではあったが、荒川氏によると会合や運用などで都度集まっているそうだ。シャック内にはコンテストで獲得した賞状などが多数掲示されていた。


IC-7851+IC-PW1他、多数の機器が備えられていた


シャックの外には活動の様子が掲示されていた



屋上にそびえるアンテナ群。このほかに50MHz帯のアンテナも健在であった

アンティークラジオ・蓄音機の今後

今回のコレクション展では、両日あわせて200人を超える来場者数だったそうだ。前号のニュース記事でもお知らせしたが、今回の展示品を含めた収蔵品の数々は広島県東広島市で荒川氏の友人が古民家を改装して創設するラジオ博物館で常時展示されることが決まっている。

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