2014年4月号
ニュース
太陽風観測衛星データ受信システム完成記念式典
3月20日(木)、東京都小金井市にある独立行政法人情報通信研究機構(NICT)で、太陽風観測衛星データ受信システムの完成記念式典が開催された。当日はあいにくの雨天だったため、受信アンテナ前の特設会場で行われる予定だった式典は、屋内に会場を変更して行われた。
東京都小金井市にあるNICTの本部ビル
式典では情報通信研究機構理事長の坂内氏による挨拶から始まり、総務省官房総括審議官の武井氏による来賓挨拶、情報通信研究機構 電磁波計測研究所長の井口氏による太陽風観測衛星データ受信システムの説明、さらに米国海洋大気庁(NOAA)国立気象局局長のウッチェリーニ氏からの祝辞が披露され、関係者によるテープカットと続き、式典終了後にはアンテナの見学会が行われた。
今回完成した直径11.3mのパラボラアンテナ。太陽風観測衛星を自動で追尾する。
使用周波数は2GHz台。衛星が見えない夜間は天頂ロックとの事。
この太陽風観測衛星データ受信システムは、太陽と地球の重力が釣り合う点(ラグランジュポイント)を飛行している太陽風観測衛星ACEで受信した太陽風に関するデータを受信し解析することで、太陽風が実際に地球近傍に到達する約1時間前に変化などを把握できる。さらに米国、ドイツ、韓国、日本が協力して24時間体制で受信することで、宇宙天気の連続監視に寄与している。なお、1997年から観測を続けているACEは、2015年に新衛星DSCOVRに取って代わられる予定になっている。
太陽風観測衛星の飛行位置
(NICT提供の資料より)
宇宙天気はアマチュア無線の通信にも大きな影響を与える電離層の情報や地磁気の情報なども含まれることから、宇宙天気予報を実際の運用に活用しているアマチュア無線局も少なくないと思うが、今回はこの宇宙天気予報を発信する宇宙天気予報センターも併せて公開された。ここでは、太陽風観測衛星データ受信システムをはじめ、さまざまな観測施設/設備から得られたデータを解析して、毎日15時(日本時間)に宇宙天気予報を発信している。
パラボラの右に見えるのが、電離層観測用のイオノゾンデのアンテナ
(45m高の鉄塔にデルタアンテナを架設)
このアンテナから15分毎に1~30MHzのパルス波(尖頭出力10kW)を真上に発射し、その反射波を受信して電離層の状況を調査している。
イオノゾンデのアンテナの地上付近。エレベーテッドラジアルが展開されている。
NICT職員による宇宙天気予報の説明。
HF伝搬の参考となるイオノグラム。15分毎に更新される。
今号の清水氏の連載に解説がある。
午後からは、第9回宇宙天気ユーザーズフォーラムが開催され、情報通信研究機構 電磁波計測研究所 宇宙環境インフォマティクス研究室長の石井氏による「宇宙天気にかかわる最近の動向」、日本乗員組合連絡会議 HUPER委員長で全日空B787機長の阿久津氏による「航空機での宇宙天気の利用」、成蹊大学理工学部教授の藤原氏による「宇宙機に働く大気ドラッグの評価について~高精度な宇宙機運用に向けて~」、宇宙航空研究開発機構 宇宙飛行士運用技術部 主任開発員の佐藤氏による「宇宙飛行士の放射線被ばく管理と宇宙天気予報」の4本の講演が行われた。
講演(宇宙天気にかかわる最近の動向)の様子
さらにフォーラム閉会後も、(事前に申し込みを行った)希望者が参加できるイベントとして、「宇宙天気予報個別相談」、「宇宙天気データの読み方ミニ講座」、「NICT展示室ツアー」の3つが用意され、好みのイベントに参加することができた。
「宇宙天気データの読み方ミニ講座」の様子