2014年4月号

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RS-BA1 Ver1.6使用レポート

編集部

IC-7800のファームウェアVer.3.01、IC-7700のファームフェアVer.2.00に対応し、遠隔操作において各々の機器のパフォーマンスを最大限に引き出すRS-BA1 Ver1.6を使用してみた。先にIC-7800の大幅バージョンアップ(Ver.3.00)に合わせてVer.1.5がリリースされているが、今回はIC-7700の大幅バージョンアップ(Ver.2.00)、ならびにIC-7800のマイナーバージョンアップ(Ver3.01)に合わせてVer.1.6がリリースされ、併せてネットワークの遅延に起因する「音切れ」の改善や、変調音の音声遅延の改善もなされたため、このVer.1.6をレポートする。

バージョンアップのメリット

今回の一連のバージョンアップの最大のメリットは、IC-7800/IC-7700に新しく搭載されたサーバー機能が使用できるようになったことだ。これによって、リモート運用時に送信所側のパソコン(サーバーPC)が不要になり、トランシーバー(IC-7800/IC-7700)を、LANケーブルを使って直接ネットワークに接続できるようになった。

さらに、従来は、コントロール系はトランシーバーのREMOTE(CI-V)ジャックからレベルコンバーターを経由して(もしくはRS-232Cポートから)、サーバーPCのRS-232ポートに接続し、音声系はトランシーバーのアクセサリージャックから、サーバーPCのAF入/出力ジャック(もしくは外付けUSB音源など)にそれぞれ接続する必要があったものを、LANケーブル1本でスッキリまとめることができるようになった。配線が少なくなったことで、接触不良などのトラブルが発生する可能性は当然低下する。

また、ネットワークへの接続にサーバーPCを経由させないことで、操作コマンドに対するレスポンスが向上した。そのため、クライアントPCで、実際にRS-BA1の周波数を変化させてから、リモート先のトランシーバーの周波数が変化するまでのタイムラグが改善され、RC-28(リモートエンコーダー)を使用すると、(従来の接続方法と比べて)、実機のダイヤルを回している感触により近くなった。これは、真っ先に実感できる。


リモートエンコーダーRC-28

さらに、従来は、クライアント側からRS-BA1のコマンドによって、リモート先のトランシーバーの電源のオン/オフが直接できなかったため、送信所側で別途ACの供給をオン/オフさせる仕掛けを構築する必要があったのに対し、今回のバージョンアップにより、RS-BA1のコマンドよってトランシーバーの電源を直接オン/オフさせることが可能になった。これによって、別立てのACライン遠隔操作の装置が不要になった。

また、Ver.1.6ではネットワークの遅延によって生じる「音切れ」が改善されている。従来は、遅延が概ね30msを越えると、「音切れ」が発生することがあり、受信中ならまだしも、送信中に発生した場合、交信相手から、「変調が途切れる」と指摘された事を経験したユーザーもいると思う。しかし、今回のバージョンアップによって、従来より音切れしにくくなっている。RS-BA1が取り扱う音質に関しては元々定評があるので、音が途切れにくくなったメリットは大きい。

さらに、Ver.1.6では変調音の音声遅延も同時に改善されており、クライアントPCに入力した音声がリモート先のトランシーバーから実際に発射されるまでのタイムラグが短くなって、より自然なオペレーションに近づいている。

RS-BA1のバージョンアップ

RS-BA1のアップグレードは、至って簡単である。まずは、すでにRS-BA1がインストールしてあるパソコンから、アイコム(株)のホームページ内にあるユーザーサポートページにあるフォームウェア/ドライバダウンロードのページにアクセスして、Ver1.60をダウンロードする。

ダウンロードしたファイル(Rsba1_up_ver160.exe)は圧縮されているが、ダブルクリックすると「Rsba1_up_ver160」というフォルダに、アップグレード用の実行ファイル「Update.exe」と、「Recover_Setup_Rsba1.reg」※が生成される。このうち「Update.exe」を再度ダブルクリックすると、あとは、自動的に旧バージョンをインストールしたフォルダに自動的にインストールされる。設定ファイルは、以前のものがそのまま使用されるので、ネットワーク関係やパスワードなどの設定を再度行う必要はない。
※こちらのファイルは、レジストリを元に戻すためのものなので、今回は使用しない。

(今回、新たにRS-BA1を購入した場合は、付属の取扱説明書に従ってインストールしてください)

トランシーバーのバージョンアップ

操作するトランシーバー(IC-7800/IC-7700)側のファームフェアも併せてバージョンアップしないと、RA-BA1は最大限のパフォーマンスは発揮できないので、RS-BA1をバージョンアップしたら、必ずトランシーバーもバージョンアップする。

トランシーバーのバージョンアップについても、まずは、上と同じページから、最新版のファームウェアをダウンロードする。(2014年4月1日現在で、IC-7800はVer.3.01、IC-7700はVer.2.00) ダウンロードしたファイルは圧縮されているので、これをダブルクリックすると、ファームデータのファイル(7800_301.dat または7700_200.dat)が生成される。


ダウンロードした圧縮ファイル これをダブルクリックすると自動解凍し、ファームデータ(7800_301.dat)が生成される

トランシーバーのバージョンアップは、外部メモリー(CFカード/USBメモリー)を使って行う方法と、LAN経由で行う方法の2通りがあるので、取扱説明書を参照しながら、好みの方法でバージョンアップを行う。万一ファームアップの途中で電源が落ちると、状況によってはユーザーによるリカバリーが不可能となりメーカー送りとなるので、細心の注意を払って行うこと。

トランシーバーのバージョンアップが完了したら、電源投入直後、LCDの右下部分にVer.3.01(IC-7800)、もしくはVer.2.00(IC-7700)と一瞬表示される※ので、完了を確認する。万一、Ver.番号が若いままだと、バージョンアップが完了していないことになる。
※オープニング表示をセットモードで意図的にOFFに設定している場合は表示されないので注意

リモート側(送信所側)の接続と設定変更

まずは、従来サーバーPCを経由して、トランシーバーをルーター(もしくはネットワークハブ)に接続していた結線を、トランシーバー背面のETHERNETコネクタから直接、LANケーブルを用いて、ルーター(もしくはネットワークハブ)に接続する結線に変更する。

この際、従来接続していた、RS-232ケーブル(もしくはCI-Vケーブル+レベルコンバーター)、ACCケーブルは不要になるので、リモート用途以外でこれらが必要な場合を除き、撤去する。

結線変更が完了したら、トランシーバー本体の設定を行う。この設定の多くは、従来サーバーPCにインストールしたRS-BA1に行っていた設定を、直接トランシーバーに行うもので、下記の例はIC-7800で説明するが、IC-7700でも内容は同じとなる。

セットモードに入り、OTHER SETを選ぶ。

・Shutdown Function: Standy/Shutdownを選択
・IP Address: 割り当て可能なIPアドレスを設定 (例: 192.168.0.10)
必要に応じてルーター側の静的IPマスカレード設定も変更
・Subnet Mask: ネットワークのサブネットマスクを設定 (普通は初期設定の255.255.255.0でOK)
・Default Gateway: ルーターのLAN側IPアドレスを設定 (例: 192.168.0.1)
・Network Control: ONを選択
・Control Port (UDP): 50001 (初期設定のままでOK)
・Serial Port (UDP): 50002 (初期設定のままでOK)
・Audio Port (UDP): 50003 (初期設定のままでOK)
・Internet Access Line: 使用するネットワークに合わせて設定 (例: FTTH)
・Network User1 ID: 最大16文字の任意の文字列(例: ICOM)
・Network User1 Password: 8文字以上16文字以下の任意の文字列 (例: hiranokukami)
・Network User1 Administrator: Yesを選択
なお、Network Userは必要に応じて最大3人(User1~User3)まで設定できます。
・Network Radio Name: IC-7800 (初期設定のままでOK、必要に応じて変更)

クライアント側(遠隔操作所側)のRemote Utilityの設定変更

次に、クライアントPCのバージョンアップしたRS-BA1 Remote Utility (ver1.60)の設定を変更する。これは従来行っていたサーバーPCにインストールしたRS-BA1 Remote Utilityに接続するための設定を、IC-7800に直接接続するための設定に変更するものである。

無線機運用メニューからサーバー一覧画面を表示させ、従来使用していたサーバー(送信所側のパソコン)を選択し、一番下の「プロパティ」をクリックする。サーバー登録ウインドウが表示されたら下記の項目を設定する。
(サーバーの説明やサーバーのアドレスを変更しない場合などで、以前の設定から変更する項目がない場合は、内容確認後OKボタンをクリック)

・サーバーの説明: 任意の文字列 (例: IC-7800 direct)
・サーバーのアドレスまたはコンピューター名:  リモート側(送信所側)ルーターのWAN側のIPアドレス(またはドメイン名) (例: 220.xxx.xxx.103)
ただし、LAN内でのリモートの場合は、IC-7800に割り当てたIPアドレス (例: 192.168.0.10)
・コマンドポート: 50001 (初期設定のままでOK)
・ユーザーID: IC-7800に設定した文字列 (例: ICOM)
・パスワード: IC-7800に設定した文字列 (例: hiranokukami)
上記の設定が完了したら「OK」をクリックし、サーバー一覧画面で「接続」をクリック

「無線機一覧」タブをクリックし無線機一覧画面を選択すると、リモート先のIC-7800 (IC-7800 direct)が見えますので、「接続設定」ウインドウを開き、ここではまず右側真ん中あたりにある「お勧め設定」ボタンをクリックする。

ネットワークの環境(LAN、インターネット)を選択し「次へ」をクリックすると、下の確認画像が表示されるので、「はい」をクリックする。

(参考) RS-BA1 Ver1.60と、IC-7800 Ver3.01/IC-7700 Ver2.00の組み合わせでは、「お勧め設定」ボタンのクリックで、受信音のプリバッファ値が従来より小さな値(インターネット経由の場合は200msec→120msec)となり、高パフォーマンスが設定される。

その後、仮想COMポート番号などを設定した後、「接続」をクリックすると、リモート先のIC-7800に接続できます。
(参考) この状態では、(リモート先のIC-7800の電源が入っていな場合)、従来のように受信インジケーターは振れ上がらない。

クライアント側(遠隔操作所側)のRemote Controlの設定変更

Remote Controlを立ち上げた後、電源を入れる前に、まずは(IC-7800の新ファームに対応させるための)接続の設定変更を行う必要がある。

オプション→接続設定と進み、接続設定ウインドウを開き、下記の設定を行う。

・モデル: IC-7800 (Ver3.00-)を選択
・無線機のLAN端子を使用する: チェックを入れる。
・Remote Utility: IC-7800を選択
・COMポート: 設定した仮想COMポート番号を選択
・プログラム終了時に無線機の電源を切る: チェックを入れる。
以上で設定変更は完了。

リモート運用

Remote Controlの電源を入れる(左上の電源ボタンをクリックする)と、自動的にリモート先のIC-7800の電源が入り、完全にIC-7800が立ち上がると、周波数やモードがRemote Control上に反映される。もし、遠隔操作所側のIC-7800をネットワークカメラなどで見ることができる場合、電源ボタンと連動して、IC-7800の電源が入り切りする状態が確認できる。

Remote Controlの操作に関しては、従来と全く同様だ。各種操作は、従来のサーバーPC経由で無線機をコントロールした時と比べ、スムーズに実機が追従してくる。特にオプションのリモートエンコーダーRC-28を使用した場合、同調操作のレスポンスが向上したことがはっきり実感できると思う。さらにVer1.60では音切れ対策が講じられているので、ネットワークの遅延が原因で音切れ(瞬断)することが、以前と比べると少なくなっていることが分かると思う。

バージョンアップ後、初めて送信操作に入る前に、変調の入力レベルを再設定する必要がある。これは従来のACC経由での変調入力とはレベルが若干異なるからだ。

Remote Control画面左下から2番目にある「MIC SET」をクリックすると、MIC SETウインドウが開く。このとき、MOD Selectに「LAN」が選ばれていることを確認する。
(参考) このMOD Selectの「LAN」は、トランシーバー側のセットモードで「LAN」が選択されていなくても、RS-BA1を電源オンにした状態で、自動的にLANに設定される。(RS-BA1の電源をオフにすると、トランシーバー側は元の選択に戻る)

このMIC SETウインドウを開いた状態で「TRANSMIT」スイッチをクリックしてトランシーバーを送信状態にし、実際にマイクに向かって変調をかけながら、MOD LEVELツマミで適切なレベルに合わせる。後は、従来どおり、リモート運用をお楽しみください。

最後に

今回もし、以前からの設定変更(RS-BA1のバージョンアップ)ではなく、新たにリモート無線局の構築を行う場合は、まずは、自宅のLAN内で、完全な動作確認を行った後、インターネット経由でのリモート操作に移行されることをお勧めする。一からの構築については本WEBマガジン2013年5月号を参照されたい。

今回は、IC-7800を例にして説明したが、IC-7700でも同様となる。なお、RS-BA1 Ver1.60は、音切れの改善がされているため、操作する無線機がIC-7800/IC-7700以外の場合でも効果があるので、ぜひRS-BA1のバージョンアップを行うことをお勧めする。

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