2014年4月号

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連載記事

楽しいエレクトロニクス工作

JA3FMP 櫻井紀佳

第11回 周波数カウンターの製作 4

まず最初にお詫びと前回の訂正をさせていただきます。

1. カウンター入力

前回、とんだ勘違いでカウント部の入力を一番上の桁から入力していました。これでは一番上の桁がHzの表示になってしまいます。カウンターで一番いそがしい桁は実は一番下の桁であることを忘れていました。次のようにお詫びして訂正させていただきます。50MHzまでカウントするための74AC390は最下桁側にすることを忘れないでください。


(クリックで拡大します)

2. データラッチ

上位の表示が0の時、表示を消す回路を前回追加しましたが、少し間抜けなことになっていました。ラッチしたデータで上位の0を消せば良いのですが、その出力端子がないのでカウンターの出力でラッチする前の0を検出して動作するようになっていました。ラッチした後、すぐにカウンターを0にクリヤーしますので0になれば表示が消えるため、表示とブランクを交互に繰り返すことになっていました。上位の0を消すためだけの回路が大げさになってしまいましたが、この0検出の信号もラッチするようIC37 74HC574を追加しました。このICはD-FFでカウンターのデータをラッチするストローブ信号を反転してCLKに入力し、ブランク信号としてラッチします。もし上位桁が0表示でも構わなければこれらの回路全体が不要です。


(クリックで拡大します)

訂正は以上ですが最終的な回路図は次のようになりました。説明が抜けていましたが、電源部のC32~C37のコンデンサーは、実際にはICの要所要所の電源とアースの間に入れて電源のインピーダンスを下げる働きをします。


最終的な回路図 (クリックで拡大します)

これで回路の説明は終わりましたので組立をしていきます。まずプリント基板の組立をし、その後ケースに入れるように工作します。

4.1 プリント基板の組立

プリント基板に部品をハンダ付けしていきましょう。今回のプリント基板は115mm x 160mmのものを使いました。また基準発振部は後で取り替える可能性があるので別基板にして取り付けます。ICへの配線は0.2mmのポリウレタン線を使うことにしました。ポリウレタン線はハンダゴテの温度で被覆が溶けるので配線がやりやすくなります。


配線の例

この周波数カウンターの中で信号入力部の周波数が一番高く、それに続くインバーターのアンプと最初のゲート回路から初段のカウンターまでが特に高周波特性の注意が必要です。具体的には信号の配線はできるだけ短く、アースは直線で1点アースとなるよう考える、バイパスコンデンサーは信号が帰る場所を考えて配線する等です。

カウンター部分は初段の入力が50MHzでも1/10されるので出力は5MHzで、次は500kHzと急激に周波数が下がります。周波数が下がれば配線などあまり気を遣わなくても正常に動作すると思います。

このプリント基板の部品の配置は下の写真のようになりました。上位桁0表示の変更をしましたので、その回路のICが増えて少しランダムに入り込み見苦しくなりました。プリント基板へのICの配置をよく考えて取り付けて下さい。

今回使ったプリント基板は横に穴が40個あいたものですが、LEDの抵抗は45個必要で横一列に入り切りませんので5個だけ別の場所になりました。

電源部は前回説明したように放熱が少し心配だったのでICの下に銅板で熱を取りだし、後面パネルのアルミ板を利用した放熱器に伝えるようにしました。後面パネルのアルミ板で放熱が十分かどうかは最終的に動作させてチェックする必要があります。今までの経験では熱の高い部分があると故障率が上がります。手で押さえて我慢できない程の熱があれば下げる努力をした方がベターです。

基準発振部は18mm x 68mmの基板に水晶発振器、1/4分周の74AC74と、1/10分周の74AC390を取り付けます。74AC390は半分しか使いませんので半分は残っていることになります。


基準発振部のプリント基板

このように別基板にしておくと別の発振器が見つかった時、取り替えやすくなります。希望としては20MHzまたは10MHzのもので温度特性も経年変化も1ppm以下のものがあれば良いので、気をつけてネット等で探すことにします。

表示部のLEDの部分は図のように別基板にしましたので、リード線がたくさん出ることになります。1本ずつ配線すると大変なのでフラットケーブルを加工して取り付けました。この配線は本体のプリント基板にハンダ付けしないといけませんが、最初からついていると邪魔になるので本体側のハンダ付けを確認した後に取り付けます。


表示部LED表                      表示部LED裏

プリント基板の配線が終わると配線チェックをしていきます。まず、電源とアースです。電源とアースがショートしていないかチェックしますが、意外にこのショートが多いものです。また全てのICの電源端子とアースを1つずつ確認します。次に配線図を見ながら接続点をテスターで確認し、OKならマーカーで塗りつぶし全ての配線を確認して下さい。

4.2 ケース加工

今回は部品屋さんで丁度いい大きさのケースを見つけてきました。外形が幅154mm x 奥行175mm x 高さ52mmのもので次の写真のようなものです。同じものが手に入らないかも知れませんが参考にして同様に加工して下さい。


購入したケースと内部構造

前と後のパネルの大きさは同じもので、必要な穴をあけて加工します。穴あけの必要な部分は、まずLED表示で、できるだけ格好良く四角の穴をあけます。四角の穴は加工しにくいのですが、切り抜く四角の内側にドリルで穴をあけて糸鋸で切っていきます。

最近はホームセンターで360度どの方向にでも切れる歯のついた、下の写真のような糸鋸セットを売っているのでこれが利用できます。鋸で切るのは必要な寸法の少しだけ内側にして後はヤスリできれいに仕上げます。

次に前面部には信号入力の同軸コネクターの穴、電源スイッチの取付穴、MHzとkHzの切替スイッチの穴等が必要です。前面に無駄な穴や留めネジが見えると格好悪いので、それを防ぐためLEDの取付部分はアクリル板を使ってボンドで貼り付けました。


前面部の加工

後面は電源コネクター、基準信号のI/O切替スイッチ、基準信号のI/Oコネクターの穴が必要です。上でも少し書きましたが、もし外部からより確度の高い基準信号がもらえる場合に備え、それが利用できるようスイッチとコネクターをつけました。


後面の加工

また内部の基準発振器を使っている時には、この1MHzの信号を外に出して利用できるように考えました。


基準信号切替

穴あけができればスイッチ等の配線をしますが、配線する部分は簡単なので難しくないと思います。加工が全部終わればテプラ等を使って文字を貼り付けます。今回は黒いパネルなので透明地に白色文字にしました。

4.3 電源の投入と動作チェック

9V~12V位の電源を用意して電源プラグに繋ぎ、電源スイッチを入れます。あらかじめ回路のチェックはしてあるので、いきなり煙がでるようなことはないと思います。私の試作品では正常に立ち上がりました。

電源は写真のような12Vの電源があまっていましたのでそれを使いました。消費電流は点灯しているLEDのエレメントの数に依存しますが400mA~500mA程度で、心配していた後面への放熱も十分大丈夫のようです。

動作させてみて気になった所は、信号増幅部のCMOSゲートのアンプの動作点が電源の中点位で、後のシュミット回路の出力がLかHか不安定で、動作的にはここがLになって欲しいので少しバイアスをかけることにしました。電源から100kΩを接続しこれでシュミット回路の出力は信号のない時Lになります。入力側のC3はどちら側が+になるか分からないので極性のないバイポーラ型に変更しました。

また、信号増幅部のゲインが結構あり、後面のスイッチへの配線が近付くとそれが信号となって1MHzを表示しましたので配線の分離には気をつけてください。

たまたまトランジスタ技術のDDSキットを持っていたので、これを信号源にして信号を入れてみました。意外にすんなりとカウントしてくれました。特に問題なく使えると思われます。

今回、色々手間取ったのはカウント本来の部分ではなく、上位の不要な0を表示させない部分だったように感じます。次回は周波数カウンターの最終回として、このカウンターの周波数上限を超えるプリスケーラーを考えてみたいと思います。

■周波数の確度と安定度
周波数カウンターの確度と安定度は、基準発振器にかかっています。今回使用した市販の発振器の確度は先に書いたように常温では1ppm程度の良好なものでしたが、温度特性は測っていません。測定した周波数の信頼性をあげるためにはもう少し向上したいものです。確度と安定度の良い発振器や周波数標準はどのようなものがあるのか調べてみました。

・水晶発振器
この周波数カウンターの第1回にも書いたとおり、裸の水晶発振子では1ppmが困難ですが、発信回路として温度補償したり、一定温度になる恒温曹に入れたりして温度補償しています。水晶発振器で温度補償した一番良いものは1x10-9程度です。

・標準電波(JJY)
昔は短波帯の5MHz、10MHz等で標準電波が送信されていましたが、伝播の関係で1 x 10-6 (1ppm)以上の確度が難しく、現在では電波時計でよく知られている長波帯の40kHz、60kHzの電波が送信されています。この電波はLF帯のため伝播による影響は少なく元の周波数確度は原子標準を使った±1 x 10-12となっています。


おおたかどや山40kHzと、はがね山60kHzの送信所 (NICT資料より)

・原子標準(原子時計)
原子標準は一般的には原子時計といわれ、セシウム原子時計は、「セシウム133の原子の基底状態の二つの超微細準位の間の遷移に対応する放射の周期」と定義されていますが、物理に弱い私には詳しく分かりません。周波数は9、192、631、770Hzなので9GHz帯でこの方式の周波数標準機としてSymmetricom社の5071Aという測定器が有名でHP社でも作っていたようです。周波数確度は1 x 10-12で、出力は50Ω、基準周波数は100kHz、1MHz、5MHz、10MHzが取り出せますが、価格が一千万円位するため、趣味で買う訳にはいかないと思います。


5071A

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