2015年12月号

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連載記事

日本全国・移動運用記

JO2ASQ 清水祐樹

第3回 雪の上で移動運用

これからの季節、雪の上で移動運用する機会があります。筆者は年に数回しか雪が降らない地域に住んでいるため、移動運用を始めるまでは雪道で車を運転する機会すら数えるほどしかありませんでした。しかし、移動運用を始めると、特定のバンド・モードでどうしても交信したいというリクエストを頂くことがあり、冬の豪雪地帯にも出かけていくようになりました。

今回は、そういった雪の上での移動運用と、快適に運用できるようになるまでの苦労の様子を紹介します。

雪の上でアンテナを展開するコツ

雪の上でアンテナを展開する場合、主に注意することは次の2つです。
1) 雪の上に物を直接置くと、紛失することがある
2) 撤収時に凍結・硬化して収納できない場合がある

前者の紛失対策としては、車の近くで除雪するなどして「この範囲に置いた物は必ず回収する」スペースを作り、その中でアンテナの部品を全部つないだ状態(バラバラにならない)にしてからアンテナ設置作業を始めるようにしています。

後者の凍結対策としては、凍りついて収納できなくなった伸縮ポールやアンテナのエレメントは、ガスバーナーで加熱して溶かすと最も早いです。伸縮ポールをタイヤベースから外して移動できる状態であれば、エンジンルームや車内のエアコンで加熱することも可能ですが、伸縮ポールの先端にアンテナが固定された状態では、そこまで移動させることが困難です。

実例1 雪が積もる中、1日中運用(岩手県滝沢市)

2014年1月1日に、岩手県岩手郡滝沢村が滝沢市へ市制施行になり、新しいJCCが増えるということで、筆者も移動運用を行いました。1月1日0時になった瞬間、滝沢市と交信するために3.5MHzで大パイルが始まり、そこから各バンドでパイルが続きました。

滝沢市は雪が比較的多い地域とは聞いていましたが、12月31日の設営時には雪は積もっておらず、特に雪対策は行わないで、通常の設備で各バンドのアンテナを展開しました。1月1日になって大粒の雪が降り始め、夜になって本格的な積雪となり、運用場所から脱出できなくなる可能性も出てきました。設営した場所は河川敷で、路面が軟弱な場所もあり、道路が凍結すると坂道を登れなくなるなどの可能性がありました。

夜間の運用でパイルが小さくなったタイミングを見計らって、撤収を始めました。まず、50MHzの八木アンテナを分解しようとするものの、アンテナに素手で触ると凍り付く感触があり、さらに、エレメントの差し込み部分が凍結して分解できなくなりました(図1)。ロープは途中に「つらら」ができた状態で凍っており、折り曲げが困難な状態になっていました。エレメントとロープは、エンジンルームの余熱で溶かして収納することができました。

続いて、逆V型アンテナに使っている伸縮ポールが凍ってしまい、縮めることができなくなりました。そこでガスバーナーで加熱して溶かすことで、収納することができました。


図1 凍り付いたアンテナ

実例2:真冬の北海道

真冬の北海道で、気温-10℃以下での運用の経験があります。飛行機で移動し、現地でレンタカーを借りました。このような寒冷地での移動自体が、筆者にとって初めての経験で、防寒対策の多くは現地調達となりました。

気温-10℃以下の運用では、次のような現象を経験しました(図2)。
・地面がツルツルに凍結した場所では、地面に置いた物が滑っていく。
・同軸ケーブルがカチカチに固まり、思うように曲げられない
・車内で食べ物が凍る
・寒さのあまり、屋外で作業した直後はPCのキーボードが打てない。パドルは何とか打てる。
・気温が低いと粘着テープが付きにくい。気温の高い場所で貼り付けたものは、そのまま使える。
・雪に砂などが含まれていることがあり、それがコネクタに付着すると接触不良が発生する
・電池の性能が低下して、使えない機器がある

幸い、この時はアンテナが凍結して撤収できなくなることはありませんでした。気温が非常に低い場所では、いわゆる「乾いた雪」になり、アンテナ等に雪が付着することが少なくなります。逆に困るのは、アンテナ等が雨や雪で濡れた状態から凍ってしまうことです。

なお、寒冷地での移動運用に大活躍するガスバーナーに使うボンベは、宅配便で発送できないことがあるため、バーナー本体だけを発送してボンベを現地調達するなどの対策が必要となります。


図2 気温-10℃以下での運用の例、三脚アンテナが凍結した地面の上を滑ってしまい、同軸ケーブルも固くなっているため、固定に苦労した。

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