2016年2月号
連載記事
日本全国・移動運用記
JO2ASQ 清水祐樹
第5回 種子島移動
2015年12月27~30日に、筆者は鹿児島県の種子島で移動運用を行いました。種子島には西之表市、熊毛郡中種子町、熊毛郡南種子町があります。3市町の全てで運用するため、種子島には3泊4日で滞在しました。電波伝搬のコンディションは決して良くなかったものの、多くの局から呼ばれ続け、パイルアップを楽しむことができました。
動機
ある方からサテライト(衛星通信)によるWACA(全市交信)で最後の1市が西之表市という話を聞きました。2015年の年末は曜日の並びが良く長期間の休みが取れること、温暖で天候による影響が少ないと想定されること、などの理由から、種子島での移動運用を計画しました。
離島とあって、どのバンドでも需要があるようです。JA3ART海老原さんが2008年に1.9MHzでWACAを達成された時も、最後は西之表市でした。
https://www.icom.co.jp/beacon/ham_life/ebihara/001745.html
交通手段
移動運用では、自分の車で乗り込むと荷物の制約が無く、運用が容易になります。一方で、港までは陸路で移動する必要がありますので、場合によっては長距離の運転となります。今回は愛知県から鹿児島まで、片道1,100kmを自力で走行した後、鹿児島で1泊し、鹿児島から種子島までフェリーで3時間半かけて移動しました。
宿泊
種子島は西之表の市街地に宿泊施設や飲食店があります。西之表市内のホテルを利用しました。
設備
アンテナは、1.9~50MHzまで全てダイポールアンテナを使用しました。1日最大2か所しか運用しないため、設置に多少の時間がかかっても、性能、使いやすさ、風雨への対応といった点でダイポールアンテナが最適と考えました。1.9MHzのアンテナは長くなりますが、種子島は広大な土地があり、設置場所は十分に確保できます。また、自分の車なので、アンテナを固定するための支柱やロープ類も十分に用意することができます。昼間は7~50MHzまでのアンテナを設置し、夜間のローバンド運用時にはアンテナを延長して1.9MHzまで対応しました。
電源は無線機専用の105Ahのバッテリーを使用し、走行中やアンテナ設置作業中(エンジンはアイドリングしておく)には車のバッテリーから大電流で充電(6A)、運用中は小電流で充電(2A)するシステムとしました(参考: FB NEWS 2013年12月号 12V鉛蓄電池用充電器 http://www.fbnews.jp/201312/rensai/jo2asq_idouunyou_benrigoods_09_01.html を、さらに大電流が出力できるよう改良したもの)。車のバッテリーの電圧をデジタル電圧計で常時監視しておき、11.7V以下になったらエンジンを起動させるようにしました。このシステムにより車のバッテリー上がりは皆無になりました。宿泊時には無線機用のバッテリーを満充電にします。
スケジュール
2015年の年末は12月28日(月)が仕事納めで休めない、という声が多く聞かれました。そのためリクエストが多かった西之表市は27日の日曜日に設定し、帰港前の30日にもう一度運用することにしました。
27日(日) 午後 西之表市
28日(月) 午前 西之表市/午後 中種子町
29日(火) 午前 中種子町/午後 南種子町
30日(水) 午前 西之表市
電波伝搬の特徴
種子島から本州までは距離が近く、伝搬的には九州本土で運用する場合とほぼ同じです。5エリアの何局かは強力だったので、海上伝搬の効果があるかもしれません。例えば沖縄では夜間に7MHzの国内が開けるのに対して、本州に近い種子島ではそのようなことはありません。夕方になると7MHzの近距離が徐々にスキップしていく様子が分かります。また、日によっては、夜遅い時間にローバンドで低緯度地方独特の強力なノイズが入ってきました。
運用の様子
運用は基本的に海岸や公園で行いました。また、本州方向に電波が飛びやすいように、できるだけ北東方向に障害物が無い場所を選びました。途中、強風の日もあったものの、雨が降ることは無く、天候には恵まれました。運用の様子を写真1に示します。
写真1: 運用場所の様子の一例
現地での体験談
1. 夜になると何も聞こえない、星空が美しい
夜間、周辺に人工物が無い場所では、月明かり以外は完全に真っ暗で、星空が美しく、周辺の騒音もほとんど聞こえなくなります。この状況下で動き回るのは結構不便なもので、例えば暗い中でアンテナを撤収するために数10m歩くと、今来た方向が分からなくこともあります。出歩くときには必ず懐中電灯を持ち歩き、真っ暗な中で車から離れる時は、車を見失わないよう、必ずライトを付けておきます。
2. 特徴のある植物
種子島でよく見かける樹木に(名前は存じ上げませんが)木の幹に上向きに無数の細かい突起があるものがあります。そこにロープを結びつけると、突起に引っかかってロープが滑り落ちないので、アンテナを設置するにはFBでした。
運用後
帰宅後には、すぐにQSLカードの請求が何件かありました。国内に限らず、海外のJCC、IOTAハンターからの請求、さらには、グリッドロケーターをQSLに記載して欲しいという要望もありました。特に海外のIOTA(Islands On The Air) アワードハンターはいつも非常に熱心で、離島移動で毎回のように交信していただける局もいます。