2016年7月号
連載記事
日本全国・移動運用記
JO2ASQ 清水祐樹
第10回 北海道で大移動【後編】
前回の続きで、ゴールデンウィークの北海道での移動運用を振り返ります。筆者の移動運用では、出来るだけ多くのバンドで交信することが目標なので、1.9~50MHzまでの10バンドの準備をして、電離層の状態を見極めながら素早くQSYすることで交信数を増やすスタイルです。しかし、日程の後半は電離層のコンディションが悪く、18MHz以上で国内局が聞こえる機会は少ないままでした。
帯広から北見方面へ、運用しながら移動
5月2日の朝に帯広を出発し、通過する各町で運用しながら北見方面に向かいました。2日の午前中はまずますのコンディションで、夕方から本格的なEスポが発生し、50MHzで2~3エリアが聞こえるようになりました。
通常、Eスポは日没とともに消滅することが多いのですが、この日は日没を過ぎてもEスポが継続しており、中川郡(十勝)池田町に移動して21時頃まで14~50MHzの各バンドで猛烈なパイルが続きました。各バンドを順番にQSYして上がっていき、高い周波数のバンドがスキップして聞こえなくなるまで連続運用しました。特に14MHzから18MHzにQSYした直後に呼ばれる局数が多く、18MHzで30分間に50局以上と交信できることもありました。夜はロングワイヤーアンテナを設置し、食事に行く時間も無い中で1.9MHzと3.5MHzを運用しました。
翌3日の午前中もEスポが発生し、各バンドともパイルが続きました。しかし午後からは一転して静かになり、14MHz以上のバンドは6エリアが時々聞こえる程度で、パイルとは縁遠くなってしまいました。コンディションが悪くても7MHzと10MHzはロケーションとアンテナが良ければ、それなりに呼ばれるので、移動のスケジュールや休養を考えながら多くの局と交信できるように心掛けました。
4日の午後は常呂郡置戸町で運用しました。この町は移動運用する局が少ないようで、多くの方からリクエストを頂いていました。堤防上の空きスペースに駐車し、ワイヤーアンテナを設置しての運用です(図1)。夕方、農家の方が通りかかり「何をしているの?」と声を掛けられました。無線で交信しています、と話してもなかなか理解してもらえず。「車が停まっていてずっと動かないから、釣りに行って川に流されたか、熊に喰われたかと思ったよ…。」と。
図1 置戸町での運用の様子。写真では平地のように見えるものの、実際は高い堤防の上で、スペースはかなり広い。
上川郡(上川)での運用
JCG01023の上川郡(上川)は11の町から構成されており、全部の町との交信を狙っている局もおられます。北海道ということで当然ながら1つの町が非常に広く、全部の町で移動運用するには大変な時間を要します。ただ、JCG、AJAのアワードとしてはどの町で運用しても1ポイントにしかならず、町村レベルで交信を狙っている一部の局を対象とした移動運用となるため、他のリクエスト(JCC、DX、グリッドロケーター等)と上手に調整する必要があります。
今回はそのうちの4つの町、剣淵町、和寒町、比布町、鷹栖町で運用しました。この付近は住宅地がいくらか見受けられ、見渡す限りの農地が広がっているような場所は比較的少ないので、公園の駐車場や、河川敷など整備された場所で運用することにしました。
前半で見受けられたEスポの発生は無く、日中は10MHzと14MHzが国内交信に最も適している状態が続きました。早朝と夕方は7MHzの国内が強力に聞こえていました。旭川市という大都市に近いこともあり、食事などは十分に確保できました。
山間部での運用を狙って
今回の移動運用では、上砂川町、歌志内市といった山間部での運用にもチャレンジしてみました。本州側に山があり、広い場所が少ないので、運用場所の確保が難しくなります(図2)。
HFであれば周辺に少しくらいの山があっても電波は飛びますが、衛星通信(サテライト)では衛星の方向に障害物が無い場所が要求されます。衛星が飛んでくる方向が山と山の間になるよう、カーナビの方角表示と地図を照合しながら少しでも適した場所を探しました。
標高が高いということもあり、場所によってはアンテナの設置に苦労するほどの猛烈な強風となりました。車のドアを開けるだけでも両手でしっかり持って風圧に耐えながら全身の力で動かす、ドアを開けると落ち葉が渦を巻いて車内に飛んでくる、などといった状況でした。
Eスポの発生は相変わらず無く、7MHzから14MHzが運用の主体となりました。北海道の1.9MHzは場所によっては運用局が少なく、リクエストが多いため、他のバンドで一通りの交信が済んだら、極力1.9MHzを運用するようにしました。日によってはコンディションの変動が激しかったり、悪天候に伴う空電ノイズがあったりして、西日本との交信は例年にも増して困難でした。
図2 山間部での運用の様子(歌志内市)
今回の移動運用は、中盤を除いて天候に恵まれず、雨や雪、および猛烈な強風の中でアンテナを工夫して何とか運用した、という印象が強いです。そんな条件の中、1日で1,000QSOを超える日もあり、各局からの熱心なコールには感謝する次第です。