2016年1月号

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連載記事

海外運用の先駆者達 ~20世紀に海外でアマチュア無線を運用した日本人達~


JA3AER 荒川泰蔵

その34 日本人による海外運用の記録をCQ誌に連載開始 1985年 (7)

日本人による海外運用の記録をCQ誌に連載開始

CQ誌での『日本人による海外アマチュア無線局運用の記録』は、1985年8月号のGから始まり1999年1月号のHLまで、足掛け15年間わたる153回の連載であった。その最初に「『日本人による海外アマチュア無線局運用の記録』連載にあたって・・・」と題して、次のような動機と読者への依頼文を掲載した(写真1)


写真1. CQ誌1985年8月号に掲載された「日本人による海外アマチュア無線局の記録」の最初の記事。(クリックで拡大します)

「私が初めて海外で運用したのは1967年の秋、香港(VS6)でしたが、その後1969年までにタイ(HS)、シンガポール(9V1)、マレーシア(9M2)、マカオ(CR9)それにパキスタン(AP2)と6カントリーで運用して、機会あるごとに相互運用協定と包括免許、それに第三者通信を私なりに訴えてきました。

原JARL会長をはじめ関係者の努力により、1981年に法律の改正が行われ相互運用協定の実現に一歩踏み出したかに思えましたが、具体的な交渉段階に入るといろいろ難しい問題があるらしく、いまだどの国とも協定が結ばれていないのが現状です。(筆者注:1985年8月に米国と締結)

現在日本ではアメリカ人やドイツ人など、一部の外国人にクラブ局の運用を認めてはいるものの、日本人による海外での運用に比較すると比べ物になりません。海外運用経験者は1,000人、いやそれ以上にのぼり、運用地も100カントリーは超えていると思います。これらの国々は自国民が日本で運用できないのを承知で、日本人に免許や許可を与えてくれているのです。これはその国の人々の日本人に対する好意にほかならないのですが、運用していても肩身が狭い気がします。

しかし、一方これらの好意をあてにすることができぬ国もあり、日本人であるがゆえに免許を与えられぬ例も少なくはありません。ブラジルやフランスなどがその好例ですが、日本に住む外国人とともに、ここに住む日本人はアマチュア無線の趣味を捨てねばならないのでしょうか。一日も早い相互運用協定が望まれるゆえんです。(筆者注:1年後にフランスでの運用を知った)

このたび、相互運用協定のない現在、または現在までに、どの程度の日本人が海外で運用してきたか、またはしているかを調査しながらこれらの記録を、逐次「JANET NEWS」の延長として連載していただくことにしました。運用経験者からレポートをいただきながらプリフィックスごとに、根気よく継続してゆくつもりです。

これは一つの歴史の記録であり、あとに残るものとの理解から、原則として運用経験者からのレポートを掲載しますが、周辺の方々からの情報も信頼のおけるものは採用することにしました。この連載が、わが国の相互運用協定を促進し、合わせて今後海外で運用を希望される方々の参考になれば幸いですが、継続できるか否かは、海外運用経験者からのレポートいかんにかかっています。どうぞ少しの情報でも私宛にお寄せいただきますようお願いいたします。(1985年7月記)」

1985年 (英国 G1OKL, G0CEO, GW0ATM, G0/9V1WE, G0/KE6QX)

JI2MLN三田寺圀弘氏は、転勤先の英国で受験し、GW0ATMの免許を得て運用したとアンケートを寄せてくれた(写真2及び3)。「日本で半年毎に受験し、電話級、2級と進み、1級免許を受験しようとしたところで海外工場勤務となった。引越し荷物に無線機一式をつめて来たものの、日本 - 英国間にはまだ相互運用協定がなく、幸い同時期に免許条件から「英国々民であること」が削除されたため、現地の人達にまじって受験することにした。学科、実技(モールス送受信)ともに日本と同レベルであり、この点心配しなかったが、語学、特に専門用語の習得に苦しんだ。受験申し込みから受験までに約6ヶ月待たねばならなかったが、試験合格から開局までには約2週間しかかからず、この点日本と大きく違うところである。周囲の人たちの同意を得ないと新しい建造物が作れぬという法律があり、市街地では不細工なビームやタワーはほとんど建造不可能であるため、ベランダに取り付けた短縮ダイポールで主としてヨーロッパ内の交信を楽しんでいる。(1985年4月記)」


写真2. (左)GW0ATM三田寺圀弘氏と、(右)英国のモールス資格試験合格証明書。


写真3. GW0ATM三田寺圀弘氏の免許状。(クリックで拡大します)

JH1FNS太田政俊氏から、シンガポールの免許をベースにしたG0/9V1WEの免許についてレポートを頂いた(写真4及び5)。「当初G4/9V1WE (1985年2月27日発給)であったが、5月1日付けよりG0/9V1WEに変更される。(1985年5月記)」そしてまた別途、現地で受験して得られたG0CEOの免許についてもレポートを頂いた(写真6)。「日本電気(株)自動車電話技術指導で英国(ロンドン市内)に滞在する機会を得ました。5月中旬国試(RAE)で見事一発合格 。4月にモールスを合格していたので、RAEの合格通知待ちをしていたものです。先日申請したところ早速呼出符号G0CEOを通知されました。無線局の検査は一切ない包括免許で、その点は大変楽です。英国での日本人ハム免許合格者第2号になると思います。(1985年7月記)」

写真4. G0/9V1WE太田政俊氏のQSLカード2種、QTHが変わっている。


写真5. G0/9V1WE太田政俊氏の免許状。(クリックで拡大します)


写真6. G0CEO太田政俊氏のQSLカード

故JA1BUA(G4YHC)佐藤良介氏のXYL佐藤玲子氏は、英国で受験しG1OKLの免許を得たと、写真を添えてレポートしてくれた(写真7)。「主人G4YHCの指導により、1985年9月にG1OKLのコールサインで免許を取得しました。(1986年1月記)」


写真7. G1OKL佐藤玲子氏。

JG1GWL杉本賢治氏は、米国の免許をベースにしてG0/KE6QXを取得したとレポートしてくれた。「仕事で何回か行く可能性があり、外国人にも免許を出すように法規改正になったということなので、米国免許でG4YHC (JANETメンバー)の住所をお借りして書類申請しました。申請後4週間以内に免許が下りました。費用は£12 (約3,600円)で毎年更新可能です。残念ながらまだ運用の機会がありませんが、知人の局を使っての運用やHTを持って行って手軽に交信を楽しむことが出来ると思っています。(1985年5月記)」

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