2016年1月号

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JA5EEU 松本慶明さん

小学校に入学する前からすでに半田ごてを使っていたという高知市にお住まいの松本さん。小学生の頃はラジオやオーディオアンプの分解や修理を趣味にしており、中学生になると高知駅前まで出かけてはパーツ屋で部品を購入し、ますます電子工作にのめりこんでいった。その頃は初歩のラジオを愛読していたことで、アマチュア無線のことは知っていた。

高校に入学後、松本さんは無線部に入部した。そして1968年、高校1年の夏休みに電話級アマチュア無線技士のライセンスを取得した。松本さんは免許取得後から受信機と送信機の製作に着手し、2年がかりでようやく完成。1970年に開局申請を行い、高校3年の時にJA5EEUの免許を受領した。

開局時は7MHzや50MHzのAMにオンエアしたが、元々モノを作るのが好きなため、アマチュア無線に費やした時間の90%以上は自作の時間に充てた。オンエアするのは、自作品の成果を確かめるための運用が目的だったという。時代はAMからSSBへと変わっていき、大学時代にはSSBの受信機も作った。次は送信機の製作となったが、もう無線機を作る時代ではないと考えて送信機は市販品を購入した。そして送信機の代わりにリニアアンプを製作するようになった。その後松本さんは多くのHF用リニアアンプを製作したが、作ったリニアアンプで運用するよりも、リニアアンプを作っている時間の方がはるかに多かった。

大学を卒業後、松本さんは工業高校の電気科の教員となったが、その頃からマイコンが一般人にも手の届くところになり、松本さんもマイコンに興味を持った。マイコンに熱を入れだすとアマチュア無線のアクティビティは徐々に下がっていき、その後の約30年間は、車載機で細々と運用する程度だった。それでもその時代は松本さんの家族もアマチュア無線の免許を取得し、一家5人が全員ハムだったという。

2005年頃、庭の松の木が枯れたことがきっかけで、松の木のあったところにVUHFのGPアンテナを建てた。そしてSSTVに興味を持ったことから松本さんはHFを再開した。当時はデジタルSSTVが始まった頃で、コンピューターと無線の相性も良く、すぐに熱中した。その後松本さんは国内遠距離通信用に144MHz帯の9エレ八木2列スタックを建てた。

2010年6月、EMEに少し興味を持った松本さんは、144MHzのJT65モードで、出力50Wで試しに呼んでみたバレアレス諸島(スペイン)のEA6VQからなんと応答があった。アンテナは仰角0度固定のまま、まさかの出来事に松本さんは目を疑ったが、レポートも交換しQSOができてしまった。これをきっかけに松本さんはEME熱が一気にヒートアップした。すぐに出力500Wのリニアアンプを製作に取りかかり、完成後は変更申請を行って2011年9月に144MHz帯の500W免許を得た。その後今日に至るまで、松本さんはEMEに熱中している。

松本さんがEMEを始めてからおおよそ2年後、ある日を境に受信に問題が生じた。相手局の信号が良好に入感しなくなったのである。時間はかかったが原因を突き止めてみると、215MHzに非常に強力な業務局が居り、この局から抑圧を受けていたのである。さらに154MHzにも強力な業務局が居ることが解った。松本さんはさっそく、前述の2波を減衰させるトラップを備えたローパスフィルターを自作した。その結果、業務局からの抑圧をほぼ回避することができ、再びEMEの微弱信号が入感するようになった。その成果として2014年10月末現在で、80エンティティの400局以上とのQSOを達成している。


松本さんの現用のアンテナ群。
タワー上はHF用のVダイポール2本と、144MHz用の13エレ八木6本。


13エレ八木6本のうち4本は、偏波面を回転できるようしている。
残りの2本は垂直偏波の固定。

144MHzのリニアアンプは、メインで使用中の真空管(GU74B)式アンプの他にも、バックアップ用の真空管(GS35B)式アンプもある。さらに現在は2種類の半導体式アンプを製作中とのこと。1台はファイナルに2SK410を8本使用したもの、もう1台はBLF188XRを使用したものだ。「EMEは自分で作ったリニアアンプの動作確認を行うのに最適です、今後は430MHzや50MHzのアンプ作り/EMEにもトライしてみたいです」と話す。

一方で松本さんは、2年前に高知市周辺に在住のハム仲間と共に、「高知県アマチュア無線研究会」を発足。ものづくりの楽しみを広げることや、会員同士のネットワーク、また会員が持っているノウハウを共有することを目的として、通常時はメーリングリストで情報交換を行いながら、年に2、3回の割合で研修会を実施している。この研究会には40代~70代の幅広いメンバーが参加しているが、会長などの役職は定めておらず、興味があれば気軽に参加できるように門戸を開いている。

松本さんは、「EMEに出会ってなかったら、こんなにアマチュア無線熱が再燃することは無かったし、今頃はおそらく閉局していたと思います。できれば、もう少し早くEMEに出会いたかったです」、と話す。仕事の定年が近づく中、家族の同意も得て松本さんは59歳でリタイヤを決断した。目的はもちろんアマチュア無線に打ち込むためだったという。

今後の目標として「まずは144MHzで100エンティティとの交信を達成し、2mDXCCを受賞すること、もうひとつは、ものづくりの楽しみを伝承してアマチュア無線を活性化することです」、と松本さんは話す。2016年には海外からの初運用も計画しており、松本さんのアマチュア無線活動はアクティブに続いていく。

このコーナーでは、アマチュア無線の様々な楽しみ方に挑戦するハム(アマチュア無線家)を紹介します。
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