2016年2月号

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連載記事

海外運用の先駆者達 ~20世紀に海外でアマチュア無線を運用した日本人達~


JA3AER 荒川泰蔵

その35 多様な国々からQRV 1986年 (1)

多様な国々からQRV

今回から1986年の記録であるが、この連載も年を越したので、またもや30年前の出来事となる。前年の1985年は7回に分けねばならぬほど多くのレポートを紹介したが、1986年もまた多様な国々からの多くの運用レポートがあって3回以上続きそうである。この時期はソーラーサイクル21と22の谷間の時期であったと思うが、米国との相互運用協定締結の効果があってか海外運用のアクティビティは衰えを見せていない。

1986年 (中国 BT5UA, BY1PK, BY4AA、BY5RA)

故JH8MWL広本啓子氏は、ユニセフハムクラブの一員として中国を訪問、特別局BT5UAの運用の他、BY1PK. BY4AA, BY5RAのゲストオペをしたとレポートしてくれた(写真1~4)。「1986年8月のこと。ユニセフハムクラブ主催のペディションで、中国政府の招請電報によって出発したのですが、その招請電報のすばらしい威力、入国審査や税関のゲートもほかの人々と違いました。リグ、アンテナなどの機械の持ち込みにもクレームが幾度となくついたのですが、その度に招請電報を見せると、今までの態度が変わりスムーズに進めます。全く水戸黄門の印籠のようなものでした。滞在は全て国のお客ということで無料、いたれりつくせりのとても楽しい時を過ごすことができました。やはり中国らしく、連絡の不手際で、飛行機なら1時間で飛べる上海→福州の予約がなくて飛行機に乗れず、1,200kmの山道を車にゆられ33時間の旅となりました。日本なら24時間のスーパーやドライブインがありますが、中国では山また山の旅で、結局、飲まず食わずのハードスケジュールとなりましたが、中国の農村をくわしく知ることができ、あとになってはとてもよい想い出となりました。ユニセフハムクラブの特別局のコールはユニセフアソシエーションの頭文字からBT5UAと決定。BY5RAの姚知行氏らのお力添えのおかげです。中国の場合、アマチュア無線は教育・訓練のもので、日本のような完全なアマチュアとなっていません。私のように、せっかくの特別局、1局でも多くの局にサービスしていたいという気持ちと全く違うものです。24時間、できる限りサービスしたいと言うと、休む時間が必要とか、歓迎式典もあるとかで、なかなかシャックにいる時間が少なく、そのたびに意見がすれ違いました。でも何度も私は無線が大好きで、日本や世界の友人たちに、多くサービスしなければならないと言い続けましたので、少しはわかっていただいたのではないかと思います。現在、中国では新しい局が次々と開局していますが、とても素晴らしいことだと思います。(1987年4月記)」


写真1. ユニセフハムクラブの特別局BT5UAのQSLカード2種類(色違い)。

写真2. (左)特別局BT5UAにてJH8MWL広本啓子氏、左は英語の上手な林氏。
(右)福州のBY5QA局にてJH8MWL広本啓子氏。


写真3. (左)北京のBY1PK局にてJH8MWL広本啓子氏。(右)上海のBY4AA局にてJH8MWL広本啓子氏。


写真4. (左)万里の長城にてJH8MWL広本啓子氏(中央)。(右)万里の長城の写真をデザインしたJH8MWL広本啓子氏のQSLカード、左下にEX BT5UAとプリントされている。

1986年 (マカオ XX9WS)

JA1WSA(現:JJ3PRT)青木洋二氏は、マカオからXX9WSの免許を得て運用したと、レポートしてくれた(写真5)。「米国のライセンスを取って、これで免許を申請したところOKの返事がマカオの電波監理局より来た。1986年5月に現地で免許を申請して、正式にライセンスをもらった。友人のXX9WW, Joseの家よりオンエアーした。(1991年11月記)」


写真35. (左)XX9WSを運用中の青木洋二氏。(中)XX9WS青木洋二氏の免許状。 (右)XX9WSのQSLカード。

1986年 (マレーシア 9M2AC)

JO1JRW斎藤守氏は、マレーシアで9M2ACの免許取得の経験をレポートしてくれた。「1985年3月、仕事で9M2に赴任し、CQ ham radio誌を通じて9M2AX (JA6FBQ中田氏)、9M2BZ (JH1LKO鶴岡氏)と知り合い、9M2AP, Mr. Loke (テレコム勤務)を紹介してもらい、彼等の援助で翌年5月に申請しました。赴任前に9M2でのハム免許申請方法がわからず、一時はあきらめかけていましたが、リグはバッグに入れて持ち込みました。あとから9M2AXや9M2BZから、税関で見つかったら没収だったと聞いて驚きました。申請には、テレコム(通信庁)で入手した申請書(写真6の左)にJAの電監で作成した英文の従免、局免(50W移動局)証明、パスポートのコピー、2名による人物推薦書、裁判所での通信の秘密を守る宣誓書(写真6の右)、警察の前歴調査用紙(写真7の左)、リグのブロックダイヤグラム、アンテナのスケッチと M$10の郵便為替を添付して提出しました。写真は不要です。警察の調査に日数を要するため、免許まで8ヶ月くらいかかるとのことでしたが、私の場合約2ヶ月半後の7月23日付で免許され、落成検査は行われませんでした(写真7の右及び8)。9M2は包括免許でHFのリグで申請して1.8MHz - 2.5GHzまでを許可され、免許状の他に携帯に便利な小さなカード(JAの現在の従免のようなもの)が交付され、モービル、ポータブル運用に好都合です(写真9)。コールサインを持っている人はセカンドオペレーターとして、知人のシャックからQRVできます。仕事が忙しくてQRVする時間があまりとれませんが、9M2のアクティビティが低いので、パイルになることがあります。クアラルンプール在住の日本人ハムは現在4名おり、2m FMでよく連絡を取っています。クアラルンプールの北方約250kmのイポーという都市で9M2KY (JA8JRC)内山氏がQRVしており、ローカルのハム普及に努力されています(写真10)。9M2では外国人にハム免許の門戸を開放しており、スウェーデン人、アメリカ人も免許を得ています。しかし理由は不明ですが、日本人でも免許申請して許可されなかった例があります。(1987年4月記)」


写真6. (左)9M2AC斎藤守氏の免許申請書と、(右)通信の秘密を守る宣誓書。(クリックで拡大します)


写真7. (左)9M2AC斎藤守氏の警察による前歴調査書と、(右)免許状。(クリックで拡大します)


写真8. (左)9M2AC斎藤守氏のポータブル免許状と、(右)モービル免許状。(クリックで拡大します)


写真9. 9M2AC斎藤守氏の3種(固定局、ポータブル局、モービル局)の携帯用免許証明カードの裏表。


写真10. 左から9M2BZ, 9M2KY, 9M2AC, 9M2AX, 9M2XXの各氏。

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