2016年12月号
テクニカルコーナー
IC-7300で運用した南太平洋
JF2MBF 市野光信
JA2FJP(吉田)とJF2MBF(市野)が本年8月から10月に南太平洋諸国から行った無線運用について報告する。
リグの選定
自宅を離れて国内外で運用を行うとき、リグの選定は大変重要だ。なぜならその運用を楽しく、あるいはつまらなくさせる大きな要因となるからだ。今回のように外国、しかも遠隔地域から約2か月の運用ともなれば重量、サイズ、頑強さ、操作性、性能が気になるところだ。リグの故障は全ての終わりを意味する。
今回の運用を計画し始めた昨年秋ごろ、市場に流通していたリグの中で候補として挙げたリグはIC-7000、IC-7100、IC-7200だった。しかしその年のハムフェアでIC-7300が発表されていたので、IC-7300の発売とユーザー評価を待つことにした。
そして、本年になって市場投入されたIC-7300のユーザー評価と、別に候補に挙げたリグを検討した結果、重量は多少増えるが操作性、性能、そして新製品であることに大いに期待を託し、春ごろにそれぞれIC-7300を1台ずつ購入した。
無線運用
各地で160mから6mまでの運用を行った。サイクル24の終盤期ではあるが太陽の黒点数に大きく左右された。出発前には太陽黒点数がゼロを記録することがあり、運用期間中の平均太陽黒点数を15程度と見込み、コンディション予報サイトを利用して世界各方面に対してベストな運用時間と周波数帯を把握し目安にした。
VP6 ピトケアン島
見込みの太陽黒点数を上回ることがあり、ハイバンドでも欧州と交信することができた。日本との時差は17時間ある。皆さんが昼食をとり始める頃、現地では夕食の時間になる。日本とローバンドがオープンし始める頃は、現地では午前0時をまわっている。夜は冷え込み、持参した衣服ほぼ全てを重ね着し、、ブランケットをかぶりながらの運用であった。
宿泊したコテージとアンテナ
左からJA2FJP(VP6QQ)、VP6MW、JF2MBF(VP6JJ)
E51Q ラロトンガ、南クック諸島
外国人ハムによる運用が比較的多い同島ではあったが、コンディションに恵まれ交信数は1万を超えることができた。
24MHz CWで運用中
30m 2エレバーチカル
E6AC ニウエ
現地にハムは常駐していないが、外国人ハムによってときどき運用がある。人口は僅か約1,300。車を運転していると、すれ違う車の多くの運転者が手をあげて挨拶をしてくるフレンドリーな島だ。
ハイバンドのコンディションが悪く交信数が伸びなかったのが残念だが、広々した土地を利用して、思いのままにアンテナを張ることができたのは良かった。再び訪れて無線運用をしてみたい島だ。
宿泊先とアンテナ
T2J ツバル
過去に海に沈みゆく島として報道されたこともあるツバル。観光を産業にしていないことから、宿泊場所は限られている。今回の宿泊先は大変便利な所に位置していたが、近くに作られたグランドにある照明が点灯すると発生するノイズにより、日没以後の運用はほぼ絶望的になり失望した。その影響でローバンドの運用が思うようにできずストレスが溜まる滞在になった。
2台のIC-7300で同時に運用
埋め立てて作られたグランド、その奥にアンテナ
3D2GG フィージー
数日間の滞在であったのでハイバンドでリラックスしながら運用を行った。
約2か月弱に及ぶ運用の間、命とパスポートの次に大切なリグ、IC-7300は期待に応えてくれた。故障すること無く、交信数を積み上げてくれた。特に、表示部の視認性が良いこと、ツマミ類のタッチの良いこと、スプリット運用時の設定とダイアル操作性の良いことは、長時間に及ぶ運用でも疲労を軽減してくれた。
またRTTY運用時のTPF機能や、モードに応じて設定可能なFIL1、FIL2、FIL3の設定によって、パイルアップのハンドリングを楽しくしてくれた。そしていざという時にあると便利なアンテナチューナーを内蔵していることは安心材料だった。IC-7300を選択し購入してとても満足している。
他方、アンテナのデザインや運用場所選定では改善すべき点があった。それらを解決して、将来機会があれば再び挑戦してみたい。
運用(滞在)スケジュール | コールサイン | 交信数 |
8月25日~9月4日 | VP6J | 14,111 |
9月8日~9月20日 | E51Q | 10,472 |
9月20日~9月30日 | E6AC | 6,859 |
10月4日~10月11日 | T2J | 5,317 |
10月11日~10月14日 | 3D2GG | 817 |