2016年12月号
JR8VSE 佐々木敦さん
旭川市からコンテストにアクティブなJR8VSE佐々木さん。幼少の頃、機械いじりの好きな父から与えられるおもちゃは、いつも壊れたラジオや真空管等の部品ばかりで、ガラクタいじりがたまらなく好きだった。アマチュア無線との出会いは小学1年の時、高校生の兄が開局したことだった。兄が運用するのを傍で聞く度に自分もいつかは免許を取得してアマチュア無線を始めようと思った。ただし無線機は触らせてもらえなかったので、自分が免許を取るまでは自力でワッチする機会はなかった。
高校を卒業した兄が通信学校に進学のために家を離れると、自宅で無線を聞く機会が無くなってしまったが、時々兄から練習用のモールス符号が録音されたカセットテープが送られてきた。内容は全く分からなかったものの、そのリズムにものすごく刺激されアマチュア無線をやろうという熱はますます上がり 、小学高学年になると試験勉強を始めた。 そして小学6年の時に札幌で電話級の国家試験を受験して合格、その年1983年にJR8VSEを開局した。当時はハムの低年齢化が進んでいたとはいえ、両親がハムではなく、さらにハムである兄も家にいない状況の中、小学生が独力で試験をパスして開局した例は珍しい。
念願の開局を果たした佐々木さんは、144MHz FMで学校から帰ると盛んにCQを出して、VHFの電波が届く範囲で交信を楽しんだ。交信相手は大人だけでなく、周辺には他にも同年代で運用している局もおり、違う学校に通う友人もできてアマチュア無線に熱中した。開局当時は、JARLの存在を知らなかったため、手書きのQSLカードを全てダイレクトで交換していたという。
1984年になるとHF帯の中古10W機を入手して7MHz SSBの運用を始めた。アンテナには給電点が5m程度のフルサイズのワイヤーダイポールを使用したが、「ぜんぜん飛びませんでした」と佐々木さんは話す。強い局をコールすれば応答はあるが、自局のCQにはほとんど応答がなかった。それでも北海道以外の局と交信できるHF帯の運用は楽しかったという。翌1985年には電信級を取得しCWモードの運用を始めると7MHzの電波もそれなりに飛ぶようになった。さらに1986年にはローカル局から15mのパンザマストと21MHzの5エレ八木を譲り受けると、時には海外局ともQSOできるようになった。この頃から佐々木さんはコンテストにもときどき参加した。
1987年、高校1年の秋、佐々木さんは1アマを取得。HF帯の100W機と中古のリニアアンプを入手して変更申請を行い1988年に500W出力の免許を得た。アンテナは14MHzの4エレと、7MHzの短縮2エレをパンザマストに乗せ、電波が世界中に飛ぶようになった。自然の流れでDXCCを追いかけるようになったという。
増力後はコンテストに本格的に参加するようになり、高校2年だった1988年の全市全郡コンテストで初めて24時間フル運用を行った。このときは7MHz電信部門にエントリーし全国2位に入賞、その後各種コンテストに参加していった。90~92年は東京の専門学校で学んだため機器を手放してしまい一時的にアクティビティが下がったものの、専門学校を卒業して就職後は北海道勤務となり93年冬に再び機器を揃えてコンテストに復活する。ただし北海道とはいっても、勤務地は札幌市や北見市であり、実家からは通勤できなかったためコンテストの度に実家に通う運用を繰り返した。「以後、私はずっと通いコンテスターですよ」と佐々木さんは話す。
1997年の全市全郡コンテストにおいて佐々木さんは、メジャーコンテストのマルチバンド部門で初優勝を果たした。それをきっかけにその後は電信マルチバンド部門でたびたび優勝を果たしている。全市全郡コンテストでは、特に2006年から2013年の8年間で7度の優勝、さらにオールJAコンテストでも、2011年から2015年まで5連覇するなど、圧倒的に強さを誇っている。
佐々木さんはコンテストの面白さについて、一言で「仕事ではなく趣味でPDCA(Plan Do Check Action)を回すことです」と話す。コンテスト前に戦略プランを立てて、コンテストに挑む、コンテスト終了後はスコアと順位という数値による結果が出る。その数値を評価、分析してさらに上を目指すという具合である。また、「コンテストはハード(機器の整備、自作)とソフト(戦略、運用)の両面からアプローチでき、それらを融合させて総合的に高得点を目指すことが楽しいです」と話す。
佐々木さんが電信部門を好んで参加する理由は、「電話と比較して電信はコンテスト周波数帯が狭いためバンド内の状況把握が容易なことと、体力の消耗が少ないからです」。また、マルチバンドを好んで参加する理由は、「バンドごとに伝搬や参加者層をはじめさまざまな特色があります。それを体感でき、かつその特色を戦力に盛り込んで最適化することで得点アップにつなげられるところが楽しいと感じるためです」と説明する。
自称「通いコンテスター」である佐々木さんの悩みは、好きなときにいつでも運用できないことだ。現在、東京暮らしの佐々木さんは事前に計画したコンテストに参加するとき(1年に4~5回)のみ、旭川に帰省して運用している。
本年(2016年)、佐々木さんはシャックのある実家から少し離れたところにあるロケーションの良好な場所において新シャックの構築を始めた。自立タワーを3基立て、それぞれに複数のアンテナを設置した。コンテストではSO2R(Single Operator 2Radio)スタイルで運用するため、基本的にバンドごとにアンテナを用意した。無線機は1stがIC-7851、2ndがIC-775DX2、それにサブとしてIC-756PRO3を使用している。リニアアンプも備えて、HFは全バンド1kW出力となっている。
2016年はこのシャック整備のために足繁く帰省したが、秋になってある程度設備が整ったため、新シャックの初戦には全市全郡コンテストを選んだ。エントリーはいつもの電信オールバンドだった。「手応えはありましたが、結果発表まで不安もあります」、と話す。今後は、実家に上がっているアンテナの移設や、SDRの導入、またロギングソフトウェアの乗り換えなどを計画している。「今後はDXコンテストにも参加していきたいと思っています。もちろん体力が続く限りは、コンテストを続けるつもりです」と、佐々木さんはコンテストに対する熱い思いを話す。
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