2016年12月号
テクニカルコーナー
<D-STAR活用事例> 「愛知県・弥富市津波・地震防災訓練」― 愛知県弥富市/弥富防災ハムクラブ
★県と市が共催する防災訓練に、D-STARを活用した情報収集が組み込まれる
11月5日は国連が制定した「世界津波の日」。愛知県と同県弥富市は共催で、その翌日となる11月6日、南海トラフ巨大地震を想定した「愛知県・弥富市津波・地震防災訓練」を開催した。訓練は同市の木曽川グランドをメイン会場に、愛知県、弥富市、海部南部消防署、自衛隊、愛知県警など71団体の約2,000人が参加。また訓練プログラムにはアマチュア無線(D-STAR)を使った画像伝送による情報収集と伝達も組み入れられた。
「愛知県・弥富市津波・地震防災訓練」のメイン会場となった弥富市の木曽川グランド
訓練の実施項目にも「アマチュア無線による非常通信訓練」が組み込まれている(愛知県の訓練実施資料より)
★自治体の呼びかけで発足した、弥富防災ハムクラブ
愛知県西部に位置する弥富市は木曽川下流の干拓による「海抜ゼロメートル地帯」が広がる地域だ。過去にも伊勢湾台風や津波などで大きな災害に見舞われたことがあり、もし地震による津波や河川堤防が決壊した場合は、市内の広範囲が長期間にわたり冠水被害を受けると想定されている。
そのため市民の防災意識は高く、これまでにもさまざまな訓練と“災害への備え”が行われてきた。市の呼びかけで市内のアマチュア無線家57名(平成28年4月1日時点)が登録する「弥富防災ハムクラブ(JI2ZVP)」が組織されたのもその1つだ。現在は市役所内に社団局のシャックと430MHz帯のD-STARレピータ「JP2YHG(弥富430)」を開設。さらに市内5か所の公共施設には、いざという場合にハンディ機を接続してすぐ使える144/430MHz帯のアンテナを屋上に設置している。
弥富市の呼びかけで発足した「弥富防災ハムクラブ」(JI2ZVP)。今回の訓練では市内各所からの画像伝送などの重要な役割を果たした
今回の防災訓練は、南海トラフ地震によって同市で最大震度7の揺れを記録、気象庁が大津波警報を発表したという想定で、多数の車両や資機材、ヘリコプター、船舶などを使い、負傷者の救助や住民の避難訓練などを約3時間にわたって行われた。
「愛知県・弥富市津波・地震防災訓練」の実施マップ(愛知県の訓練実施資料より)
大津波警報が発令されたという想定で、木曽川グラウンドから総合社会教育センターまで住民の避難訓練も行われた
メイン会場の木曽川グラウンドには愛知県警、海部地方の五消防本部、陸上自衛隊など71機関が集結し、本番さながらの訓練を繰り広げた
被災した車両からの救出救助訓練
津波で流された被災者をボートで救出救助する訓練
地上部隊が救出した要救助者を県警ヘリにより医療機関へ搬送する訓練
この中でアマチュア無線を活用した訓練は、地元の弥富防災ハムクラブとJARL愛知県支部の協力により実施され、メイン会場内の展示エリアにアマチュア無線ブースを設置。市内各所との情報伝達にはメイン会場から約1.1km離れた弥富市役所にあるD-STARレピータ、JP2YHGが活用された。
弥富防災ハムクラブとJARL愛知県支部による、アマチュア無線を使用した画像伝送による情報収集・伝達訓練は、メイン会場の展示エリアで行われた
電源が供給されない状況でも迅速に通信が行えるための機材も展示された