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2025年7月1日掲載
JARLが2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)会場内に開設した特別記念局8K3EXPOが、万博が開会した4月13日から連日運用を行っている。毎日多数の運用希望者がアマチュア無線ブースを訪れ、有効な無線従事者免許を所持したJARL会員の場合は構成員として運用、JARL非会員の場合はゲストオペとして運用、無線従事者免許を持たない場合は体験運用を楽しんでいる。
取材当日にブースに詰めていた運用委員の皆さん
ブースには、ボランティアの運用委員が毎日08:30-22:00に3交代制4名体制で常駐し、運用を希望する来場者のサポートを行っている他、運用希望者がいない時間帯は、ボランティアスタッフが自ら運用を行い、全国はもとより世界に向けて、大阪・関西万博のピーアールを行っている。
8K3EXPOを運用中の月刊FBニュースのスタッフN
取材を行った6月23日時点での交信数は約18,000QSOという。なお8K3EXPOでは交信局数の目標は立ておらず、アマチュア無線を知らない来場者に体験運用を行ってもらうことで、アマチュア無線の楽しさを知ってもらい、ひいては将来のアマチュア無線家を増やすことを主目的にしている。運用委員らは対外的な万博のピーアールのための運用を行っているが、無資格者には、まずは体験してもらうことが重要と考えている。
開会当初は8K3EXPOのブースを訪れる一般来場者は多くなかった。そこでスタッフの一人がゴム印スタンプを作ることを提案した。会場内の公式パビリオンには必ずスタンプが設置されており、それを集めるための専用のスタンプ帳も公式に販売されており、会場内でのスタンプ集めは大人気となっているからだ。
しかし、アマチュア無線ブースは公式パビリオンではないため、スタンプの用意がなく、スタンプ帳には専用の押印スペースがなかった。しかしスタンプ帳にはフリーのスペースもあったため、そこに押してもらうことを提案した。そうして非公式スタンプを用意したところ、そのスタンプを押したある来場者が、「こんなレアなスタンプを見つけた」とSNSに投稿し、それがすぐにバズって、その後はアマチュア無線ブースに、この非公式スタンプを目的とした来場者が毎日多数訪れるようになった。
アマチュア無線ブースのある建屋(大屋根リング73番付近)
運用委員がそれらの来場者に、「アマチュア無線を一度体験してみませんか」と声をかけると、何人かに一人は反応してくれ、実際に体験運用を希望する来場者も出てきて大成功だった。今では多い日には体験運用が1日20人を超えることもあるくらい好評だという。また体験者は女性と子どもが圧倒的に多い状況で、体験者にはできるだけ遠方と交信してもらうべく、7MHzや21MHzに出てもらい、実際に交信を終えると、感動する来場者が多いという。
その後は、日付入りのスタンプも追加したところ、スタンプの日付が変わるため何度もブースに訪れる来場者もいる。また、海外からの来場者には、壁面に掲げた世界地図上の居住地の辺りにシールを貼ってもらい、そこを指さしたところの写真を撮ってFacebookに投稿している。なおFacebookは日々更新し、その日の出来事を発信している。
外国からの来場者が世界地図に貼り付けた居住地のシール
8K3EXPOの開設に尽力した大阪・関西万博記念局実行委員会委員長であるJR3QHQ田中JARL関西地方本部長に開局までの道のりや苦労話、これまでの成果や今後の計画などについて話を伺ってみた。
JR3QHQ田中JARL関西地方本部長
まずは今回の万博が大阪開催に決まる前、万博誘致をピーアールするための記念局8N3EXPOを開設した。これは、もし開催が大阪に決まったときにブースを出展しやすいだろうという意図だったという。この記念局の後援は大阪府からもらった。
そして万博が大阪開催に決まった後は、アマチュア無線のブースを出展したいという考えを万博協会側に伝え要望書を提出した。しかしその返事が来るまでかなり長期間待たされることになった。1年位が過ぎた後、やっと協会から連絡が来て打ち合わせを行うことになった。
その打ち合わせでは、まず「会場内にアンテナは建てられません」と言われ、田中本部長は建てられなくても会場内から、外部に用意した送信所をリモートで運用する手があると考え、「ブースだけ出させてくれればいいです」と返答し、当初奈良県から電波を出すことを考えていたという。しかし後日、大阪の会場から電波を出さないと意味がないのでなんとかしましょうと万博運営側から提案があったが、実際にアンテナサイトの場所が決まるまでにさらに1年位かかった。
しかも当時その場所はまだ埋め立てられてない海の中であったり、埋め立てが終わってからも書類上はまだ海のままだったこともあり、ミリ単位の設計図を要求されたりと、なかなかスムーズには進まず、本当に苦労したという。
アンテナサイトの様子。タワー下の収納小屋内ですべての無線機が稼働している
万博開会の半年くらい前には、なんとかブース位置が今の場所に決まり、ブースデザインを出すように要求されて、誰でもすっと入ることのできるオープンスペースのブースデザイン案を提出した。ところが、「このデザインでは、有料出展している企業ブースのデザインと変わらないため、ドアを付けてスタジオのようにしてください」と要求された。やむなくブースにドアを取り付けることにしたが、ブースの外からは中が見えるように透明なアクリル板を使用することだけはなんとか認めてもらったという。
ここまでは田中本部長とJE3DBS蛭子JARL大阪府支部支部長の2人で、協会側と話を進めてきたが、いよいよアンテナサイトやブースの製作を進めるため、話をオープンにして委員会を作って進めることにした。同時に田中本部長はJARL理事会に話を通して予算をつけてもらった。また運用委員のボランティアスタッフを募集することにして、関西6府県の支部長に推薦するように依頼を行ったところ、100人程度が集まった。
そして、開会前月の3月末にはブースが完成してアンテナも建った。無線機類はJAIAを通してJAIA加盟各メーカーから、アンテナはナガラ電子工業から提供を受けることができた。その他、関連各社や個人からの提供も受けて、必要な機材はほぼ揃った。
一方、ブースとアンテナサイトは500mくらい離れているため、同軸ケーブルや制御線での接続は現実的でなく、会場内のリモート運用が必須となるため、ブース完成後は、リモート運用のためのネットワーク構築に着手した。無線機のコントロールだけでなく、アンテナの切り替えや、アンテナの回転もすべてリモートで行う必要があり、その道に長けたスタッフが中心になって進めたが、かなりの労力がかかったという。
収納小屋内の様子
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各総合通信局/総合通信事務所
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