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子供の無線教室 ~電波のフシギをやさしく学ぼう~

第6回 「電波はいろいろなところで大活躍!!」

月刊FBニュース編集部

このコーナーは小学生のキミたちに電波や無線のふしぎなところ、面白いところを知ってもらうために毎月連載しているよ。バックナンバーも読んでみてね。

さて前々回(第4回)前回(第5回)の2回に分けて、「電波の性質」や「周波数と波長の関係」を紹介したけれど、覚えているかな?

 そう、電波には次のような性質や特徴があるんだったね。

・周波数が高いほど波長は短くなる
・高い周波数では帯域(電波の幅)を広く取れるので、たくさんの情報を載せることができる
・低い周波数の電波は、電離層などを使って遠くまで届く
・周波数が高くなると電離層を突き抜け、光のように直線性が高くなる

こうした点を生かしながら、いろいろな周波数で電波が使われている。今回はそんな「電波はいろいろなところで活躍している」というテーマでお話ししていこう。

代表的な無線の種類

キミたちの身の回りや、日常生活の中には、電波を使ったモノがいろいろあるよね。そうしたものが、どんな周波数を使っているか気にならないかな? その代表的なものと使っている周波数を紹介しよう。

(1)鉄道無線
列車の運転士さんや車掌さんが指令室と交信したり、事故が発生した場合に周囲の列車を緊急停止したりさせることができる鉄道無線は、会社や路線によって周波数がいろいろだ。

一部の地下鉄は、トンネルの中に長い電線を引き込んで、なんと長波の100~300kHzで通信を行っている。また多くの私鉄は150MHz帯を使っているけれど、ローカル線の中には370MHz帯を使っているところもある。

JRは、全国的には410MHz帯にあるチャンネルを使っているけれど、JR東日本、JR東海、JR西日本の幹線は、それより低い350MHz帯の電波を使っていて、次第にデジタル通信になりつつあるんだ。そのほか車両基地では列車や貨車の入れ換え用に360MHz帯などの電波も使われているよ。


列車を安全に、しかもダイヤどおりに走らせるため、鉄道無線は大活躍している

(2)タクシー・バス無線
タクシーや路線バスにも無線機がついていることが多いよね。タクシーは450MHz帯を使っている。地方ではタクシー会社ごとに無線の基地局を持っているけれど、大都市では複数のタクシー会社が共同で作った「配車センター」から、予約先へ一番早く迎えるタクシーを探して指示を出すシステムができている。タクシー無線の基地局のアンテナは、高さ634mの東京スカイツリーにも取り付けられているんだよ。

また路線バスは140MHz帯や150MHz帯を使うことが多い。特に都市と空港を結ぶ「リムジンバス」は無線の連絡が大切だ。交通の渋滞状況やダイヤの連絡などに利用している。

(3)航空無線
飛行機の安全な飛行に無線は欠かせないんだ。民間機の場合、空港の管制塔や、航空路を管理する管制センターと交信をするときは110~130MHz帯を使っている。また国際線の旅客機は、太平洋や大西洋といった洋上を飛ぶときに、その空域を担当する管制センターと短波帯で交信を行っている。

そのほか、現在位置を自動的に知らせるビーコンを発射したり、滑走路が近づくと安全に着陸するための電波誘導システムを利用することもある。


空港を離陸する旅客機。胴体の上に「ヒレ」や「コブ」のように見えているのが無線のアンテナだ

(4)パトカーと消防車・救急車の無線
パトカーや消防車、救急車も、出動の指令を受けたり、現場から報告をするのに無線を使うよね。パトカーは155MHz帯や360MHz帯、消防車や救急車は260MHz帯を使って交信することが多い。ただし、どれも一般の人が受信しても内容がわからないように、特殊な対策をしたデジタル方式を使っているから、関係者以外は知ることができないんだ。


事件や事故の現場に急行するパトカーも無線は欠かせない。一般の人が受信しても内容がわからないように、特殊な対策をしたデジタル通信が使われている

(5)携帯電話・スマートフォン
日本で携帯電話のサービスが始まったのは1979(昭和54)年。当時は「自動車電話」と呼ばれていて800MHz帯を使っていた。1990年代になると小型の携帯電話が発売されて、利用者が急増。電波が足りなくなって、周波数がどんどん追加されるようになってきた。

ほかの無線局を別の周波数に移ってもらったりして、現在は700MHz帯/800MHz帯/900MHz帯/1.5GHz帯/1.7GHz帯/2.0GHz帯の幅広い周波数が携帯電話に割り当てられている。ただし実際は電話会社や方式の違い、電話機の種類によって使う周波数は絞られているんだ。

今では全国ほとんどの場所に携帯電話の基地局がある。携帯電話やスマートフォンから発射した電波は、一番近くの基地局まで届けばOKなので、発射する電波も比較的弱く、アンテナも小型のものが本体に内蔵されているよ。


携帯電話の基地局とアンテナはこんな感じだ。高いビルの屋上などに設置されているよ

(6)テレビ放送
2011年7月まで行われてきたアナログテレビ放送では、1~3チャンネルが90~108MHz、4~12チャンネルが170~222MHz、13~62チャンネルが470~770MHzに割り当てられていた。その後は地デジ(地上デジタル放送)に移行して、アナログ時代の13~52チャンネルに相当する470~710MHzでデジタル放送が行われている。空いた周波数(90~108MHz、170~222MHz、710~770MHz)はさまざまな目的で再利用されているよ。

また地球上空の放送衛星を使ったBSテレビ放送は、11.71GHz~12.17GHzという、かなり高い周波数に合計12チャンネル分の割り当てがある。こちらは衛星がある方向にパラボラアンテナを向けて受信する方式だ。


テレビ局と、テレビの電波を送信するタワー(送信塔)の例

(7)ラジオ放送
このコーナーで何回か紹介しているラジオ放送。「AMラジオ放送」は中波の530kHz~1602kHzに9kHz間隔で周波数を割り当てられている。夜になると電離層の影響で遠くの放送が聞こえてきて楽しいよ。

音質の良い「FMラジオ放送」は超短波(VHF)の76~90MHzを100kHz間隔で使っている。また大都市ではAMラジオ放送が雑音や建物の影響で良く聞こえないケースが増えてきたので、一部の民放AMラジオ局は90~100MHzを使った電波も出している。これを「FM補完放送(通称:ワイドFM)」と呼んでいるよ。

そうそう、あまり知られていないけれど、短波帯でも民間放送が行われているんだ。東京の日経ラジオ社が運営している「ラジオNIKKEI」がそれで、3MHz帯/6MHz帯/9MHz帯で「第1プログラム」と「第2プログラム」の2つを放送中だ。こちらは電波状態が良いと世界中で聞こえるらしい。


あまり知られていないけれど、短波を使った国内向けの民間放送も行われている。送信所は千葉県内と北海道根室市にある

このほかNHKは、世界各国に向けた短波による国際放送「ラジオ日本(Radio Japan)」をさまざまな国の言葉で行っているよ。

電波を使うには免許や資格が必要

身近なところでも、いろいろな電波が使われていることはわかったかな!? こうした電波は、日本では「総務省(そうむしょう)」というお役所が管理していて、無線の目的や通信相手の場所など考え、一番良いと思われる周波数を割り当てることになっている。

ちなみに無線局や放送局は、電波に関する法律「電波法」で決められた無線局(放送局)の免許が必要になるんだ。

そして、免許を受けた無線局を操作するために、設備に応じた「無線従事者」の資格を持つ人が必要になる。お巡りさんは全員が無線従事者の資格を持っているし、タクシー無線の基地局や鉄道会社の指令室で働く人も資格を持っている。もちろんアマチュア無線家もみんなが持っているよ。

ただし、携帯電話やスマートフォンなどは電話会社で免許を受けているから、使う人たちに特別な資格は必要ない。また一部だけど“免許も資格も不要で使える”という無線システムもあるんだ。

さて、こうしたいろいろな電波のうち、音声による交信が行われているもの(アナログ方式のAMやFMなど)の一部は「広帯域受信機」という製品で受信することができる。もちろん聞くだけなら免許も資格も不要だよ。


アイコムが3月に発売を始めたばかりの広帯域受信機、IC-R8600。10kHzから3GHzをカバーし、一部のデジタル通信にも対応している。無線機ではないので資格不要で使える

最近は音声をデジタル信号にした「デジタル通信」に対応した受信機もあるけれど、使っているデジタル方式が違ったり、部外者に内容を知られたりしないように「秘話(スクランブル)コード」をかけている無線もあるから、全部が聞こえるわけではないことを理解しておこう。

いろいろな無線をキャッチするのは、電波の特徴を知ることができるから、とても役立つのだけれど、受信した内容を他人(家族もダメ!)に話したりすると「電波法違反」という犯罪になってしまう。放送以外の受信内容は、誰にも絶対に漏らさないというのが、無線ファンの“鉄の掟”なんだ。これは絶対に守ろうね!


無線局の免許状や、無線従事者免許証の裏側には「特定の相手方に対して行われる無線通信を傍受してその存在若しくは内容を漏らし、又はこれを窃用してはならない」と注意事項が書かれている

それじゃあ、また次回をお楽しみに!!

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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