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子供の無線教室 ~電波のフシギをやさしく学ぼう~

第4回 「電波の性質を覚えよう」

月刊FBニュース編集部

1月号から始まった「子供の無線教室」。小学生のキミたちに無線や電波のことをやさしく教えていくコーナーだ。これまでのバックナンバーも読んでみてね。

さて今月は、電波の性質を紹介しよう。目に見えない電波だけれど、さまざまな研究で、面白い特徴を持っていることが知られているんだ。遠くのラジオ放送を受信して楽しむBCL(Broadcasting Listener)の人たちや、電波を発射して世界中との交信を楽しむアマチュア無線家の人たちも、こうした特徴をうまく利用しているんだよ。


アマチュア無線家は電波の性質をうまく利用して、世界中との交信を楽しんでいる

電波の性質 その1 「電波は超速いゾ!」

まず、その1はコレだ。前回も紹介したけれど、電波は「1秒間に30万キロメートル(地球を7回り半)」という、とんでもないスピードで空間を飛んでいく特徴がある。これは光と同じ速さで地球上では最速だ。“光や電波よりも速い物質”というのは、まだ発見されていないんだよ。

携帯電話で「もしもし」「はいはい」というスムーズな会話ができたり、世界のどこからでもテレビの生中継ができたりするのは、この特徴があるからだ。でも、地球から遠く離れた場所を飛行している宇宙船との交信や、地球上空にある通信衛星を経由した通信だと“時差”が生まれることがある。

電波の性質 その2 「電波は遠くまで届くぞ」

アンテナから発射された電波は驚くほど遠くまで届く。周波数によって性質が違うけれど、アマチュア無線でもよく使われる「短波(HF、3~30MHz)」の電波は、地球上空約60~800キロメートルの位置にある「電離層(でんりそう)」というイオン層と地上(大地)の間を何回も反射しながら数千キロ、場合によると地球の半周以上にあたる数万キロも届くことがある。


短波帯の大型アンテナを建てたアマチュア無線局。アンテナには大型のモーターがついていて、交信相手局の方角へ向けることができる

またFM放送などでも使われる「超短波(VHF、30~300MHz)」、地デジのテレビでも使われる「極超短波(UHF、300~3000MHz)」、衛星放送でお馴染みの「マイクロ波(3GHz~30GHz)」といった電波は、電離層の影響を受けにくく、見通し距離に届くことが知られている。だからテレビやFM放送の送信塔は遠くまで見通せるような高い場所にあるんだ。また電離層を突き抜けてしまうことを利用して、宇宙船や人工衛星との通信にも使われるんだよ。


マイクロ波による衛星通信で使われるパラボラアンテナの例(KDDI山口衛星通信センター)。これを使って、地球上空3万6,000キロメートルにある通信衛星に電波を届ける

電波の性質 その3 「電波は反射する」

電波は、金属のように電気を通しやすいものにぶつかると反射する性質があるんだ。また金属ほどではないけれど、電波は水面や地面、山などに当たっても反射する。

学校の校舎とかマンションといった、鉄筋コンクリートでできたビルの中に入ると、ラジオが聞こえにくくなったり、携帯電話がうまく通じなくなったりすることがあるけれど、まさしくこれはビルの鉄筋や鉄骨に電波が反射してしまい、建物の中にはあまり届いてこないことから起きた現象だ。

電波は、ガラスや木材、プラスチックといった電気を通さないものはすり抜けるので、ビルの中にいてもガラス窓の近くならラジオや携帯電話が使えたりする。

「じゃあ、ビルで電波が反射すると、その裏側には届かないの?」と思うかもしれないが、ほかのビルに反射したり、周波数によってはビルに沿って建物の裏にも電波が回り込んだりすることがあるので、まったく届かないわけではないんだよ。


電波はビルや地面、山などに反射する。そして超短波(VHF)より高い周波数の電波は“見通し距離”に届く。こうした理由から、たくさんのアンテナを設置した「電波塔」(写真左側の赤白に塗られた鉄塔)は高い位置に設置される

ちょっと面白いエピソードを紹介しよう。

あるテレビ局が、局の建物のすぐ隣にある駐車場から生放送を行う計画を立てた。ところが準備を始めてみると、テレビ局の屋上から中継用のアンテナを駐車場に向けても、信号が弱くて中継で使える画質にならなかった…。原因はテレビ局の建物と駐車場から張りだした金属製の屋根。これらが電波を反射させてしまったらしい。

仕方ないので、テレビ局は駐車場にパラボラアンテナのついた中継車を止め、地球から3万6,000キロメートル離れた宇宙にある通信衛星を使って生中継を行ったんだ。テレビ局からたった50メートルぐらいの場所なのに、電波を7万キロメートル以上も飛ばすなんてビックリだね!!


テレビ局の中継車(SNG車)の例。屋根の上にあるパラボラアンテナを通信衛星に向けて、日本全国どこからでも生中継ができる

電波の性質 その4 「電波は曲がる!?」

前回説明したけれど、電波は発射したところから波紋のように360度どの方向にも同じ速度で直進していくのが基本だ。

ところが電波には「曲がる」という特徴もあるぞ!

“ええっ!?”と思うかもしれないけれど、何もない場所で突然、気が変わって向きを変えるわけではないから安心してほしい。例えば、大きな山があった場合、その山の陰に沿って、山の裏側にも回り込むように進んでいくとか、大雨や大気の状態といった気象現象で、周波数によっては電波が直進しないで微妙に進路を変えてしまうことがあるんだ。

また厳密には「曲がる」ということではないのだけれど、例えば東京と大阪の間で交信するときに、アンテナを東京からは西南西(大阪方面)、大阪からは東北東(東京方面)に向けると信号が一番強くなるはずだけれど、周波数や電波状態によっては、お互いがまったく違う方向(例えば南南西など)にアンテナを向けた方が信号が強くなることもある。電波がいつも最短距離を直線で飛んでいるわけではないことも覚えておいてほしいな。

電波にはいろいろな性質があることがわかったかな? この続きはまた来月!!

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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