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Japan Castles On The Air (JACOTA)

Castle 1 園部城(京都府南丹市)

JO3SLK Greg Cook (翻訳 JP3DOI 正木潤一)

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今ではすっかり移動運用もアマチュア無線の楽しみ方の一つとなりました。バッテリーで動作する無線機が世に出てから、リグとバッテリー、それにアンテナとして適当な長さのワイヤーを持ち出し、野外から移動局や固定局あるいは外国の局とも交信できるようになりました。

また、野外での運用は、手軽なピクニックテーブルや丘の上からだけでなく、さらにレアエンティティからのDXペディションにも及びます。無線機の小型・軽量化が進み、バッテリーの持ちも良くなってくると、徒歩での山岳運用も一般的になりました。SOTA(Summits On The Air)の運用は、世界中のアマチュア無線家にたいへん人気があります。SOTAに刺激された人たちが、米国を中心に国立公園や州立公園、市立公園で運用するようになり、それがPOTA(Parks On The Air)に広がっていきました。一方、ヨーロッパにはお城や城跡がたくさんあり、そこから運用を楽しむ人たちもいます。彼らの間で人気があるのがCOTA(Castle On The Air)で、お城や城跡で交信を行うものです。

日本にも多くのお城や城跡があり、観光地として人気があります。私が住む関西地方にも多くのお城があり、こういった場所での運用は面白そうだなと以前から思っていました。COTAのヨーロッパ支部に日本のお城も運用地の対象(アクティベーション・エリア)とする話を持ち掛けたところ、しばらくして返事がありました。私は日本版「COTA」すなわち「JACOTA」の責任者でも何でもありませんが、「JACOTA」を始めることにしました。この記事が記念すべき最初の「JACOTA」活動報告となります。

園部(そのべ)城

私が最初のJACOTA運用地として選んだのは、京都府南丹市にある園部城です。園部城は、京都で戦が起こった際に天皇を匿うために1868年建立されたお城で、これは日本で最後に建立されたお城とのことです。かつて日本に存在した多くのお城は明治時代(1868~1912年)に解体されました。園部城も同様で、当時のまま遺っているのは門と警備の詰所、それに小塔だけです。


現在の園部城の天守閣は元々あった場所近くに復元され、中は国際交流会館となっています。以前ここを訪れたとき、ここでアマチュア無線を運用したい旨を伝えて許可をいただきました。実際、アマチュア無線を知らない人に「ここにアンテナを立て、CQCQと呼び出しを行い、無線交信をしたい」ということを理解してもらえるか不安でしたが、スタッフの方々の理解も得られて最終的に許可をもらうことができました。

さっそく運用に適した場所を探して敷地内を廻り、天守閣からそう遠くない小高いところに良さそうな場所を見つけました。やはり、こういった普段あまり行われないようなことを行う場合は、施設のスタッフの方に会って自分がやりたいことをちゃんと伝えて許可をもらうことが重要と思います。「あの人は何をしてるんだろう?」というスタッフの視線を感じながらでは心置きなく無線を楽しむことができません。許可をいただき、のんびりしながら無線を楽しんでください。あとで運用活動記事も書けますしね。


最初に園部城を訪れてから数週間後、再び管理事務所を訪ねました。ここで改めてスタッフの方々に公園内で運用する旨と、その許可をいただいたことへの感謝を伝えました。私は、前回来た時に決めておいた運用場所に自慢の米国製のポータブルアンテナBuddipole®一式とアンテナアナライザー、IC-705を収めたLC-192マルチバッグを持ち込みました。綺麗な紅葉も相まって、絶好の移動運用日和です。

下の写真の中で、上部に映っているバッグにはBuddipole®アンテナ用の3脚、マスト、ケーブル類、アンテナエレメント一式が入っています。その下にあるバッグにはアンテナを支える部材、ステーロープといった、水平ダイポールまたはバーチカルアンテナ以外のアンテナ形態でも運用できるように持ってきた部材を収めています。左にある細長いバッグには、12フィート(約3.7m)のショックコード※内蔵のホイップアンテナが入っています。これは、複数の金属パイプにより1本のエレメントが構成される構造で、個々のパイプは中に通っているショックコードによって繋ぎ留められています。
※ちょうどドーム型テントのポールと同じ構造

青色の小さなバッグにはアンテナアナライザーが入っています。そして、写真右下のLC-192マルチバッグにはIC-705とスピーカーマイク、バッテリー、ログブックなどを入れています。


私が購入したBuddipole®には水平の短縮ダイポールにもできるのですが、今回は下の写真のようなバーチカルアンテナとして設置することにしました。まず3脚を立て、マストを挿入します。アンテナエレメントのベース部分にローディングコイルを取り付け、エレメントを展張します。次にラジアル線を取り付け、その端を近くの木に結んでピンと張ります。これまで何回か設置していることもあり、約10分でアンテナの設置が完了しました。最後はIC-705が入ったLC-192を3脚の傍に置き、アンテナのチューニングにかかります。


ラジアル線は巻き取り器に巻かれているので、使用時にもつれることもなく、撤収時にもきれいに巻き取れるようになっています。運用バンドに応じた長さをほどき、端をどこか絶縁物に結んで地面から1mくらいの高さでピンと張ればOKです。今回私が設置したこのバーチカルアンテナでは、ラジアルは最低でも1mの高さで張ることが重要とアンテナの取扱説明書に記載されていました。枝が折れた株の出ている木を見つけ、そこにラジアル線の端を括りつけました。ちょうど良い長さと高さで張ることが出来ました。今回は40mバンドで運用するので、2.9mのバーチカルエレメントに、7.7mのラジアルを1本水平に延ばしました。40mバンドのラジアルの長さは計算では約10mですが、実際アンテナアナライザーで調整すると7.7mでうまく調整できました。参考ですが、私が購入したBuddipole®はオールバンド運用が可能です。次は22インチ(約56cm)のアンテナ支持材に、長いホイップエレメントか14.5フィート(約4.5m)長のショックコード内蔵ホイップアンテナを立てて、20mバンドも運用しようと考えています。

バーチカルアンテナの途中に取り付けたローディングコイルには使用するバンドに応じたタップが取り付けられています。運用バンドに応じたタップ位置が取扱説明書に記載されていますので、それを見ながらタップの接続とラジアル線の長さを調整してアンテナの同調を取ります。Buddipole®アンテナは、様々なバンドを運用することができるので気に入っています。


Buddipole®アンテナのアクセサリーに可変式バランTRSB(Triple Ratio Switched Balun)があるのでそれも購入しました。バランは1:1(50Ω)、2:1(25Ω)、4:1(12.5Ω)の3種類の変換比をスイッチで選べます。バーチカルアンテナのインピーダンスは50Ωより低いので、2:1変換比で最良の整合状態が得られます。このバランには、同軸ケーブルのシールド線側に高周波電流が載ることを防ぐ効果のあるトランスも内蔵されておりよくできています。


私はポータブル運用のときでも愛用のアンテナアナライザー(RigExpert®『AA-230PRO』)を常に持参します。このアンテナアナライザーでSWRを確認しながらコイルのタップ位置とラジアル線の長さを調整すると、1:1.2にまで下がりました。アンテナアナライザーを持っていない場合は、コイルのタップ位置を上げたり下げたりしてノイズが最も大きいポイントに合わせます。そこでエレメントの長さやラジアルの長さを微調整すると運用周波数の近くに同調させることができます。なお、IC-705には便利なSWR測定機能があり、運用周波数におけるSWRを見ながらアンテナの整合を取ることができます。


運用場所は園部城公園内の丘の上です。最初は私のほかには誰もいなかったのですが、1時間くらい経った頃、先生に引率された小学校の子供たちが大勢来城してきました。中には、私が運用しているのを「何してるんだろう?」と、不思議そうに見つめている子たちもいました。

こういう状況で「何をしているの?」と聞かれた場合にちゃんと説明できるようにしておかなければなりません。また、別の観光客から話し掛けられたときもひょっとするとその方はアマチュア無線家だった、なんてこともあるかもしれません。


さて、すべての機材準備と調整も終わって、いよいよ運用開始です。その日の40mバンドは、コンテストでひしめき合っていましたが、流暢な英語を話す日本の7エリアの局と15分間くらいFBなQSOができました。5Wに加え、写真にあるようなアンテナでのQRP運用です。その後、紅葉を観たり写真を撮ったりする人たちがどんどん増えてきたので、早々に撤収して家路につきました。


さて、次回のJACOTA(Japan Castle On The Air)での運用は、京都府福知山市にある福知山城を計画しています。私は事前に現地を訪れ、責任者の方から無線運用の許可をすでに得ています。奇遇にも責任者の方もアマチュア無線家で、敷地内での運用を快諾してくれました。次回の記事もぜひお楽しみに。


石垣の上に高くそびえ立つ、福知山城の天守閣

あなたの近くにお城や城跡はありませんか? あるいは、興味を惹かれるお城はないでしょうか?? ならば一度足を運んでみて、無線をするのに良さそうな場所を探してみましょう。責任者の方から運用許可をもらえたら、運用機材一式を持って行って歴史の地で無線を楽しみましょう。

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