2016年10月号
ニュース
電気・電波の祖神を奉る「法輪寺電電宮」(京都・嵐山)、アマチュア無線家の参拝が相次いだ時期も
京都を代表する観光地のひとつ、嵐山(京都市西京区)に“電気や電波の神様”を奉った神社「法輪寺電電宮」があるのをご存じだろうか。境内にはエジソンとヘルツの胸額が掲げられ、かつてはアマチュア無線家の参拝も相次いだという、この神社を訪問した。
「十三詣り」で知られる、京都・嵐山の法輪寺。この敷地内に電電宮がある
法輪寺電電宮は、京都・嵐山の観光スポット「渡月橋」のすぐ近くにある。法輪寺は広大な宇宙のような無限の智恵と慈悲を持つとされる「虚空蔵菩薩」を奉り、数え年で13歳になった子供が智恵を授かりに行く「十三詣り」の行事でも知られている歴史ある寺だ。
その敷地内に鎮守社のひとつとして、雷の神様である「電電明神」を主神とする「明星社」が奉祠されていた。明星社は幕末の1864(元治元)年に起きた「禁門の変」で社殿が焼失し、その後は長く仮宮のままになっていた。
しかし日本でテレビ放送が始まって3年後の1956(昭和31)年、電電明神を電気電波の祖神として、電気電波関係業界の発展を祈願する信仰の場とするため、当時の郵政省関係者や電気業界関係者らの協力により、明神社を新たに「電電宮」として奉祠した。
電電宮の鳥居
1969年に再建された電電宮の宮殿(写真奥)
その後、1969(昭和44)年には大阪で開催された万国博覧会を記念して宮殿が再建、1979(昭和54)年には電電宮の護持運営のために電気業界の賛同を集めた「電電宮護持会」が結成され、毎年5月23日に関係者が集まり大祭が行われている。
電電宮護持会の会員には放送局、電力事業者、電気工事会社、電気通信事業者など、さまざまな企業が名を連ねている
法輪寺の敷地内には、電気電波関係の研究にあたった先覚者や事業者の霊を顕彰するために「電電塔」が建立され、功労者の代表としてトーマス・エジソンとハインリッヒ・ヘルツのブロンズ胸額がかかげられている。
法輪寺の敷地内に建立された「電電塔」
電電塔にはトーマス・エジソンとハインリッヒ・ヘルツのブロンズ胸額がかかげられている
法輪寺の藤本高仝住職によると、1980~1990年頃は電電宮を参拝するアマチュア無線家が相次ぎ、電電宮の本殿にある貴名受(名刺受け)には、各地のアマチュア無線家の「コールサイン入り名刺」がよく納められていたという。雷による被害を避け、自分の電波を遠くまで届けたいという気持ちの表れといえるのかもしれない。
法輪寺の藤本高仝住職
かつては電電宮の記名受(名刺受け)に、アマチュア無線家のコールサイン入りの名刺がよく納められていたという(イメージ写真)
電気に特化して奉祠が行われているのは全国でもここだけとされ、電電宮には個人のほか、全国の放送局、ケーブルテレビ局、電力事業者、電気工事会社、電機メーカー、携帯電話会社、衛星通信会社、IT系のデータセンター、鉄道会社といった業種の関係者などが訪れ、工事や通信における無事故、プロジェクトの成功、衛星打ち上げ成功、システムの安定動作などを祈願し祈祷を受けていくという。
法輪寺はお守りとしてスマートフォンで使用できるマイクロSDカード(8GB)を用意している。メモリーカードの上部には梵字がプリントされ、内部には虚空蔵菩薩の画像データも保存されている。ほかにも携帯電話に貼るステッカータイプのお守りやパソコンに貼る情報安全護符などもあり、参拝に訪れた電気電波業界の関係者にも好評ということだ。
参拝者に注目されている法輪寺のマイクロSDカードによるお守り。内部には虚空蔵菩薩の画像データが保存されているが、空き容量の部分は自由に使うことができるという
●法輪寺電電宮
・住所:京都府京都市西京区嵐山虚空蔵山町
・交通:JR嵯峨野線「嵯峨嵐山」駅から南へ800m
京福電鉄「嵐山」駅から南へ500m
阪急電鉄嵐山線「嵐山」駅から西へ200m
・祈願受付時間:9:00~17:00(無休)
・Webサイト:http://www.kokuzohourinji.com/index.html
法輪寺電電宮の参詣案内図