2016年10月号

トップページ > 2016年10月号 > 海外運用の先駆者達/JA3AER荒川泰蔵 その43 記事執筆を励まされるもの 1987年 (5)

連載記事

海外運用の先駆者達 ~20世紀に海外でアマチュア無線を運用した日本人達~


JA3AER 荒川泰蔵

その43 記事執筆を励まされるもの 1987年 (5)

記事執筆を励まされるもの

この時代(1980年代)筆者は米国に駐在していてN2ATTでQRVしていたが、この原稿を執筆中の(2016年)8月中旬、21MHz,SSBでQSOした北海道のJA1LLN/8中原氏は、N2ATTではないかと30年以上前のQSOを思い出してくれた。このように海外での運用時の交信を覚えてくれている方々に時々出会い、それに励まされながら執筆を続けている。彼はその直前にVU3OTKとQSOしていたので尋ねたところ、57で聞こえていたとのことであった。VU3OTKは昨年インドで免許を得たJM1NCA太田謙氏で、1997年にヨルダンからJY8NCで運用したアンケートを寄せてくれているので、いずれこのコラムでも紹介の予定であるが、昨年インドでのSEANETコンベンションで会い(写真1)、今年もまた11月にタイでのコンベンションで会う予定なので、それまでに一度QSOしたかったが、大阪では聞こえなかったのが残念であった。しかし、インドから元気でQRVしていることが確認出来て良かった。


写真1. VU3OTK太田謙氏(左側)と筆者(2015年 SEANETコンベンション in Indiaにて)

1987年 (英国 G0GRV, G1XCJ, G0HFS, G0/AJ1A)

JG1PGJ加藤芳和氏は、英国で免許を得てG0GRVを運用した経験をレポートしてくれると共に、その経験を基に”英国アマチュア無線受験マニュアル”を作成したと、そのコピーを送ってくれた(写真2~4)。「Radio Amateur's Examination (RAE)とモールス・テストを、それぞれに受験。自宅にIC-741とFT-290を設置、モービル用ヘリカル・アンテナを使用して、主にHFのCWにオン・エアーしました。アクティビティーは月間10局程度のQSOと低いものでした。(1987年5月記)」


写真2. (左)G0GRV加藤芳和氏のQSLカードと、(右)その免許状。(クリックで拡大します)


写真3. (左)G0GRV加藤芳和氏の学科試験合格証と、(右)モールスコード試験合格証。 (クリックで拡大します)


写真4. G0GRV加藤芳和氏制作の「英国アマチュア無線受験マニュアル」の一部。マニュアルは上記写真3の合格証2種を含み合計21枚の参考書類と6ページの説明文で構成されている。 (クリックで拡大します)

JA7FCJ佐藤幸雄氏は、英国で受験し免許を得て運用したとアンケートを寄せてくれた(写真5の左)。「1983年の英国赴任時、G5ENI佐藤良介OMの手紙(住所)を日本に忘れてしまい、初めての海外赴任でもあったので、しばらくハムの事は忘れておりました。1986年10月に急に英国の試験を受けて見ようと思いたち、12月期学科試験の締切直前に間に合いました。試験場でG0CEO太田OMと加藤OM(JG1PGJ)に会いました。1月末加藤OMとともに合格し、2週間後にG1XCJで免許されました。CLASS Bで、VHF以上CWを除くALLモ-ドですが、このコールサインでは運用しておりません。(1988年10月記)」そして「学科試験合格後の(1987年)2月初め、G0CEO太田OM宅で加藤OM(G0GRV)、大久保OM(G/JR1KWR)と私の4人でミ-テイングを行いました。この時、4年間のQRTにもめげず、RSGBのモ-ルステストを受ける事にしました。それから1ケ月間、ベッドの中でもピ-ピピピ。お陰で翌月無事合格、Class AのG0HFSで免許されました。在英中の居住地であるロンドンより、G0GRV加藤OMのリグIC-741(100W)を借用、14MHz用3mHのDPアンテナでCWのみにQRVし、SV, JA, HLの3局のみQSOしました。(1988年10月記)」


写真5. (左)G0HFS佐藤幸雄氏のQSLカード。(右)G0/AJ1A中村千代賢氏のQSLカード。

JH3OII中村千代賢氏は、米国免許による相互運用協定で英国の免許を得てG0/AJ1Aで運用したとアンケートを寄せてくれた(写真5の右)。「仕事の関係で英国出張が多い時期があり、その頃この相互運用許可を取りました。申請してから約1ヶ月程かかりました。まず2m FMでリピーターにアクセスしようとトライするも、トーンなしでは殆どアクセスできませんでしたが、希にアクセスできたものもあり、実際のところシステムがよくわかりません。ホテルからは7MHzのQRP機+ワイヤーダイポールでQRV、CWで数局とQSOできました。この相互運用許可は英国海外領土では無効の旨が許可証に明記されています。この英本国での許可を既成事実に香港でも相互免許の申請をした事がありましたが、あっさりと断わられました。(1991年10月記)」

1987年 (西ドイツ DL/JH3OII, DL/JE1BQE)

JH3OII中村千代賢氏は、DL/JH3OIIの免許を得て運用したとアンケートを寄せてくれた(写真6)。「大きなサンプルケースを抱えた私をすぐ手助けしてくれるドイツ人には、その出発直前の東京都心で冷遇を受けた私にとって心が洗われる思いでした。ホテルへ入って一休みし、早速ハンデイー機をONにするといくつかのレピーターでラグチューしています。片言のドイツ語で自己紹介して割り込むが、どうも長続きしない。ようやく英語のわかる局を見つけてQSOしてみると、随分遠くにあるレピーターにアクセスしていることがわかった。外国人のQRVということで珍しがられ、時には次々に呼ばれることもあり楽しい。相互運用許可証もドイツらしいデザインというか形式で全く気に入りましたHi。(1991年11月記)」


写真6. (左)DL/JH3OII中村千代賢氏のQSLカード。(右)JH3OII中村千代賢氏(左側)と筆者 (2016年 関ハムのIOTA-CPブースにて)。

JE1BQE根日屋英之氏は、ドイツでの運用の回想をアンケートで寄せてくれた(写真7及び8)。「ドイツからの運用は1976年の夏が最初になります。当時はJE1BQE/DLのコ-ル(現在はDL/JE1BQE)で、HFは主にJAと、2mではDL'sのパイルをあびて楽しんでおりました。 またOSCARにもUP-LINKし、OE, G, DLを中心に多くの局とQSOできました。私が住んでいたAschaffenburgのアパ-トから、車で30分程度のSeligenstadtのDF5FJ, Bernhard宅からのQRVが多かったです。丸々15年過ぎてしまいましたが、多くのドイツのハムと今でも交流があり、日本でのEyeballも楽しみの一つです。(1991年12月記)」


写真7. DL/JE1BQE根日屋英之氏のQSLカード2種。


写真8. DL/JE1BQE根日屋英之氏の短期免許状裏表。(クリックで拡大します)

1987年 (フランス F/JF1SAG, FD1MUY, FE1MUY, F/JH3OII, F/G0GRV, F/DJ0KE/P)

JF1SAG松岡良樹氏はフランスでの免許取得と運用についてレポートしてくれた(写真9~11)。「フランス政府の好意的な対応でアマチュア無線を楽しませてもらっています。1986年に相互運用協定が結ばれ、早速F/JF1SAGを申請しました。この免許をもらうのに待つこと6ヶ月、そのうちビジタ-免許(F/-----)では毎度再申請せねばならないから、この際試験を受けてはどうかとのお誘いあり、恐る恐る受験してみましたがフランス語の壁の方がはるかに大きく四苦八苦しました。法律10問、工学30問、60 - 70%の合格ラインをかろうじてパスし、FD1MUYを授かりました。受験料160フラン、ライセンス申請料210フランでした。フランスでは初級局(13才から)のクラスA,B,C。そして2級局のクラスD(100W)、1級局のクラスE(500W)があり、クラスDの資格で3年以上の運用経験を経てのみクラスEの免許を与えられることになります。1987年からF/JF1SAG、1987年後半からFD1MUY、そして1990年からFE1MUYで運用し、HFからオスカーまで電波を出しています。地域のハム連盟は"REF-68"で、毎月最終金曜日にミ-テイングに参加しています。このミ-テイングでQSLカ-ドを配るので、ビ-ルを飲みながら自慢話しに花が咲きます。家族で参加する年1回のバーベキューパーティーでは、フォックスハンテイングや中古市が開かれます。私の住んでいるアルザスからジュネーブの4U1ITUまで車で3時間です。仲間のDJ0UL松村OM、JE2LMM北村OMと運用しました。(1990年8月記)」


写真9. F/JF1SAG, FD1MUF, FE1MUY松岡良樹氏のQSLカード2種


写真10. (左)シャックにて松岡良樹氏(1990年)と、(右)その携帯免許状。


写真11. (左)F/JF1SAG松岡良樹氏の短期免許状。(右)FE1MUY松岡良樹氏のCEPT適合証明付免許状

JG1PGJ加藤芳和氏はフランス出張の機会に、F/G0GRVの免許を得たとアンケートを寄せてくれた(写真12の左)。「免許はフランスのDTRE(Ventre de Gestion des Radiocommunications)に申請。G0GRVをベースにしての相互運用協定によるもの。今回の渡仏はスイス経由だったため、スイスの免許を申請したが不可となったので、フランスでの運用も中止した。(1987年8月記)」


写真12. (左)F/G0GRV加藤芳和氏の短期免許状。(右)F/JH3OII中村千代賢氏の短期免許状。

JH3OII中村千代賢氏はフランス出張時、相互運用協定によるF/JH3OIIの短期免許を得て運用したと、アンケートを寄せてくれた(写真12の右)。「相互運用協定の申請書と銀行小切手で、約2週間で短期免許状を送ってきた。運用は、ホテルの窓が開かないので、Pico内蔵ホイップを窓際に置き(モービル用マグネット基台を持参していたので、それが窓際のエアコンのキャビにピッタリよくつく)超小型電鍵でQSO。あいにくConditionは悪かったがIやYUとQSO出来た。2mもワッチしてみたがActivityは高くなく、あまりQSOできなかった。パケット専用レピーターがあるらしく、それだけがよく作動していた。(1987年10月記)」

JA9IFF中嶋康久氏は、フランスでF/DJ0KE/Pで運用したとアンケートを寄せてくれた(写真13)。「ヨーロッパではCEPT資格証明があれば、申請なしで運用が可能となっています。フランスは本年(1987年)7月1日より、このCEPT資格証明の批准の施行をしました。日本とフランスの相互運用協定が5月より実施されていますが、3ヶ月間の短期免許であること、申請料が70フラン必要であることから、JAのコールからではなく、西ドイツのコールで運用しています(申請必要なし、申請料無料のため)。Parisでは使用言語がほとんど仏語のため、ほとんどワッチのみ。Strassbourgのアルザス県では、ほとんどの人が独語を話せること、リピーターを使用すればドイツ側ともQSO出来ることなどから、ここでのQSOが私にとっては楽です。この制度により、フランスの海外県及び海外領土(TK, FG, FH, FJ, FK, FM, FO, FP, FR, FT, FW, FY)からもQRVが可能です。(1987年9月記)」


写真13. JA9IFF中嶋康久氏(右端)、左端はJI3DST舟木武史氏、中央は筆者(2016年 関ハムのIOTA-CPブースにて、JJ3PRT青木洋二氏撮影)。

海外運用の先駆者達 ~20世紀に海外でアマチュア無線を運用した日本人達~ バックナンバー

頭の体操 詰将棋

Masacoの「むせんのせかい」~アイボールの旅~

目次

ニュース

連載記事

テクニカルコーナー

今月のハム

  • 連載記事一覧
  • テクニカルコーナー一覧

お知らせ

発行元

発行元: 月刊FBニュース編集部
連絡先: info@fbnews.jp