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特別寄稿

アマチュア無線家が使えるグローバルIP「44Net」
第1回 44Netで8アドレス分のグローバルIPを取得する

VK3NOM/7M4MON 野村秀明

2026年8月17日掲載


本稿は、アマチュア無線家向けに割り当てられているグローバルIPv4アドレス空間「44Net」を、実際に取得して利用するまでを紹介する全3回の記事の第1回です。

44Netは単なる「無料固定IPサービス」ではなく、アマチュア無線家が無線・デジタル通信・IPネットワークを実験するためのリソースです。本稿ではその趣旨を押さえたうえで、44Netの歴史と仕組みを振り返り、日本の無線局免許状を使って申請し、「/29」、すなわち8個分のグローバルIPv4アドレスブロックを取得するまでを紹介します。

第2回では、44Net ConnectでWireGuardトンネルを作成し、PoPから払い出されたTunnel用のグローバルIPv4アドレスをRaspberry Piへ割り当て、インターネット側からアクセスできるところまでを解説します。

第3回では、MikroTik製ルーターを44Netルーターとして構成し、トンネルの先のIC-R8600へグローバルIPv4アドレスを直接割り当て、NATやポートフォワーディングを介さず、インターネットから直接到達可能な、いわば「真のIoT機器」のような構成を取り上げます。

グローバルIPアドレスの割り当て表に「アマチュア無線」がある

IPv4アドレスは、IANA(Internet Assigned Numbers Authority)から各地域のインターネットレジストリへ配分され、そこから各国の通信事業者、企業、大学、研究機関などに割り当てられています。その中に、アマチュア無線のために割り当てられたグローバルIPv4アドレス空間があることをご存知でしょうか。


Wikipedia[List of assigned /8 IPv4 address blocks]の項から抜粋

それが44.0.0.0/8、通称44Net(AMPRNet)です。これはプライベートIPアドレスではなく、グローバルにルーティング可能なIPv4アドレス空間です。

筆者も以前から、アマチュア無線に大きなアドレスブロックが割り当てられていることは知っていました。しかし、従来の44Net接続はIPIPトンネルやBGPなど、少しハードルが高い印象がありました。ところが2025年12月にWireGuardベースの44Net Connectが発表され、以前より簡単に参加できそうな形になりました。そこで今回、実際に申請してみることにしました。

44Net/AMPRNetの歴史

44Netは1981年に始まりました。Hank Magnuski, KA6Mが、世界中のアマチュア無線家がIPネットワーク実験を行うためのアドレスブロックを要求し、Class Aの44/8、約1,670万個のIPv4アドレスが割り当てられました。まだインターネットが現在のように普及する前の時代で、アマチュア無線のパケット通信が将来のネットワーク技術に参加するための先見的な割り当てだったと言えます。

その後、このアドレス空間はAMPRNetとしてボランティアにより管理されてきました。2011年には、当時の管理者らにより、California nonprofitとしてARDC=Amateur Radio Digital Communicationsが設立され、ARDCがこのアドレス空間の管理を正式に引き継ぎました。

ARDCの説明によると、44Netは「アマチュア無線家が科学研究を行い、無線によるデジタル通信を実験するため」のネットワークリソースです。つまり、単にIPアドレスが欲しい人向けのサービスではなく、アマチュア無線の延長線上にある実験環境です。

44/8全部が残っているわけではない

ただし現在は、かつての「44.0.0.0/8」全体がそのままアマチュア無線用として残っているわけではありません。2019年に、「44.192.0.0/10」、つまり44/8の約4分の1にあたる約400万個のIPv4アドレスが売却されました。

ARDCの2019年Form 990では、この売却に関係する収入として約1億900万米ドル(当時の為替レートで約117億円に相当)が記載されています。ARDCは、この資金をアマチュア無線やデジタル通信技術を支援する助成金・奨学金・研究開発支援などに使っています。

一方で、売却後も約1,200万個のIPv4アドレスが44Netに残っています。IPv4アドレスが枯渇し、一般の固定グローバルIPv4アドレスが貴重になった現在でも、アマチュア無線家向けの実験用アドレス空間として、非常に大きなリソースが維持されていることになります。

44Netを利用するための条件

44Netのアドレスは、有効なアマチュア無線の免許を持ち、所定の審査を通過すれば割り当てを受けられます。申請はAMPR/44Net Portalから行い、コールサインの確認を受けます。

ARDCは、AMPRリソースを利用できるのは、正式に免許されたアマチュア無線家であると説明しています。また、44Netは単なるネットワークリソースではなく、アマチュア無線のためのリソースであることも明確にしています

つまり、単に固定グローバルIPを取得するためのサービスではなく、無線、デジタル通信、IPネットワークなど、アマチュア無線に関係する技術実験へ利用することが前提です。一般のインターネット接続や無料固定IPサービスの代替、商用利用などを目的とした利用は認められていません。

従来の接続方法と44Net Connect

AMPRNet/44Netの従来の接続方法としては、IPIP Tunnel MeshやBGPがあります。IPIP Tunnel Meshでは、Linuxゲートウェイを用意し、44Net内の他のゲートウェイとトンネル接続する構成を取ります。44Net Wikiでは、このゲートウェイにpublic static IP addressが必要と説明されています。

そのため、CGNAT配下の回線やモバイル回線では利用しにくく、現在の一般的な家庭用インターネット環境では少しハードルの高い方式でした。そこで登場したのが44Net Connectです。


44Net Connectのトップページ

44Net Connectは、WireGuardを利用したセルフサービス型の接続システムです。Raspberry PiやMikroTik製ルーターなど、WireGuardクライアントを利用できる機器であれば、従来方式より比較的簡単に44Netへ接続できます。

ARDCは、44Net Connectの特徴として、利用するISPに依存せず静的な44Net IPv4アドレスを利用できることや、CGNAT環境でも接続しやすいことを挙げています。

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