2014年10月号

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海外運用の先駆者達 ~20世紀に海外でアマチュア無線を運用した日本人達~


JA3AER 荒川泰蔵

その19 青年海外協力隊員が海外運用でも活躍した時代 1981年 (2)

青年海外協力隊員が海外運用でも活躍した時代

読者の皆さんも既にお気づきの通り、この時代は国際協力事業団(JICA) (現:国際協力機構)が実施する海外ボランティア制度である青年海外協力隊(JOVC)の隊員が派遣先でアマチュア無線をする機会が多かったようだ。これらは、現在のように通信インフラが整っていなかった当時、単に余暇を趣味として過ごすだけでなく、情報の入手や非常時の通信手段の確保の他、国際交流や国際親善の一つの手段にもなっていて、本来の目的である国際協力と相まって地元での信頼を得てきたものと思われる。また日本のアマチュア無線家たちへの交信によるサービスや、現地の情報伝達などの役割を果たし、青年海外協力隊員を志望する青少年を増やすなど、アマチュア無線が果たした成果も少なからずあったものと思われる。

1981年 (ケニア 5Z4CS, 5Y4CS, 5Z4CT)

ケニアから5Z4CSでアクティブだったJE1JKL中村哲氏 (写真1)は、その経験をレポートしてくれた。「1981年8月から1983年3月までの間、青年海外協力隊員としてNairobiに滞在していました。免許は私の所属していたケニア郵電公社が発行していましたが、申請から発行までは約3ケ月かかりました(写真2)。その後、1.8MHzと50MHz、そして10MHzでの運用許可(写真3)も得てQRVし、約2万局とQSOし、1.8MHzから50MHzまでの8バンドでWACを完成しました(現在、1.8MHzは全局に開放)。ケニアでは12WPMのCWさえCopyできれば、どの国の資格でも免許を与えてくれます。日本の電話級所持者でもCWの試験に合格さえすれば学科は免除されます。RSK(Radio Society of Kenya)では毎月クラブ局5Z4RSのシャックにてミーティングを開いていて、いつも30人位の出席があります。ほとんどが外国人で、メンバーの出入りが激しいのが特徴です。免許を持たない人(主にケニア人学生)も、免許も持っている人のSupervisionで運用可能です。1982年9月28日から11月5日まではナイロビで開かれたITU全権委員会議記念プリフェックス5Y4で、5Y4CSを運用しました。(1985年4月記)」


写真1. 5Z4CS中村哲氏のQSLカード。


写真2. 5Z4CS中村哲氏の免許状の一部。(クリックで拡大します)


写真3.  5Z4CS中村哲氏の運用許可証。(クリックで拡大します)

JA0SLF羽鳥真弘氏は、ケニアからの5Z4CTの運用についてレポートしてくれた。「日本の免許(2アマ以上)であれば申請するだけで取得できる。添付書類として従免、局免の英文書類を一緒に提出する。約3ケ月位で免許がおりる(写真4、5及び6)。電話・電信級の場合は50MHz帯以上に運用に限られるが、電気通信術の試験を受け合格すればHF帯での運用ができる。試験は1アマ程度のスピードなので難しい。日本で上級資格を取得しておいた方がよいだろう。
運用については、TVIの問題等があり、17:00頃~23:00頃まではワッチのみ、23:00以降翌日の仕事に支障のない時間まで、だいたい毎日、休日の日は朝からも運用していた。主に14. 21, 28MHzにアクティブ(3eleトライバンダーを使用していたため)でした。(1987年5月記)」


写真4. 5Z4CT羽鳥真弘氏の免許発行案内状。(クリックで拡大します)


写真5. 5Z4CT羽鳥真弘氏の免許状。(クリックで拡大します)


写真6. 5Z4CT羽鳥真弘氏の免許状付属書。(クリックで拡大します)

1981年 (ジブラルタル ZB2BL, ZB2FK)

JA1XAF斎藤栄一氏は1981年の9月に10日間、ジブラルタルへ休暇で旅行した時の経験をレポートしてくれた。「ヨーロッパ休暇旅行中に、DX Pediに ZB2に行ったが、相互運用協定がないとのことで、JA 及び EL (リベリア) の免許とも不可であった。そのため、友人であった ZB2BL, ZB2FK のシャックより QRV し、特に 28MHz の ZB2 は JA に喜ばれた。(1986年7月記)」

1981年 (ドイツ JA7SOQ/DL, JA3QUU/DL)

JA7SOQ工藤健寿氏は、ドイツから次のようなレポートを送ってくれた(写真7)。「DJ0のコールをとるべく書類の準備をしておりQRT中。アパートの関係でアンテナをはれず、コールがおりたら、10/18/24MHz CWでon airすべく、アンテナをどのようにするか考えています。7 & 14 はヨーロッパのQRMがあまりにもひどく、運用したいとは思いません。DLには仕事の関係で来ており、JAにはいつ帰るか全く未定です。DLでゲストライセンスをもらった当時は約1年で1,500局とQSOしましたが、今はゼロです。IC-720Aに、ヤエスのモービルアンテナをベランダに付けてのオペでしたが、けっこう楽しめました。一時HFモービルをやっており、28MHz SSBで、CEとQSOできたことがありました。(1985年9月記)」


写真7. JA7SOQ/DL工藤健寿氏のQSLカード。

JA3QUU西間輝明氏は、月刊FBニュース9月号の記事を見て、自分も1981年にドイツで運用したとレポートを送ってくれた。「1970年代終わりころから、ドイツとはよく交信しており、そのなかでも、ハノーバーのDF1OMギュンターとは週に何回も話をする機会があった。ギュンターは、第2次大戦後の不発弾の爆発によって視力を失った、ホワイトスティックオペレーターである。話をするうち、ドイツに来ないかということになり、1981年の早春、ヨーロッパに出かけた。その際、申請したのが、ドイツのゲストライセンスである。ドイツでは、外国の無線家にもゲストライセンスを与えてくれ、私は全バンド750W で3ヶ月間運用できるJA3QUU/DLの免許を取得した(写真8)。ギュンターの家の設備は、リグはIC735(IC731)、アンテナは3エレメントの八木アンテナだった。当時、ドイツで運用する日本の無線局はまだ珍しく、サイクル21のコンディションがよかったこともあって、CQをだせば多くの日本の局からひっきりなしに呼ばれたし、ドイツ国内の局とも数多く交信した。VHFでもドイツ局と交信することができ、相手からは、初めての日本の局だと喜ばれたりもした。結局、ギュンターの家では3週間お世話になった(写真9)。本当に楽しい経験だった。(2014年9月記)」


写真8. JA3QUU/DL西間輝明氏の免許状。


写真9. (左)DF1OMギュンター氏のシャックで運用する西間輝明氏。(右)DF1OMギュンター氏の家族と一緒に西間輝明氏。

1981年 (ITU本部 4U1ITU)

筆者が英国に滞在した初期の1991年4月に、GW0/N2ATTでQSO頂いたJA1HBC坪川秋広氏から、QSLカード(写真10)と共に、ITU本部で運用したした時の様子を手紙で知らせて頂いた。その手紙から一部抜粋すると、「私は1981年7月から1年間、当時勤務しておりました工業技術院標準部電気規格課のトレイニ-として国際電気標準会議(IEC)へ派遣されました。IECの中央事務局は4U1ITUのあるITUビルの旧館と同じ通りに面しており、いつも4U1ITUのアンテナを見ながら仕事をしておりました。従って、誰かゲストオペレ-タ-が来て運用していればアンテナが回るのですぐ分かりました。昼休みは12時から2時間で、IECのスタッフは家に帰り昼食をとっていましたが、4U1ITUのシャックと同じフロア-にセルフサ-ビスのレストランがあるのでこれを利用することにし、月曜から金曜まで毎日QRVしました。丁度日本時間の午後8時から10時のゴ-ルデンタイムで、また当時はコンディションが大変良く多数のJAとQSOができ、お陰でホ-ムシックにはかかりませんでした。当時のIARCの会長はHB9QCで、事務局長はF8RUでした。その後F8RUが会長になり、事務局長にはEA2ADOがなりました。その後EA2ADOが会長になりました。私は日本人として初めてIARCの会員になりました。会員証はアワ-ドの様に手書きの飾り文字の立派なもので、今だに時折会報が送られてきます。IARCは毎月1回4U1ITUの近くのレストランでミ-ティングがあり、暮れにはクリスマスパ-ティ-が開催され、普段顔を見ないような人も参加され盛況でした。当初IARCの会員になるつもりはなかったのですが、2-3日のオペレ-トでは気になりませんが、やはり1年もとなると何となく気まずくなるため30フラン支払い会員となりましたが、日本人が旅行のついでに立ち寄りテンポラリ-に4U1ITUからQRVするのであれば、会員になる必要はないと思います。しかし、コンテストで4U1ITUからQRVするときは、使用料を支払うことになっております。(1991年5月記)」 ということである。

写真10. JA1HBC坪川秋広氏のQSLカード表と裏。

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