2014年10月号

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連載記事

楽しいエレクトロニクス工作

JA3FMP 櫻井紀佳

第17回 太陽光発電で無線をしよう! その3

3.1 配線

太陽電池パネルから定電圧回路、定電圧回路からバッテリー、バッテリーから12V-13.8V昇圧回路へと配線します。また、太陽電池パネルは陽のよく当たる場所に設置しなければなりませんし、バッテリーの置き場所は充電時にガスが発生したり、バッテリー液がこぼれたりする危険性もあり、屋外の日陰で風通しの良い場所が適当と思われます。12V-13.8V昇圧回路は無線機に近い所に置きたいため、それぞれの配線は結構長くなります。元々太陽電池パネルは定電流源のため、太陽電池パネルから定電圧電源までの配線は、多少長くなって電圧降下を起こしても効率が下がるだけであまり問題ありません。定電圧電源の出力からバッテリーまで、バッテリーから12V-13.8V昇圧回路まで、昇圧回路出力から無線機まではできるだけ短くして電圧降下を抑える努力が必要です。

一般的に電線の規格は発熱しても安全な観点から決められていると思いますが、今回のシステムでは安全以前に電圧降下を心配しなければなりません。100V系では仮に1Vや2V下がってもそれほど問題にはなりませんが、このシステムで電圧が1V下がれば問題になります。
今回は8mm2(通称8スケ)の電線を使用しましたが、やはりバッテリーから12V-13.8V昇圧回路までの電圧降下が気になり、結局この間は8mm2の電線を2本ずつ並列に配線しました。もし手に入ればその上の14mm2の方が良いかもしれません。

線の端は端子にネジ止めするために圧着端子を付けます。一番電流の多い端子には8mmのネジを使ったためこれに合う圧着端子となりました。圧着端子は専用のカシメ器具で締め付けると良いのですが、念のため全部ハンダを流し込みました。圧着不足の心配もなくなりこれで安心できます。

太陽電池間の配線は8mm2の線をよじってハンダ付けして上から絶縁テープを巻きましたが、線が太いのでハンダ付けが結構大変です。大きい圧着端子のカシメ機があれば圧着端子の方が作業は楽かも知れません。


太陽電池パネル裏の配線

12V-13.8V昇圧回路の配線や12V系の他の機器に使うために無線機近くに大型の端子板をつけると便利です。送信時に流れる電流は15Aとしても、昇圧する前の電流は20A以上になる可能性があるため大型の端子板が必要です。バッテリーから引き込んできた配線をいくつかに分岐する場合、端子間をショートする銅板が必要です。端子板のオプションで販売されているものもありますが、3端子間や4端子間をショートしたい場合は、市販品はないので銅板で自作した方が良いと思います。


大型端子板で配線

バッテリーの端子は、たぶん10mmのボルトナットで配線するようになっていると思います。先に説明したようにバッテリーはEB160タイプか大型車用のもので良いのですが、無線機以外の用途にも使いたいこともあって2V系のMSE300のものを6個直列にして使っています。配線は下の写真のようになりました。


MSE300 x 6個の配線の様子

太陽電池の発電が不足した時に使うAC電源ですが、ほとんどの場合そのまま接続してもバッテリー側から逆流しません。何社かの電源を試してみましたが大丈夫でした。出力側の内部にダイオードが入っているためと思われます。このAC電源からバッテリー側へ流れる電流はバッテリーへの充電電流となるので問題ないと思います。


AC電源の例 PS-126(アイコム製)

3.2 電流計

配線が終わってバッテリーの電流を表示したくなり、電流計を付けることにしました。電流計は必ず必要なものではないので必要と思われる人だけ検討してみてください。できるだけシャント(分流器)による電圧降下を少なくするため、電流計は±100μAの感度の高いものを使い、これで±100Aに読み替えることにしました。シャントによる電圧降下は最大100Aで77.8mVとすることにしました。電流計とシャントの計算方法は巻末のコラムをご覧下さい。


100Aを100μA電流計で表示

シャントをバッテリーのマイナス側に取り付けたのですが、なぜか計算が合いません。よくよく測定してみると端子を10mmボルトで締め付けている部分で2mV電圧降下があることが分かりました。しかしいくらキツく締め付けてもあまり変化がありません。HFアンテナの組み立ての時にパイプの接続部に使った導電性グリースのことを思い出し、これを塗ってみました。結果は見事に問題が解消され接触電圧はほぼ測定できないくらいまで下がり、亜鉛末グリースの効果に驚きました。

3.3 電源スイッチ

このシステムと同様なものを作ってみようと思われたら、是非メインスイッチを付けることをお勧めします。最初は電線を直接ネジ止めしていたのですが、回路が故障してバッテリーに大きな電流が流れ始めた時、すぐに止めることができず大慌てでボルトを緩めた苦い経験があります。

そのスイッチは次の通りです。銅板の幅などは適当に決めたのですが、どこかの文献によれば電圧が低くても直流では大電流でアークが飛んで切れないと書いてありました。このスイッチでおっかなびっくり50Aを切ってみたのですが抵抗負荷に近ければ問題なく切れます。スイッチの接触部分はバッテリー端子と同様に導電性グリースを塗っています。

スイッチの支点と挟み込む部分は4mmのビスにスプリングワッシャーを入れて適当な締め付けになるよう調整します。ナットは2重にして締め付けを調整した後、緩まないようにロックしておきます。

もう一つ安全性の意味でバッテリーの回路にヒューズを入れておく方が無難です。もし間違って出力をショートするとバッテリーからものすごい電流が流れて事故になる可能性があるからです。私が作ったものはMSE300の2Vセルを6個繋いだものなので、途中に150Aの蟹の爪のようなヒューズを入れています。


150Aヒューズ

色々実験している途中で一度だけこの150Aのヒューズを飛ばしたことがあります。うっかり線の端をショートさせてしまったのです。こんな時に安心できますが、接続部の増加で電圧降下が起きるのでその対策は必要です。

3.4 照明

移動局でアマチュア無線をするにも照明が必要です。折角12V系の太陽電池で発電したので100Vでなく12V系で使用したいものですね。当初は100W型LEDのつもりでしたが12V系で100W型が見つかりません。100V系の100W型の消費電力は15~17W程度ですが、12V系の60Wでは5~7W程度で、照明のための電力の見積もりを20Wとしていましたので3個程度点けても良いことになります。このため大小2つの照明があればベターではないかと思います。60W型のLED電球を通販で購入して使っていますが特に違和感はありません。ただ、普通の100V系のLED電球と形状が同じため、間違って100Vに接続すると直ちに壊れるので特に注意が必要です。


12V LED電球と小型LED照明

3.5 システムの拡張

最初はこの記事のように移動局の50W出力を運用できるように進めていたのですが、実際の装置は段々大きくなり、太陽電池は12枚に、バッテリーはMSE300で定電圧回路もFETを2個並列にして容量をあげて1500WのDC-ACインバーターを繋いで他の100V機器も働くようになっています。


12V入力、出力100V、最大電力1500Wのサイン波インバーター

このような太陽電池システムでアマチュア無線をしていますが、設置したのは自宅ではなく常時いない場所なので、すべてを動作させたまま留守にするには安全性に自信がなく、帰りにはすべて切っています。そのため本当の実力がよく分からないまま使っていますが、どなたか常時使ったデータがあれば教えてください。

前回説明した太陽電池パネルからバッテリーへ落とす定電圧電源ですが、自分で作らなくても24V系から12V系に落とすDC-DCコンバーターで使えるものがあるようです。入力範囲が18V~32Vで下限電圧が18Vなら問題なく使えます。

電力が足りないといわれている今日、独立系の電源でアマチュア無線をしていると社会貢献しているような気分になります。皆さんもぜひトライしてみてはいかがでしょうか。

■電流計とシャント
まず使用する±100μA電流計の内部抵抗を調べます。今回使用したものは750Ωでしたのでこのメーターでの電圧降下は100μA x 750Ω=75mVとなります。今回バッテリー電流は最大±100Aと仮定していますので100A流れた時にこの電圧になれば良いことになります。75mV/100A=750μΩとなります。本当は電流計の電流も計算に入れないといけないのですが、電流差が大きく無視しても問題ありません。

この用途に使える大電流の電流計も通販で入手可能ですのでそれを使った方が早いとは思いますが、自分でシャントを作る場合は上図のように温度特性の良いマンガニン線を利用します。この線を通販で見つけ、1.2mmφのもので作ることにしました。電流が大きいので10本並列にして電流を分散すると1本あたり7.5mΩになり、資料では0.389/mなので実効的な長さは19.3mmになりますが、ばらつきも考えてVRで調整できるよう20mmとしました。マンガニン線は半田付けできますが、抵抗として利用する20mmの部分には半田が付かないよう注意します。

■DC-ACインバーターの例(株式会社未来舎の製品カタログより)


FI-S1503A-12VDC

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